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《放送50周年で歴代MC集結》『おしゃれ』シリーズが昭和から令和まで愛され続ける理由 

NEWSポストセブン 2024年9月29日 7時15分

 数少ないトーク番組の中で、50年も続いているのは『おしゃれ』シリーズだけだろう。50周年を記念した特番には、歴代MCも集結する予定だ。昭和から平成、令和まで数々の名場面を生んだ『おしゃれ』シリーズが、愛され続けるのはなぜか? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。 

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 29日夜、『おしゃれクリップ1時間SP』(日本テレビ系)が放送されます。これは『おしゃれ』シリーズ放送50周年を記念した特番で、楠田枝里子さん、古舘伊知郎さん、阿川泰子さん、マルシアさん、上田晋也さん、藤木直人さんの歴代MCが集結。現MCの山崎育三郎さんと井桁弘恵さんを含む、一夜限りの豪華共演が実現します。 

 特番では、歴代MCが『おしゃれ』シリーズへの思いや裏話を語るほか、各番組の名場面やCMの振り返りや歌唱パートなどが予定されています。 

時代が昭和、平成、令和と移り変わる中、なぜ『おしゃれ』シリーズは50年にわたって放送を続けてこられたのか。歴代の各番組を振り返りながら、その強みや背景などをあげていきます。 

スタートは平日昼の帯番組だった 

シリーズの口火を切ったのは1974年の「おしゃれ」。当時は平日の月曜から金曜13時15分から30分に放送されていた昼の帯番組であり、「話題性のあるゲストを招いたトークショー」という構成は現在まで続いています。同番組の司会は三橋達也さん、石坂浩二さん、楠田枝里子さん、杉浦直樹さん、久米宏さんなどが務め、1987年春まで放送されました。 

 同年1月にスタートしていたのが、古舘伊知郎さんと阿川泰子さんが司会を務めた『オシャレ30・30』。ここで毎週日曜22時から22時30分という現在と同じ放送時間帯になり、37年超にわたって続いています。 

 番組名の「30・30」は“30代の司会者による30代に向けた30分の番組”に由来し、ジャズシンガーである阿川さんが歌を披露するシーンもありました。 

番組はちょうど30年前の1994年6月で終了。ただ、古舘さんは同年7月スタートの『おしゃれカンケイ』にも継続出演し、パートナーの菊池桃子さん、マルシアさん、渡辺満里奈さんと進行を担いました。 

 なかでも人気だったのは、番組終盤の「16小節のLOVE SONG」というコーナー。ゲストに近い人物が思いを込めて書いた手紙が披露され、視聴者の涙を誘うシーンが定着しました。 

同番組は10年あまり放送されたあと2005年春で終了し、『おしゃれイズム』がスタート。上田晋也さん、藤木直人さん、森泉さんの3人がMCを務め、プライベートに密着するロケを増やすなど、ゲストに合わせた多彩な構成・演出が見られるようになりました。 

同番組は2021年秋で16年半にわたる放送を終え、現在放送中の『おしゃれクリップ』がスタート。ゲストが「やってみたいおしゃれ」を自らプロデュースした上で、「私の中の、もうひとりのワタシ」というコンセプトのトークを進めています。 

ブレない一社提供と希少価値の高さ 

 ここまで50年にわたる5つのシリーズで共通しているのは、資生堂の一社提供番組であること。 

化粧品の会社だけあって「おしゃれ」という番組名がフィットしたほか、初代の『おしゃれ』では海外のファッションやトレンドを紹介するコーナーがあったり、2代目の『おしゃれ30・30』では最後に古館さんが「あなたにとっておしゃれとは?」とゲストに尋ねるシーンがあったりなどブランディングの工夫が見られました。 

週替わりの美男美女がゲスト出演するほか、目を引くような美女たちのCMが流れることなども含め、『おしゃれ』シリーズは男女を問わず幅広い世代からの視聴を獲得。「おしゃれ」「美しい」というブランドイメージで資生堂と番組が一体化し、さらに年数を重ねることで他番組との差別化につながっていきました。 

 もう1つ、50年放送が続いた要因として大きいのは、年月を重ねるにつれて希少価値が高まっていったこと。時代は移り変わり、昭和時代には多かった“30分番組”がゴールデン・プライムタイム(19~23時)から消えていく中、相対的に『おしゃれ』シリーズの希少価値が高まっていきました。 

 さらに「純粋なトーク番組を長年続けてきた」という実績も、視聴者の視聴習慣を定着させている理由の1つ。トーク番組の主流が『踊る!さんま御殿』(日本テレビ系)、『酒のツマミになる話』(フジテレビ系)のようなグループトークに変わり、1人・1組のゲストを招いてスタジオで行われるものはゴールデン・プライムタイムから激減していきました。 

その点、『おしゃれ』シリーズは、2023年春に『まつもtoなかい』(フジテレビ系、現在は『だれかtoなかい』に改題)がスタートするまで「唯一の純粋なトーク番組」として放送を続けることでブランド化に成功した感があります。 

 もはや『おしゃれ』シリーズは日曜夜の定番であり、「翌日の仕事や学校を控えて最後に見る番組」という人も多いでしょう。また、それは日曜夜に合う構成・演出を微調整しながら、50年にわたって一社提供を続けた資生堂のブレない姿勢への成果にも見えます。近年、同社の業績悪化を報じる記事も見かけますが、「日本人の美を彩るトップ企業として『おしゃれ』シリーズを継続してほしい」と思っている人は多いのではないでしょうか。 

【木村隆志】 

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。 

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