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ヤクザを描いた映画やドラマを本物のヤクザはどう観ているのか 暴力団幹部「あんなにバンバン撃たないよな」「日本より韓国ドラマの方がリアル」

NEWSポストセブン 2024年9月29日 16時15分

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ヤクザから見てリアルなヤクザを描いた映画やドラマについて。

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 ヤクザには映画やドラマを観るのが好きな者が多いと聞く。特に実際に起きた事件に絡んで作られたような映画は現実と比較しながら観るらしい。9月2日、1985年に指定暴力団山口組四代目組長だった竹中正久ら3人を射殺した疑いで指名手配されていた男(75才)が、長崎県松浦市の市議に対する名誉棄損容疑で逮捕されるという事件があった。ヤクザ業界では死んでいたと思っていたヤツが、生きていたとは!と驚く声が上がったという。

 話題の映画やドラマは必ず観るという暴力団幹部S氏にこの話を聞くと、「山一抗争の時の話だよな。一和会のヒットマンの話なら三浦友和が主演だった『悲しきヒットマン』(1989年、東映)。山口組四代目組長が殺されて五代目になるまでの話なら『激動の1750日』(1990年、東映)で、確かヒットマンは陣内孝則があてはまるんじゃないか」と、映画の話で盛り上がった。

 今は自宅のテレビで昔のヤクザ映画を観ることもあるといい、「いろんな動画配信サービスがあるが、何でも見られる。」と笑う。以前は偽造カードがあったというが、セキュリティが厳しくなってきたので今はプリペイドカードを購入するようだ。考えてみれば、ヤクザは銀行口座が持てないから、引き落としができなければクレジットカードも作れない。家族や彼女と住んでいれば別だが、一人暮らしのヤクザは現金で買えるプリペイドカードしかない。また、友人知人のIDを借りて利用するという方法もあると彼らは言う。1つの契約につき複数のデバイスで再生できるサービスが多いので、その1つを借りるということらしい。もっとも、多くの配信サービスは家族以外とのID共有を規約で禁じているので、露見すると契約者のIDが失われるだけでなく賠償責任が問われる可能性もある。

かつてはシノギだったテレカの偽造

 プリペイドカードといえば、その走りはテレホンカードだろうか。今は探そうにもなかなか見つけることができない公衆電話だが、昭和から平成にかけての頃は、誰もが1枚は財布や定期入れの中にテレホンカードを入れていた時代だ。いかにも偽造できそうなカードにヤクザが目をつけないわけがなく、テレホンカードの偽造をシノギとしてやっていた者もいるという。その頃、テレホンカードの売買は盛んに行われており、「日本に来た中国人やバングラデシュ人らは正規のテレホンカードを大手通信会社などから定価の10分の1程度で買い、それを出稼ぎに来ていたフィリピン人らに安く販売、大儲けした者もいる。だが中には偽造カードを安く仕入れて、販売していたヤツらもいた」とS氏は語る。

 偽造カードの客は、こういった日本に出稼ぎにきた外国人がほとんどだったようだ。「国にいる家族に電話するのに、偽造カードを買って、公衆電話から電話する。1枚5000円で買っても、その倍の料金分電話できたら、外国人ホステスとかはこぞって買いにくる」(S氏)。使い終わって廃棄されたカードさえあれば、偽造は簡単だったという。今ならコンビニで使えるクオカードは偽造しないのか?と聞くと、「大量にさばけないから、わざわざやるヤツはいない」とS氏の子分は肩をすくめた。

「クレジットカードや銀行カードの偽造はそれほど難しくない。人目があるから見た目が同じカードを作るが、そこまでやらなくても、ATMが自社カードと認識してお金を払い出してくれる場合もある。数年前だが、飲食店の会員カードに細工したカードを渡されて、ATMで金を引き出してくれと言われてやってみた。まさかこれで?と思ったが、本当に出てきたのでこっちが驚いた」(S氏の子分)

 一般人からするとなんとも恐ろしい話だ。さてひと昔前の動画配信サービスの視聴用偽造カードには有効期限があり、その時期がきたら「次はいついつ切り替えですから、新しいカードを持って行きますんで、よろしく」と子分から連絡がきたという。今なら偽造プリペイドカードが出回りそうだが、それについてS氏はに口を閉ざしてしまった。

本当のヤクザは大人しい?

 ヤクザはどんな映画やドラマを観るのか、ヤクザ映画や人情物が好きなのかと聞くと、「それは人それぞれですよ」と笑い飛ばされた。だが総じて「ヤクザに関する映画やドラマは見ている者が多い」という。この夏話題になったNetflixで配信中の『地面師たち』については、「ストーリーに物珍しさはないが、1人1人の役をじっくり見ていると面白いよね。だけど”あれ”はないよな」という声が多いらしい。”あれ”とは人殺しだ。ヤクザといえば、すぐに人を恫喝し簡単に暴力をふるうと思われがちだが、「一般人に手を上げるのはチンピラや半グレ、ヤクザ崩れ。裏切った仲間をリンチするというのはあったが、そうでない仲間を殺すことはない。本当のヤクザは大人しいもんです」とS氏はいう。

 Vシネの極道シリーズの映画で話が盛り上がる時もあるそうだが、「あんなにバンバン撃たないよな」という意見が多いらしい。S氏が例に上げたのは『日本統一』シリーズだ。すでに64話まである人気シリーズで、スピンオフ映像『日本統一外伝』も作られている。「ヤクザらしさを強調したいんだろうが、オレたちはあんなに拳銃を撃たない。だってさ、拳銃を使うと刑が重いんだ。持っているだけで銃刀法違反で罪になる。発砲すれば火薬類取締法違反に発射罪とどんどん罪が重くなる。これで誰かを傷つけると、殺人未遂がつく。ナイフや包丁とは違う。だから今は誰も普段から拳銃なんて持ってない。それにあれだけ撃ちあっているのにパトカーがこないなんて、今の日本ではあり得ない」(S氏)

 彼らが思うリアルなヤクザ映画やドラマはどれか。「昭和の時代のヤクザ映画はリアルだよ。今なら日本の映画より、韓国のヤクザ映画やドラマの方がリアルだな。韓国もバンバン撃ちあうシーンが多いが、それより素手やナイフで争うアクションシーンの方が多いからな」という。映画やドラマの世界でヤクザは人気のコンテンツだが、S氏は「映像だと今のヤクザはどんどん過激になっているが、実際は正反対」。どんどん静かになっているのが今のヤクザの現実らしい。

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