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六代目山口組の機関紙『山口組新報』、自虐ネタが消え〈物価高 嫁のやりくり ブッダかな〉〈値上げだと? 家の家計 音を上げる〉と経済苦を嘆く

NEWSポストセブン 2024年10月6日 16時15分

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、六代目山口組の機関紙「山口組新報」最新号掲載の川柳から考える、時代の変化について。

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 その日、新横浜駅に降り立った六代目山口組組長、司忍は、黒のスーツにピンクのネクタイを締めていた。黒のスーツだったのはこの日、横浜市郊外で山口組直参の四代目益田組の総裁、山嵜昌之の葬儀が営まれていたからだ。司組長は葬儀に参列するため、黒いスーツに黒いネクタイ姿の子分らを従えながら颯爽と新横浜駅を後にした。黒のスーツに黒のネクタイ姿を想像しながら、カメラを手に待ち構えていた記者らは、司組長のネクタイの色に驚かされたことだろう。

 司組長にはスタイリストがついていると聞く。スタイリストはプロのスタイリストではなく、部屋住みの若い組員や組長の周りにいる若手幹部が担っているらしい。外出に使うワンボックスには、状況に対応できるよう一通りの衣装が備えてあるとも聞く。黒にピンクはよく映える。ピンクが選ばれたのは、メディアに写真が載ることを意識してのことだろうか。

 横浜市内の斎場には司組長や高山清司若頭、稲川会の内堀和也会長など大物ヤクザが勢ぞろいした。亡くなった山嵜総裁は享年61。六代目山口組直参組長や幹部らの中ではまだ若く、葬儀に参列した大物ヤクザたちの方が年配者だった。山口組関係者は、「プラチナとよばれる直参の中で50、60代の幹部らはまだまだ若造。組長らはみんなかくしゃくとして元気です」と話す。だがやはり老いには抗えないらしく、「寄れば健康や病気の話ですね」という。

 ここ数年、『山口組新報』には健康に関する句が毎号、4~5句選ばれて掲載されている。新しく出た31号の川柳にも〈鰻食べ うなぎ上りや 血糖値〉や、〈糖尿の ことも忘れて ビール飲む〉という生活習慣病を心配する句が載っていた。高齢化が進んでいるといわれる六代目山口組だけに、生活習慣病を気にしなければならない組員も多いのだろう。〈元気かと 再会喜び 病院で〉と笑えない句もあれば、〈ダイエット 明日になっても 明日から〉〈つい撫でる 腹の膨らみ 体重計〉という句もある。ヤクザといえば高級料理をたらふく食べ、高い酒を惜しげもなく注文し、浴びるほど飲むというイメージがあったものだが、今の時代、ヤクザも健康志向になってきたようだ。

認知症を心配する句は見かけない

 ここ数回の新報では妻にいびられ、邪見にされる自虐ネタがいくつも掲載されていたが、31号ではその手の川柳は見られなくなった。それより〈物価高 嫁のやりくり ブッダかな〉〈値上げだと? 家の家計 音を上げる〉など、自分たちの生活に直結する物価高を嘆く句が増えてきた。暴対法、暴排条例、特定抗争指定暴力団の指定にコロナ禍と続き、傘下組織の組員らにとって経済的には厳しい状況が続いているのだろう。

 ヤクザもそうなのかと思わせるものに〈にこやかに 腹の中では うっせえわ〉という句がある。パワハラありきのヤクザの世界では、上の者に口答えしたり反論することは不可能だ。できるのはせいぜい顔で笑って腹の中で舌を出すぐらいというのが、彼らの現実だ。〈お爺さん 都合悪いと ボケたふり〉という句もあり、どこの世界にいても年寄がやることは変わらない。ボケといえば、このコーナーでは健康に関する句は増えているものの、認知症を心配するような句は見たことがない気がする。彼らにとっても認知症は笑えるような話題ではないのだろう。

 そういえば30号の短歌・狂歌に、メディアに対するこんな句が載っていた。〈そのペンで 世直し掲げ人を斬る 昔は朝日今は文春〉。山口組関係者が以前、文春についてこんなことを言っていた。「ヤクザより 今怖いのは 文春砲」、有名人らにとっては確かにそうだ。

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