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【横綱の器なのか】貴乃花光司氏は台頭する若手有望力士をどう見る? 「尊富士」と「琴櫻」へのアツいメッセージ

NEWSポストセブン 2024年10月2日 10時58分

 大相撲界では、世代交代の波が強まっている。秋場所で優勝した大の里は、新入幕からわずか5場所で大関に昇進し、横綱への昇格を目指す。台頭する力士たちを、そして令和の大相撲を“平成の大横綱”はどう見ているのか。第65代横綱・貴乃花光司氏(52)が若手力士らについて語った。【全3回の第2回。第1回から読む】

尊富士にケガの懸念

 若手の台頭では、秋場所で十両優勝した尊富士(25)もいる。春場所の優勝後は故障で休場が続いたが、来場所は再入幕も視野に入る。やはり立ち合いからの一気のスピード相撲が持ち味だ。

「幕内の上位でも、今場所の十両でのような相撲が取れればいいんですが、なかなか簡単ではないでしょう。一度幕内最高優勝をしているので、対戦相手も歩幅を掴んできます。大の里にも言えることですが、勢いでいって少し落ち目になった時、立て直しにあたって気をつけないといけないのは大きなケガ。晩年なら仕方がないが、若いうちにケガをするとその後の相撲人生に影響します」

 春場所の尊富士は14日目に右足首にケガを負ったが、千秋楽に強行出場して優勝した。

 貴乃花氏も、2001年5月場所で膝のケガを押して武蔵丸(現・武蔵川親方)との優勝決定戦に挑み、優勝した経験を持つ。勝負を決めた際の“鬼の形相”は大相撲史に残る名場面だが、その後は7場所連続休場。代償も大きかった。

「私も同じですが、尊富士としても逃げ場はあったでしょう。でも、強行出場して優勝したことが、彼の人生での大きな経験になるでしょうからね。あそこで休場して優勝できなかったとして、今後、優勝の機会に恵まれるかはわからないわけです。もちろん出たことでの休場もあったわけで、出るか出ないかどちらがよかったのか、こればかりはわかりません」

 貴乃花氏は次々と台頭する若手を温かい目で見守っている。今場所は8勝7敗で辛うじて勝ち越す結果に終わった大関・琴櫻(26)も、「日本人のなかでは身長も体重も大きいですよね。大きい体で取れる相撲を取っています」と評した。ただ、横綱の器かと尋ねると「どうだろうな。そればかりは……」と続けた。

「逆にあの体格で頭からいって突き押しで勝負が決められるような強さが出れば、自動的に(横綱に)なるんじゃないですか。もともと四つ相撲(右四つ)ですからね。十分に候補になると思いますね。相撲部屋の3代目で、おじいさんが横綱ですから。環境は整っています」

 祖父は元横綱・琴櫻、父は元関脇・琴ノ若(現・佐渡ヶ嶽親方)という相撲一家に生まれた環境は、貴乃花氏自身とも重なる。

「遺伝がどうというより、大切なのは教育環境だと思いますね。私も、力士の生活を子供ながらに垣間見て大変なんだなと思っていましたが、入門しちゃいましたね(苦笑)」

(第3回につづく)

聞き手:鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。スポーツ、社会問題を中心に取材活動を重ね、野球界、角界の深奥に斬り込んだスクープで話題を集めた。近著に『審判はつらいよ』(小学館新書)。

※週刊ポスト2024年10月11日号

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