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《中国人スタッフ不適切発言問題》NHK前理事“偽装辞任”の前例となっていた「2023年の不祥事対応」 理事退任者が「特別主幹」に

NEWSポストセブン 2024年9月30日 11時0分

 NHK・ラジオ国際放送などの中国語ニュースで、中国籍の外部スタッフによる不適切な発言が問題視されたことを受け、9月10日に引責辞任した国際放送担当の傍田(そばた)賢治前理事。その傍田氏が辞任からわずか1週間後に契約職員として再雇用されていたことが、物議を醸している。一報を報じた『毎日新聞』が“偽装辞任”と厳しく断じたNHKの人事には、前例があった──。【前後編の後編。前編から読む】

 問題の発端は、8月19日に生放送された中国語ニュース。中国籍の外部スタッフ男性が尖閣諸島について『中国の領土である』と述べるなど、ニュース原稿にはない発言をした。この問題を受け、NHKは今月10日に稲葉延雄会長など幹部4人が役員報酬1ヵ月分の50%を自主返納することとした上で、報道分野を担当していた傍田理事の辞任を発表したのだった。

 しかし、その1週間後となる9月17日、傍田氏はNHKに契約職員として再雇用され、「エグゼクティブ・プロデューサー」の役職を得て“復帰”。NEWSポストセブンが入手した国際放送部内で共有されたメールでは、傍田氏本人が「海外総支局業務改革担当」のポストに就任することに加えて〈特派員ならではの、地に足のついた付加価値のある情報発信がどこまでできるかが、NHK報道に対する視聴者の信頼を大きく左右すると考えています〉などと今後の意気込みを綴っていた。

 この人事の背景にはどのような事情があったのか。NHK職員が語る。

「不祥事による役員の辞任は、記者らによるインサイダー取引問題で当時の橋本元一会長らが辞任した2008年以来でした。今回の件は傍田氏の立場からすれば生放送中のトラブルという“とばっちり”な訳ですから、少なくとも、稲葉(延雄)会長が中国人スタッフの“不適切発言”を重く捉えていたことは間違いないと思います。

 NHKの理事を形式上辞任させても、例えば関連会社の役員に就任させるという選択肢もあったはず。それをせずにあえて“一社員”に戻したと見るなら、重い処分とも言えるかもしれません」

 その一方で、NHKの役員が不祥事の責任をとったのちに契約職員となるケースには、前例があるという。

昨年あった不祥事の“前例”

「昨年5月、業務として認められていない衛星放送番組のインターネット配信に関連支出約9億円を盛り込んでいた問題が発覚した際には、決定に関与した当時の役員6人が、7月に報酬の一部を自主返納するなどの処分を受けたんです。実はこの時も、処分を受けた元役員3人が、のちに契約職員として新たに契約を結んでいた。

 3人のうち1人は昨年2月、2人は昨年4月に理事を退任していましたが、処分を受けた翌月である8月に契約職員として各局の『特別主幹』のポストに就いています」

 つまり、処分を受けたばかりの元理事が契約職員として要職に就くという人事には、傍田氏以前にも前例があったのだ。

「契約職員とはいえ、エグゼクティブ・プロデューサーとなった傍田さんに与えられている権限は普通の職員よりも十分に強い。契約も個別に結べます。そういう意味でも、批判は出てしまうでしょうね」

 NHKに3人の元役員の人事について聞くと、2人の元役員は「メディア総局特別主幹」、あと1人の元役員は「放送技術局特別主幹」として現在再雇用しているとした上で、傍田氏の人事で過去のケースが参考されたかどうかについては、「個別人事やその経緯については回答を控えさせていただきます」と回答した。また傍田氏の年収については「ご指摘のような事実はありません」とした。

 NHKの今後の対応はいかに——。

(了。前編から読む)

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