Infoseek 楽天

《私の最初の晩餐》井浦新がジョージアで衝撃を受けた伝統料理・ハチャプリ「口にした瞬間に『文化の一撃』をくらって、家庭の味だと直感した」

NEWSポストセブン 2024年10月8日 11時15分

「最初に食べたご馳走はなんですか?」。子供の頃に母が作ってくれた料理、上京したときのレストラン、初任給で行った高級店……。著名人の記憶に刻まれている「初めて食べた忘れられない味」を語ってもらい、証言をもとに料理を再現する『私の最初の晩餐』。今回は井浦新さんに、忘れられないご馳走を教えていただきました。

 独特の存在感で映画、ドラマに引っ張りだこの井浦新さん。俳優だけでなく、国内外の芸術の案内人としてNHK Eテレ『日曜美術館』で司会を務めるなど、八面六臂の活躍を続けている。その一方、どれだけ多忙でも「旅」を欠かさない。「旅は好きというより、ほとんど呼吸と同じくらい、自分にとっては大切なこと」と語る井浦さんが、旅先で衝撃を受けた一品とは──。

 * * *
 人生で最初の旅は、山形県の内陸です。父方の実家があるので、赤ん坊の頃から中学3年生の春までは毎年、春夏冬と里帰りしていました。遊びや部活動よりも、まずは家族旅行を大切にしよう。それが実家のスタイルでしたし、家族を持ったぼく自身も同じ考えです。ただ、中学3年の夏休みだけは東京の家に残りました。ずっと熱中していたサッカーのためです。夏が最後の大会なので後悔したくなかったんです。

 初めての海外旅行は、19才で訪れたイギリスでした。ぼくはずっとレコードを集めているのですが、レコード屋に行くのと旅に出るのは似ています。わずか500枚ほどしかプレスされていない1970年代、1980年代の7インチ盤を探して、各地のレコード屋に足を運び、ぎっしり詰め込まれた棚の中から探し物を掘り起こす。実際には探し物を見つけるよりも、自分が意図していない未知の音楽との出会いの方が多いかもしれません。それがいいんです。

 旅も同じです。足を運ぶことでしか得られない偶然と喜び。イギリスにはパンクロックを求めて行ったのですが、現地で流行っていたのはパンクではなく、ハードロックでした。その点、ぼくの期待は裏切られたわけですが、郊外の街並みや路上で売られていたフィッシュ&チップスの味わいはいまでも忘れません。

ふらっと入った食堂で「文化の一撃」

 2015年、NHKのドキュメンタリー『アジアハイウェイを行く』の撮影でジョージアを訪れました。首都トビリシのホテルに着いたのは夜で、撮影は翌朝。疲れていたので寝てしまうことも考えたのですが、何か適当なものでいいから腹に入れておこうと地元の食堂に入りました。

 メニューの冊子はありましたが、ジョージア文字で書かれていて読めません。小さな写真を見て、ピザみたいな料理をお願いしました。「まあ、ピザなら大失敗もないだろう」という安直な発想です。しばらくして来たのは、舟形のパンにたっぷりのチーズ、真ん中に卵。

 この「ハチャプリ」が、ちょっと衝撃的においしかった。ぼくはジョージアについて、事前には何も調べていなくて、だから口にした瞬間に「文化の一撃」をくらって、家庭の味だと直感しました。これがジョージアか。各家庭にそれぞれのハチャプリがあるんだと思って、感激して。

 何が違うのかな、チーズのコクは特徴的かもしれません。パンの生地も、小麦の風味がしっかりしていて……でも言葉では説明できないです。ぼくは、日本ではご飯を食べることが多いのですが、このパンは特別です。実際、撮影中はレストランでのしっかりした食事より、露店とか食堂のハチャプリばかり食べていました。文字通り、ジョージアでの最初の晩餐です。

ジョージアでハマった伝統料理「ハチャプリ」

■「ハチャプリ アジャリア風」のレシピ
●材料(2個分)
生地/強力粉140g、薄力粉60g、プレーンヨーグルト70g、熱湯60ml、ドライイースト1g、塩小さじ1

具材/フェタチーズまたはカッテージチーズ60g、モッツァレラのシュレッドチーズ80g、卵2個、バター20g

●作り方
【1】容器にヨーグルトを入れ、熱湯を加えて混ぜておく。
【2】ボウルに薄力粉と強力粉を合わせてふるい入れ、ドライイースト、塩を入れたら【1】を全体にいき渡るように加え、ヘラでむらなく混ぜる。
【3】粉がひとまとまりになったら台に出し、滑らかな生地になるまでこねる。
【4】生地を丸めてボウルに戻しラップをして、生地が2倍の大きさになるまで発酵させる。
【5】生地をつぶしてガス抜きをしたら台に取り出し、2等分にしてそれぞれ丸め、濡れぶきんをかぶせて10分おく。
【6】打ち粉をした台に生地を置き、麺棒で直径約20cmの円形にのばす。生地を上下から巻いて、左右に生地をしっかりつまんで留める。中央部分にチーズを入れるための空間を作り、ボート形に成形する。
【7】フェタチーズはポロポロに崩し、モッツァレラのシュレッドチーズとあわせて混ぜる。【6】の空間部分に合わせたチーズ1/4量をのせ、卵白を入れ、その上に1/4量のチーズをのせる。同様にもう1つ作る。生地につや出しの卵黄(分量外)を塗る。
【8】オーブンシートを敷いた天板に【7】をのせ、220℃に予熱をしておいたオーブンで焼き色がつくまで15分焼く。一度取り出し、中央にくぼみをつけて卵黄をのせ、再度オーブンで1分焼いたら取り出してバターを添える。

●POINT
焼き時間、温度は目安。使う調理器具により調整する。

【プロフィール】
井浦新/1974年、東京都生まれ。映画『ワンダフルライフ』で初主演。数多くの映画に出演するのみならず、ドラマ『アンナチュラル』や『おっさんずラブ -リターンズ-』など幅広く活躍。アパレルブランド〈ELNEST CREATIVE ACTIVITY〉ディレクター。サステナブル・コスメブランド〈Kruhi〉のファウンダー。映画館を応援する「MINI THEATER PARK」の活動もしている。主演映画『徒花 -ADABANA-』は10月18日(金)よりテアトル新宿、TOHOシネマズ シャンテ他全国順次公開。

写真/菅井淳子 料理・スタイリング/柳瀬真澄 撮影協力/UTUWA

※女性セブン2024年10月17日号

この記事の関連ニュース