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《今や番宣スター》三谷幸喜は何がスゴいのか? MCもこなし、バラエティに引っ張りだこ、“裏かぶり”もOK「三谷さんだから許される」が業界の共通認識に

NEWSポストセブン 2024年9月15日 11時15分

 ここ最近、バラエティ番組への出演が増えているのが脚本家の三谷幸喜(63才)氏だ。監督・脚本を務めた映画『スオミの話をしよう』の番宣としての出演だが、今や「番宣スター」との声が上がるほどテレビマンの心をつかんでいる。その理由について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 13日公開の映画『スオミの話をしよう』の監督・脚本を務めた三谷幸喜さんがさまざまな番組に出まくってPRを続けています。

 主な番組をあげていくと、4日の『奇跡体験!アンビリバボー』(フジテレビ系)、6日の『酒のツマミになる話』(フジテレビ系)、8日の『だれかtoなかい』(フジテレビ系)、『日曜日の初耳学』(MBS・TBS系)、12日の『オドオド×ハラハラ』(フジテレビ系)。

 映画公開日の13日は『めざましテレビ』『めざまし8』『ノンストップ』『ぽかぽか』などの生放送番組に連続出演。三谷さんはともに出演した主演・長澤まさみさん以上にしゃべって笑いを取って盛り上げたほか、同日には「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(TBS系)にも出演しました。

 さらに特筆すべきは14日の夜。『芸能人が本気で考えた!ドッキリGP』(フジテレビ系)に出演したあと、自ら総合司会を務める生放送の『情報7daysニュースキャスター』(TBS系)に加えて、同じ時間帯に監督・脚本を務めた2019年の映画『記憶にございません!』(フジテレビ系)も放送。通常タレントでは、ほぼ不可能な同時番宣を実現させています。

 現在、脚本を手がけた1993年のドラマ『振り返れば奴がいる』(フジテレビ系)が関東エリアの午後で再放送されていることなども含め、三谷さんがいかに幅広い番宣を行っていることがわかるでしょう。

 三谷さんは演出や脚本のスキルに加えて、番宣におけるどんなところが優れ、テレビマンたちの心をつかんでいるのでしょうか。

貢献度の高さと出演俳優への影響力

 三谷さんが監督・脚本を務める映画が公開されるたびに、「こんなに番宣出演する監督や脚本家はいない」「主演の何倍も出て目立っている」などの声があがります。ちなみに前作『記憶にございません!』のときは公開当日に「フジテレビ系の全17番組連続出演」という前代未聞の番宣に挑んでいました。そのバイタリティーと現場対応力はクリエイターとしては異例のスキルであり、番宣慣れした俳優や芸人と同等以上のレベルにあります。

 さらに特筆すべきは業界内で「三谷さんだから許される」という共通認識のような感覚があること。たとえば大河ドラマ『鎌倉殿の十三人』(NHK総合)の脚本を手がけていたとき、他局であるにもかかわらず『情報7daysニュースキャスター』で番宣し、TBSの社長からもお墨付きをもらっていました。映画製作にかかわっていない他局でも番宣が許されるのは、それだけ番宣出演する番組の視聴率や話題性アップに貢献できるからでしょう。

 もう1つ「三谷さんだから許される」と言われる理由は、番宣における出演俳優たちへの影響力。俳優たちが三谷さんの演出・脚本をリスペクトしているのは間違いありませんが、番宣出演におけるスキルにも一目置かれています。ただ、「番宣は三谷さんにまかせておくのが一番いい」とは思っていても、監督・脚本家が自らこれだけ番宣するのですから出演俳優としては「出ない」というわけにはいきません。

 また、三谷作品の出演俳優にはコメディ巧者が多く、情報番組やバラエティに出た際に笑いにつなげられるなど、計算が立ちやすいこともポイントの1つ。人気だけでなくトーク力やサービス精神があるため、各番組の制作サイドを喜ばせるというケースが目立ちます。このような出演俳優への影響力も、番宣における三谷さんの実力としてみなされているのでしょう。

キャラの振り幅と台本の読解力

 では番宣出演における三谷さんは、どんなところを評価されているのか。

 必ずネクタイを締めたスーツ姿で現れるように三谷さんは「真面目」「謙虚」が基本スタンス。だからこそ時折、放つユーモアの振り幅が大きくなり、笑いにつながると言われています。

 そのユーモアも強引に笑いを取りに行くような姿勢はなく、コンプライアンスにかかわるような過激な発言の不安がほぼないこともポイントの1つ。常識や見識を備え、俳優とのエピソードや名作の裏話も豊富な上に、リスクが少ないことがさまざまな番組への対応力につながっています。

 また、三谷さんは幼少期から大のテレビ好きだったことを明かしているほか、構成作家としてバラエティを担当した経験もあり、台本の読解力が高いことも強み。だからこそいい意味で予定調和を壊すようなトークで「いつもとは違う笑い」をもたらすケースが目立ちます。たとえば13日の『ぽかぽか』でも、本来MCがゲストに「〇〇っぽい」というイメージをぶつけるコーナーがありますが、あえて三谷さんが長澤さんに「旅館の朝、浴衣がずるずるになってるっぽい」と問いかけて笑いを誘っていました。

 さらに三谷さんは喜劇作家ならではのユーモアだけでなく、ドッキリなどのバラエティ企画にも対応。かつては芸人でも嫌がる罰ゲームなども行っていました。そんな大物らしからぬバラエティ歓迎のスタンスも期待感につながっているようです。

 映画の公開は3~5年に1作程度のペースで飽きられることもなく、ここまであげてきたさまざまな点を踏まえると、芸能界トップクラスの番宣スターと言っていいのではないでしょうか。

【プロフィール】
木村隆志(きむら・たかし)/コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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