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NHKを“電波ジャック”した中国人スタッフが初めて「動機」語る「NHKは破廉恥行為と決めつけようとした」

NEWSポストセブン 2024年9月27日 11時15分

「うちの子の何が悪いの!?」──9月18日朝、中国広東省深セン市で日本人学校に通う10才の日本人男児が登校中に刃物を持った男に襲われ、のちに死亡した事件で、男児の母親はそう絶叫した。男児は腹部からは腸が見えるほど深い傷を負っていたといい、男の強い殺意が窺える。

 その日は、満州事変の発端となった柳条湖事件から93年目にあたることなどから、反日感情が事件の背景にあるとされているが、凶行に至る詳しい動機は明らかにされていない。一方で、ゆがんだ愛国心に突き動かされたという自らの突発的行為を、美談として滔々と語る者もいるようで……。

《反撃のチャンスはこれしかないとはっきり悟ったのです。その日のうちにやらなければ、後でまたチャンスが巡ってこないかもしれない。そのときに、中国に対する侵略戦争で辱めを受けた無数の犠牲者のために声を上げたいという強い衝動が、国家正義のために立ち上がりたいという内なる力が、私の背中を押しているように思えたのです》

 中国共産党北京市委員会の機関紙「北京日報」が運営するニュースサイトで、こう発言したのは、この8月「NHK放送ジャック事件」を起こした張本人、胡越こと胡晋泉(48才)だ。

 前代未聞の事件を振り返ろう。

 8月19日13時過ぎ、NHKのラジオ国際放送の中国語ニュースで、同日に見つかった靖国神社の石柱の落書きについて伝えていた男性スタッフが、「【軍国主義】【死ね】などの抗議の言葉が書かれていた」などと、原稿にはなかった文言を読み上げたうえ、尖閣諸島が中国の領土であると主張。さらに「NHKの歴史修正主義宣伝とプロフェッショナルではない業務に抗議する」としたうえで、「南京大虐殺を忘れるな」「慰安婦を忘れるな」などと英語で発言。約22秒間にわたって不規則発言を続けたのである。

「この男性はNHKの外部委託団体のスタッフで、中国籍。ラジオ番組で原稿読みを担当していたといいます。この時、スタジオの副調整室には、外部ディレクターとNHK職員のデスクが控えていましたが、あまりに急なことで、マイクの音量を切るなどの対応は取れなかったようです」(全国紙社会部記者)

 NHKは事件後、胡に対し信用毀損などに対する損害賠償を提起したことを発表。さらに刑事告訴についても検討中だと明かした。しかし、本人はすでに中国に帰国していたようで、賠償請求はおろか刑事責任に問うことは難しい状況だという。

「東京大学に留学しNHKでは22年間も働いていた彼は、今回の騒動後、すぐに中国に帰ったそうです。帰国後には新たに開設した微博(ウェイボー)のアカウントで、日本社会やメディアに対する批判をたびたび投稿。現在までに12万人を超えるフォロワーを獲得しています」(中国在住ジャーナリスト)

 中国版の「X」ともいわれるSNS「微博」では、反日感情を煽るような発言を繰り返し、そのたびに喝采を浴びていた胡。ただ、これまで事件の動機について詳しく言及はしてこなかった。それが9月中旬、冒頭のように「北京日報」の取材に対し、事件について語り始めたのである。

《NHKは公共メディアであるにもかかわらず、国際ニュース報道において、基本的な事実確認を欠いていることが多い。NHKは日本政府の代弁者として、歴史修正主義という隘路(あいろ)を日本政府に盲従している》

 NHK批判はこれにとどまらず、靖国神社の落書きのニュース原稿についても追及。

《「便所」という言葉を残す一方、「軍国主義」という言葉を隠すことで、NHKはこの事件を「破廉恥行為」と決めつけようとしていたのです》

 さらにインタビューの後半では、《日本では「戦前の時代への逆戻り」が起こっており、社会が徐々に第二次世界大戦前の状態に戻りつつあると考える人々も多いのです》などとも語っていた。

「胡はすでにNHKとの契約は解除され、都内の自宅はもぬけの殻。もう日本に戻って来る気はないからこそ、『北京日報』で思いの丈をぶちまけたのでしょう。動機について政治的なことを語っていますが、どうも給料を含めた待遇面への不満があり、これが問題発言の一因だったと見られています」(前出・全国紙社会部記者)

 公共の電波をジャックし、一方的な思想を垂れ流すことは許されることではない。さらに、思想信念の暴走の果てに、何の罪もない子供が犠牲になるような悲劇が繰り返されることは、絶対にあってはならない。

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