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《防弾チョッキ着用で出廷》「フルフェイスヒットマン」は「元神戸山口組No.2」中田浩司組長だったのか 初公判で検察が明かした「2秒で6発の銃撃を浴びせた瞬間」

NEWSポストセブン 2024年10月14日 9時13分

「すべて間違っています。私は犯人ではありません」──10月8日、山健組の組長であり、かつて神戸山口組の若頭代行だった中田浩司被告(65)が神戸地裁の証言台で殺人未遂、銃刀法違反などの起訴内容を真っ向から否認すると、満員の傍聴席にどよめきが広がった。【前後編の前編】

 法廷と傍聴席の間にはアクリル板(パーティション)が設置され、法廷への入場には厳しいボディチェックが行われた。開廷前に裁判長から「法廷外での裁判員への声掛けNG」「録音録画NG」などの注意事項が説明され、「事件から長い時間をかけ、ようやく公判になりました。もしルール違反により(公判が)中断となってしまうと、再び半年、1年などの時間がかかってしまいます」とアナウンスがあった。

 重々しい空気の中、刑務官4人に連れられて現れた中田被告は、全身黒いジャージにマスク姿。胸元が盛り上がる様子が目立っていた。警察関係者は「元々、中田被告は筋肉質だが、この盛り上がり方は不自然。防弾チョッキを着用しているんちゃうか」との見立てだ。

中田被告の供述で「山口組分裂抗争」が終わる可能性も

 この日、神戸地裁で行なわれた裁判員裁判は2019年8月、神戸市中央区にある六代目山口組の中核組織・弘道会の関係施設前において、弘道会系組員が何者かに銃撃された事件の初公判だ。被害者は5発の銃弾を至近距離から撃たれ、右腕を切断するなど全治半年の重傷を負った。

 事件直後から暴力団関係者の間には、事件現場の防犯カメラ映像が流出。フルフェイスのヘルメットをかぶった人物が、バイク上から車の中を銃撃する犯行の決定的瞬間が映されていた。わずか2秒ほどの犯行であり、その手慣れた様子に関係者らは、「抗争相手の神戸山口組か、任侠山口組(現・絆会)のヒットマンによる犯行だろう」と見ていたが、事件から約4か月後の同年12月、犯人として中田被告が逮捕されると驚きが広がった。

「当時の中田被告は、神戸山口組・井上邦雄組長の出身母体であり、山口組の名門組織として知られる山健組の組長。そして神戸山口組の若頭代行を務めていたことから、分裂抗争を指揮する立場であり、現場でヒットマンをやる人物ではない。一体何があったんだと大きな話題になりました」(実話誌記者)

 一方で当時、井上組長と中田被告の間に不穏な話もあった。

「事件の約半年前の2019年4月に、神戸市の路上で、山健組の若頭が弘道会傘下組織の元組員2人に刃物で襲われ、重傷を負う事件があった。山健組としては当然、弘道会にカエシ(報復)をしなければならない。中田被告は井上組長から、“早くしろ”と強く迫られていたと言われている。さらに2019年8月ごろには、井上組長が中田被告を殴ったという噂まで流れ、あわせて中田被告が神戸山口組や山健組の定例会に姿を見せなくなっていた」(同前)

 その直後に今回の事件が発生したため、「中田被告はヤケになって犯行に及んだのではないか」とも囁かれていた。また、事件から2年後の2021年9月には一部の組員を残して山健組が六代目山口組に復帰。中田被告も勾留中でありながら「幹部」というポストを与えられている。

「こうした経緯のため、中田被告の供述には非常に強い関心が寄せられていた。もし万が一、“事件は井上組長の指示だった”などと供述したものなら、井上組長が使用者責任を問われることになる。中田被告の一言をきっかけに、10年目に突入した山口組分裂抗争を終結させる可能性もあり得たわけです」(同前)

犯人は犯行後、中田被告の自宅に──

 事件発生から約5年経って始まった裁判の争点は、中田被告が犯人かどうかに絞られている。冒頭陳述で弁護側は、バイクに乗ったフルフェイスの人物によって事件が起きたことは争わないが、検察が提出した証拠には、この人物が中田被告だとする“直接証拠”がないと主張。「検察は間接証拠による推認というやり方をとる」「間接証拠の積み重ねに価値がない」とし、全面無罪を主張した。

 この日の公判は、検察側の証拠提出に終始。検察は防犯カメラのリレー捜査から得られた映像をもとに、犯行当日の犯人の行動ルートを提示。映像のなかで、犯人は黒い原付バイクに乗り、弘道会の拠点周辺に幾度となく姿を現していた。その後、軽自動車に乗った被害者が拠点前で荷物の運び込みを終え、駐車しようとした直後に通り過ぎたばかりの黒い原付バイクが急スピードで切り返し、わずか2秒足らずで6発の銃撃を浴びせた。

 検察は、犯人が犯行後、現場付近にあるホール・劇場の駐車場で、白色のスクーターに乗り換え、再び近隣病院の駐車場で乗り捨て、徒歩で民家に入ったと主張し、防犯カメラの映像を提出。原付バイク、スクーターは中田被告本人や山健組に関係があり、犯人が徒歩で移動した民家は中田被告の自宅だったこと、犯人が自宅に入った直後に中田被告の携帯に発信履歴があったことを今後提示していくという。また、当日昼の中田被告と現場で写った犯人の服装が同じだったとも指摘している。

 5時間近くの公判の間、中田被告は常に検察をまっすぐ睨んでいた。判決は10月31日に下される予定だ。

(後編に続く)

 

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