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【何を参考にしたら…】調教欄だけで推理できない新馬戦 蛯名正義氏が考える「上がり3ハロンからの時計」など参考になる要素

NEWSポストセブン 2024年9月27日 16時15分

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、新馬戦の予想についてお届けする。

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 予想をする時のファクターとしては、過去のレースぶりや持ち時計、得意な距離やコース、血統や他の馬との力関係、騎手との相性などさまざまなものがあります。ただ新馬戦はどの馬もレースに出るのは初めてなので、何を参考にしたらいいのかわからないというファンも多いのではないでしょうか。

 それでも予想紙の印はけっして各紙バラバラではなく、結果も常に荒れるということではないみたいですね。競馬新聞やスポーツ紙の記者は、担当厩舎が決まっており、ずっとトレセンに詰めて、実際に走っているところを見たり、時計をチェックしたり、担当する厩舎スタッフの手応えなどを取材しています。馬体のバランスや良血馬が持つ雰囲気などを感じ取ることもあるかもしれません。そのうえで各記者が情報や意見をすり合わせて「この馬は強い」という結論を導き出しているのだと思います。

 レース未経験の新馬の情報の中で、数字としてはっきり示されているのが調教タイムです。新馬戦の調教欄を見ると「ああ、この馬が人気になるだろうな」というのは、競馬サークルの人間ならば、ある程度想像できます(あくまで「人気」=レース前の評価です。「結果」ではありません)。どういう調教をしてきたかということもありますが、むしろどれだけの調教ができてきたのかで、その馬の資質を垣間見られることがあると思います。毎週2回コンスタントに時計を出していれば、疲れや痛いところもなく、順調なのだなということがわかるし、レースまでに本数をこなしていれば、それだけ念入りだという印象があります。

 調教欄では合計でどれだけ時計がかかったかだけでなく、スタートから1ハロン(200m)ごとのラップがわかります。どこで速くなって、どこで遅くなっているかは、一目瞭然ですよね。

 やはり上がり3ハロンからの時計が参考になると思います。どの馬も前半は1ハロン15秒ぐらいで走り、追い出しの合図を受けてからの時計が速いか遅いかの違いがあります。坂路の場合、あくまで参考ですが2ハロンで25秒、上がり1ハロンを12.5秒程度が目安と言われています。フィニッシュして、なおかつ馬に余力があれば、新馬としてはかなりいい仕上がりと言えます。ウッドチップコースでの仕上げならば、時計はもう少し速くなり、上がり11秒台ということもあります(ただし、ここでの時計がよくなくても、本番になるとしっかり走ってしまう馬もいます)。

 JRA-VANでは、調教VTRや時計を見ることができるので、綿密に予想をしたいという方はチェックしてみてはいかがでしょうか。ただし、その結果、的中率が上がるかどうかの保証はできませんが(笑)。

 僕自身はレースに出てくる他の厩舎の時計をチェックするというより、勝った馬がどういう調教をしてきたのかということを気にしています。

(次回へ続く)

【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。この連載をベースにした小学館新書『調教師になったトップ・ジョッキー~2500勝騎手がたどりついた「競馬の真実」』が発売中。

※週刊ポスト2024年10月4日号

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