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巨人・浅野翔吾がシーズン終盤の覚醒、背景には心酔するイチローの教え 広澤克実氏は「大谷翔平と同じ打ち方」と絶賛、“夜遊びはしないタイプ”評も

NEWSポストセブン 2024年9月12日 11時15分

 悲願のVに向け、セ・リーグの激しい優勝争いのなかにある巨人。そのチームの柱へと急成長を見せるのが高卒2年目の浅野翔吾(19)だ。シーズン終盤で覚醒した理由とは──。

 不動の3番だったエリエ・ヘルナンデス(29)の故障で8月12日に急遽一軍へ昇格した浅野は、2日後の阪神戦でスタメン起用されると、いきなりのグランドスラム。その後も快進撃が続き、8月は打率.348、3本塁打、11打点を記録した。月間3ホーマーは巨人の10代選手では王貞治、松井秀喜ら5人しか達成していない。しかも、浅野がホームランを打った試合は全勝だった。巨人番記者が語る。

「好調を維持していたヘルナンデスが骨折した時、阿部慎之助監督は冗談めかしながらも『俺の心も折れそう』と漏らしていたが、嬉しすぎる誤算でしょうね」

 高松商時代に通算68本塁打を放った浅野は2022年のドラフト1位で阪神と競合の末、巨人に入団。1年目の昨シーズンは、8月に王貞治以来64年ぶりとなる「高卒ルーキーの1番スタメン」で話題となったが、目を見張る成績は残せなかった。

 今季も開幕一軍入りこそ果たしたものの、3試合出場で10打席ノーヒットに終わり、4月8日に登録を抹消されていた。当時、巨人OBの広岡達朗氏は本誌『週刊ポスト』の取材に応じ、「阿部の間違いは3番に新人(浅野)を置いたこと。新人が3番を打つようでは、巨人は優勝できない」と酷評していた。

一発狙いをやめて一発が出る

 そこから覚醒した理由としては、あるレジェンドの存在が大きいようだ。前出の巨人番記者が言う。

「昨年、打撃コーチだったデーブ大久保さんから指導を受けた時は完全に受け流していて、デーブさんに『俺の言うことを聞かない』と言わしめた頑固者です。しかし、高松商2年の時に野球部にコーチに来たイチローさんには心酔していて、巨人でも背番号51を選んだ。今年もイチローさんに声をかけられて自主トレに参加し、逆方向への打ち方のアドバイスをもらったようです。今季の二軍生活ではとにかく逆方向の打球を意識したという。巨人のコーチよりもイチローさんの教えを頑なに守った成果が今の活躍ではないか」

 高校時代の浅野は、2022年の夏の甲子園でも3本のアーチをかけた世代屈指のスラッガーとして名を馳せた。だが、同年のドラフト時から「身長170センチ、体重86キロの小柄な体がプロではネックになると言われていた」(スポーツ紙デスク)という。辛口評論家・江本孟紀氏は、浅野が覚醒したのは「体格を自覚したことが大きい」と指摘する。

「浅野の背丈ではプロではホームランバッターになれないことを自ら悟り、一発狙いをやめたことが大正解でした。最近は徹底して右打ちをして、中距離バッターとしてヒットを量産する姿勢が目立ちます。自分のスタイルを変えられずプロで失敗する選手が多いなか、高卒2年目で自分の特徴に気づき、切り替えられた」

 一発狙いをやめた結果、大事な場面で一発が打てている格好だ。前述した8月14日の10代でのグランドスラムは、巨人では2008年の坂本勇人(35)以来で、東京ドームでの一発という点も坂本と共通する。高卒2年目でレギュラー定着した右打者など類似点が多く、坂本と比較されることが多いが、キャラクターは正反対だという。

「甘いマスクの坂本は、新人の頃からグラウンド外の夜遊びが盛んでしたが、浅野は高校時代の愛称が『おっさん』で本人も自覚しているおじさん顔の愛されキャラ。酒や女遊びにも興味がなく、巨人では岡本和真(28)や吉川尚輝(29)に似たインドアタイプとして地に足がついています」(前出・スポーツ紙デスク)

重心の残し方が同じ

 そんな浅野には阿部監督も惚れ込んでいる。「勝負勘は一番買っている」「個人的には彼にスターになってほしい」とまで評し、ここにきて優勝争いを左右する最大のキーマンとも位置づけられる。浅野の打撃について、巨人を含むセ3球団で4番を打った経験を持つ広澤克実氏はこう評価した。

「天才型の坂本と違って、浅野は理に適った体重のかけ方をします。たとえば、インパクトではキャッチャー側の右足にしっかりと重心が残り、打った後は左足が先に動いている。左右の違いはありますが、ドジャースの大谷翔平(30)の重心の移動と同じでしっかりと球を叩ける打ち方です」

 大谷もNPBでのプロ入り当初から逆方向を意識し、今ではメジャーで逆方向弾を量産している。広澤氏はこう続ける。

「フィジカルを鍛えればさらにパワーがついてボールを遠くに飛ばせるようになり、浅野の成績はもっと上がるはず。大谷ほど体は大きくないが、“小さな大砲”を目指せる器です。走攻守そろった好選手。坂本の輝きが薄れるなか、次代の巨人を担える可能性がある。シーズン終盤の緊迫感が増すなか、どんなプレーを見せるか楽しみです」

 4年振りのV奪還へ、欠かせないピースだ。

※週刊ポスト2024年9月20・27日号

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