Infoseek 楽天

【10.27総選挙289全選挙区緊急予測】自民党“裏金議員”45人のうち20人以上が落選の可能性 選挙後に旧派閥の勢力図が大きく変わり、安倍派の政治支配終焉か

NEWSポストセブン 2024年10月9日 6時59分

 国会論戦をすっ飛ばして一気に解散・総選挙へと突き進む石破茂・首相。総裁選で党の“顔”を代え、ボロが出ないうちに選挙を乗り切ろうという腹だが、有権者はそう甘くはない。永田町で50年以上にわたり政治取材を続け、数々の選挙で当落予測を的中させてきた野上忠興氏(政治ジャーナリスト)が、全289小選挙区の最新情勢を詳細分析。その結果は衝撃的なものとなった。【全3回の第3回。第1回から読む】

旧安倍派がW逆風で大惨敗

 全国を見渡すと、中根一幸氏(埼玉6区)、小田原潔(東京21区)、高鳥修一氏(新潟5区)、田畑裕明氏(富山1区)、若林健太氏(長野1区)、青山周平氏(愛知12区)、宗清皇一氏(大阪13区)、谷川とむ氏(大阪19区)など、裏金問題と旧統一教会問題の双方で名前が挙がった旧安倍派の若手議員は軒並み苦しい戦い。

 小選挙区に出馬する自民党の裏金議員45人のうち20人以上が敗北する可能性がある。

 旧統一教会と関係があった議員も厳しい審判を受ける。

「教団のイベントに参加したり、教団の活動を支援したりしてきた議員には選挙に弱い人が多い。1票でも欲しいから、選挙で教団に依存して関係が深まった。そうした議員は今回、有権者の批判にさらされるだけでなく、教団の支援もない。公明党支持者の協力も得にくいでしょう。小選挙区での当選どころか、比例復活も難しくなりそうな議員が多い」

 旧統一教会の韓鶴子総裁を「マザームーン」と呼んだ山本朋広氏(神奈川4区)、ビデオメッセージで韓総裁に「真のお母様」と呼びかけた土井亨氏(宮城1区)をはじめ、山際大志郎・元経済再生相(神奈川18区)らが旧統一教会批判で追い詰められている。

 自民党総裁選の決選投票では、旧派閥の議員たちが再結集する動きが見られた。

 だが、野上氏は、総選挙後は旧派閥の勢力図が大きく変わることが予想されると指摘する。

「旧統一教会との関係も裏金問題も、中心になったのは最大派閥の旧安倍派であり、同派の多くの議員が関与していた。総選挙で最も情勢が厳しいのも同派の議員たちです。解散前には100人を超えていた旧安倍派ですが、大幹部をはじめ議員の落選が相次ぎ、選挙後には勢力が大きく減るでしょう。この総選挙は安倍派の政治支配の終焉をもたらすのではないか」

世襲にNO、和歌山「二階王国」も崩壊の瀬戸際

“裏金議員対決”になるのが「二階王国」と呼ばれた和歌山2区だ。

 引退する二階俊博・元幹事長の後継者で秘書を務める三男の伸康氏が自民党から出馬するが、そこに裏金問題で自民党を離党勧告処分となった世耕弘成・元参院幹事長が参院から鞍替えして無所属で出馬する意向を固めた。いわば二階王国に“殴り込み”をかける。

 野上氏は情勢をこう分析する。

「二階氏にすれば息子に地盤を継がせるために負けられない戦い。世耕氏は和歌山選出の参院議員で系列の地方議員も多い。自民党県連や地元企業を二分する激しい選挙戦が予想されるが、二階氏が持つ中央官庁や業界団体への影響力を新人の息子がそのまま引き継げるわけではない。地元では引退する二階氏より、離党しても依然として自民党参院議員の間に大きな発言力を持つ世耕氏に期待する声が大きい。世耕氏が一歩リードです」

 だが世耕氏は裏金問題で離党、二階氏も引退表明で処分は免れたとは言え、裏金問題で元秘書の有罪が確定している。

 有権者にすれば、野党統一候補など第3の候補が出なければ、一票の行使で裏金問題への審判を下す選択肢がないことになる。

自民の比例票を削る「日本保守党」

 新たな流れも出てきた。

 地方政党・減税日本を率いる河村たかし・名古屋市長が、作家の百田尚樹氏らが結成した「日本保守党」から愛知1区で総選挙に出馬すると表明した。

 日本保守党は総選挙に少なくとも候補者5人を擁立し、国政政党を目指すとしている。

「前回の参院選では参政党が比例代表で約176万票を得て1議席獲得した。日本保守党はそれ以上の集票力を持つ可能性がある。これは自民党にとってマイナスに働く。保守派の新党が増えるほど、岩盤保守層の票を奪われるため、自民党の比例代表での集票力がさらに下がると予想されます」(野上氏)

 福岡9区のように自民党本部と県連の候補者調整が難航している選挙区もある。本稿締切時点で、大家敏志・参院議員、三原朝利・北九州市議のいずれが公認候補となるか確定しておらず、2人とも出馬して潰し合いになる可能性もある。

 自民党議員たちは新首相誕生の「ご祝儀票」を期待しているのだろうが、現実はマイナス材料ばかりの選挙戦だ。

 ウソつき解散を仕掛けた石破首相には、総選挙後に茨の道が待ち受けている。

(了。第1回から読む)

【プロフィール】
野上忠興(のがみ・ただおき)/1940年、東京生まれ。政治ジャーナリスト。1964年に早稲田大学を卒業後、共同通信社に入社。1972年より政治部、自民党福田派・安倍派(清和政策研究会)の番記者を長く務めた。自民党キャップ、政治部次長などを歴任後、2000年に退職し、フリーに。『安倍晋三 沈黙の仮面: その血脈と生い立ちの秘密』(小社刊)など著書多数。

※週刊ポスト2024年10月18・25日号

この記事の関連ニュース