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《ベッキーは苦戦?》コンプラ時代のバラエティ番組、活躍する女性芸能人の条件は「不倫問題なし」「夫が子育て熱心で妻に従順」「夫の社会的地位がすごすぎない」

NEWSポストセブン 2024年9月30日 11時15分

 コンプライアンスの強化などで、近年変化をとげているバラエティ番組。これからの時代、どんな番組やタレントが視聴者にウケるようになってくるのか。その条件を、有名人批評や夫婦に関する問題について執筆活動を行うライター・仁科友里さんが考察する。

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 これからのバラエティ番組は、今後、内容や役割がどんどん変わっていくのではないか。最近のバラエティ番組を見ていると、随所にその兆しが表れているように思えてなりません。そこで、今回はバラエティ番組の今後について、勝手に予想させていただきます。

これからの鉄板コンテンツは「子育て」

老若男女が見るテレビでは、多くの人が興味を持つことを番組化することが、高視聴率への近道と言えるでしょう。しかし、現代のように価値観が多様化してくると、それを見つけることが難しくなってきます。けれど、たった1つ、人間にとって普遍的な真理があります。それが、「わが子はかわいい。けれど、育児は大変」だと思うのです。9月18日放送の「あちこちオードリー」(テレビ東京)で、司会のオードリー・若林正恭さんは「ショッピングモールで娘と一緒にゲーセンのアンパンマンのSLの乗るやつ、あれ以上面白いものはない」と、芸能界屈指の売れっ子が、お子さんと過ごす時間が何より大事だと明かしています。こういう親御さんの気持ちをうまくコンテンツ化すれば、笑いと涙ありの番組が出来上がるのではないでしょうか。

 子育てをするにあたり、夫婦が円満であることが望ましいのは言うまでもありません。9月13日放送「かまいたちの知らんけど」(MBSテレビ)では、お笑いコンビ「二丁拳銃」の川谷修士、タレントの野々村友起子夫妻が出演し、「夫婦円満のためのルールブック」を公開します。2020年12月15日放送の「しくじり先生 俺みたいになるな!!」(テレビ朝日系)に出演した夫妻によると、野々村さんは共働きであっても、家事を1人で完璧にこなそうとするタイプ。お子さんが生まれても、そのスタンスを崩さなかったために、救急車で搬送されるほど疲労をためこんでいたそうなのです。夫婦仲も悪く、野々村さんは離婚を決意していたと明かしています。その時の経験をもとに、家事の工程をすべて可視化させることで、「夫は家事をやっているつもりなのに、妻から見ると中途半端」という消化不良を無くすことに成功したのだと言います。

「かまいたちの知らんけど」司会の濱家隆一さんも、「やっているつもりで、家事ができていなかった」うちの1人でした。濱家さんは風呂掃除を担当しており、それをテレビでアピールするのはいやらしいという考えだそうです。大変な売れっ子でありながら、家事を当たり前にし、しかも、それをひけらかさないとなれば好感度はマックスに達しそうですが、よく聞いてみれば、濱家さんの風呂掃除とは、浴槽を洗っているだけ。風呂場のカビ増殖防止に一番効果的とされる天井掃除や、できれば見ないことにしたい排水溝の掃除などはスルー。ここに野々村さんがすかさず「あかんで」とツッコミを入れるのです。相方の山内健司さんは家事は女性がやるものという考えがあるようで、万事「(主婦なんだから)仕事せえよ」と強気な姿勢を崩しません。

 夫の家事が中途半端なために、結局自分がもう一度しなくてはならない。それなのにやったやったとドヤ顔されたり、文句を言うとヘソを曲げられた経験のある女性視聴者は、野々村さんの発言に溜飲を下げるでしょう。濱家さんのような当代きっての人気者がダメ出しされるというのは笑いを誘いますし、山内さんの発言はSNSで賛否を呼び、結果的に番組を盛り上げることにつながると思います。ひと昔前の芸能人は生活感を出さないために家庭の話をすることを嫌いましたが、テレビ局はコンプライアンスを強化していますから、家庭を大事にしている、家事育児をきちんとしているというイメージがつくことはプラスでしかないでしょう。

毒舌キャラはおじさんから女優やアイドルに

 また、子育てをする中で避けて通れない受験も、数字が見込めるコンテンツです。その昔、情報番組「スッキリ」(日本テレビ系)において、プロレスラー・ジャガー横田さんのお子さんの中学受験に密着した企画がありましたが、中学受験が過熱している今、同様の企画が行われれば話題になるでしょう。レイザーラモンRGさんのお子さんは、偏差値70超の都立校に在学しているそうですが、芸能人による子育て論がテレビで見られるようになるかもしれません。

 もしバラエティ番組が子育てをメインのコンテンツに据えるなら、毒舌キャラは主に女性、職種で言うと女優やアイドルが担うことになると思います。「夫が寝た後に」(テレビ朝日系)のMCを務める藤本美貴さんは元モーニング娘。ですし、女優・水野美紀さんは「子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます」(朝日新聞出版)を上梓するなど、子育てについて積極的に語っています。水野さんは今年の7月から「news zero」(日本テレビ系)の火曜日パートナーに就任するなど、子育ての経験をベースに活動の場をさらに広げている印象を受けます。

 藤本さん、水野さんは夫婦関係についても、赤裸々に語っています。藤本さんは8月7日放送の「上田と女が吠える夜」(日本テレビ系)において、外食の際、夫に「何が食べたい?」と聞くと「何でもいい」と答えるけれど、筋トレをしているために実際には食べられないものが多く、「すごいムカつくんですよ!」と明かしていました。水野さんも2021年6月21日放送の「有吉ゼミ」(日本テレビ系)において、夫である俳優・唐橋充さんがにおいとカビに敏感なため、洗剤をたくさんためこんでいることを明かし、「収納上手なのかも」と自画自賛する夫に「ぶっとはずぞ。業者か? 店にもこんなにないわ」とツッコんでいました。唐橋さんは万事細かいかというとそうでもなく、鶏肉と豚肉の違いがわからないことがあるそうです。

「無くて七癖」ということわざがありますが、「どうして、夫はこうなんだろう」「どうして、夫はこんな簡単なことができないんだろう」と配偶者の行動を不思議に思う人は多いと思います。それを藤本さん、水野さんのような人気者が明かすことで、世の女性たちは「変わっているのは、うちの夫だけじゃない」と安心感を得るのではないでしょうか。彼女たちの夫が大富豪や有名政治家など社会的地位が高すぎないことも、バラエティ番組においてはプラスなのだと思うのです。もし大富豪の妻や、世界的に活躍する俳優やアスリートの妻、総裁選に出馬中の小泉進次郎さんの妻、滝川クリステルさんのような人が「夫がムカつくんです」と言おうものなら、憧れや嫉妬も相まって、嫌なら離婚しろとか、夫に恥をかかせるなという意見が続出するでしょう。社会的地位がすごすぎず、不倫などの問題も起こさず、子育てには熱心で、妻に従順な夫を持つ女性芸能人こそ、バラエティで活躍できる時代と言えるのではないでしょうか。

 かつて、女性の毒舌と言えば、女性芸人がモテるとされている女子アナやタレントにむかって、ひがみをこめて放つものとされてきました。しかし、今ウケる毒舌は、女優やアイドルのように、女性から憧れられる女性の、生活感ある一言なのではないかと思うのです。男性の毒舌キャラも変わっていくことが予想されます。毒舌と言えば、中高年の男性芸能人の専売特許のようなところがありましたが、パワハラを連想させることから、毒舌キャラと呼ばれること自体を嫌がる人が増えていくのではないかと思います。つまり、今後のバラエティ界では、美人が毒舌化し、それに反比例するように、オジサンが優しくなっていくのではないかと思うのです。毒舌キャラと言えば、多数のレギュラー番組を持つ有吉弘行さんを思い浮かべる人も多いことでしょう。その有吉さんも今年の3月にお子さんが誕生したそうで、育児の話をしてお父さんキャラにシフトしていったほうが、より多くの人に支持されると思います。

2児の母・ベッキーのママタレキャラ確立は難しい?

 それでは、子どもがいれば、子育てバラエティで活躍できるかと言われると、そうとは言えないと思うのです。タレントのベッキーさんは、独身時代はバラエティクィーンとして活躍、今は2人のお子さんがいます。もともと腕のある人ですが、実は育児ネタにはあまりむかない人なのではないでしょうか。なぜなら、ベッキーさんは、夫への不満を言いにくい立場もしくは性格だから。

 もしベッキーさんが、夫への不満をバラエティ番組で明かそうものなら、過去の不倫騒動を蒸し返して「人の家庭を壊したくせに、何言っているんだ」という人が出てくることでしょう。ベッキーさんは上述した「かまいたちの知らんけど」に野々村夫妻と共に出演し、夫とケンカした際は心理カウンセラーのところに駆け込み、夫の取説を作り、ケンカを減らしたと話していました。夫とぶつかりたくない、夫を嫌いになりたくないから、プロに解決してもらおうとしたのかもしれませんが、一般の視聴者にとって、カウンセリングを受けることは敷居が低くないので、あまり参考にならない意見ではないでしょうか。

ベッキーさんが独身時代のバラエティ番組は、中高年男性の司会と若い女性の出演者という組み合わせが標準で、司会者から見て“いい子”とみなされることは大事だったために、それが習い性になっているのかもしれません。しかし、時代も変わっていますし、ベッキーさん自身もいろいろありましたから、いい子ウリされると見ているこちらは白けてしまうのです。一般人から見上げられ、憧れられつつ、「芸能人でも、うちと一緒なんだ」と思ってもらえる部分も見せる。難しいことですが、ベッキーさんならできると信じたい。今後のご健闘をお祈りします。

◇仁科友里/フリーライター。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ』(主婦と生活社)。

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