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《桜塚やっくんの墓参りに密着》11回目の命日…女装研究家になった元バンドメンバーTaiGaの告白「やっくんの夢だった『武道館での歌唱』を叶えたい」

NEWSポストセブン 2024年10月15日 15時59分

 2013年10月5日、人気お笑い芸人・桜塚やっくん(本名:斎藤恭央さん)が自動車事故によって37歳の若さでこの世を去った。あれから11年。神奈川県川崎市の公園墓地で降りしきる雨のなか墓参りをしていたのは、やっくんとバンドを組んでいたTaiGa(タイガ)だった。彼は辛い別れを経て、今、どうしているのか。TaiGaの墓参りに付き添った。【前後編の後編】

 TaiGaはやっくんが結成した女装ロックバンド「美女♂men Z」の曲『絆』を流しながら、彼のお墓に向かって話しかけている。この日、桜塚さんのお墓の前にはたくさんの花束が置かれていた。

「お墓の周りも綺麗でしょう。11年経った今も、命日にはやっくんのファンが遠くから来てお墓の周りを掃除してくれたり、お線香をあげてくれるんです。僕は今日、やっくんと飲もうと思ってビールを買ってきました」(TaiGa、以下同)

 こう言うと、TaiGaは缶ビールを開け、グイっと一口飲んだ。この時、どしゃ降りの雨はパラパラと小雨に変わりつつあったが、彼の目からは大粒の涙がこぼれているように見える。

「今日は僕にとって唯一、バンドメンバーとの楽しかった思い出に浸りたい日なんです。だけど、毎年この日が来ると色んなことを思い出して不安で仕方なくなります。あの事故の後のことを、本当なら全てをお話ししたいところですが……。生き残った僕らには、地獄のような日々が待ち受けていました。やっくんの死を利用して売名や金儲けをたくらむ者が、次々と現われたんです」

「昨年、芸能界引退を考えた」

 TaiGaによると、許可なくやっくんの名前を使い、バンドのグッズ類を販売されたり、身に覚えのない因縁をつけられ、多額のお金を請求されることがあったという。

「なかには、『桜塚やっくんのバンドメンバーはウチの所属アーティストだ。仕事の話はすべて自分を通せ』と偽る人までいました。人が亡くなっているのに、なぜこんなひどいことができるのかと……。人間の嫌な部分を目の当たりにしてしまい、この時はもう怒りや悲しみを通り越し、笑うことしかできませんでした。僕が二人を思い、泣くことができるのは、やっくんが出ているライブ映像を編集している時でした。悔しさや悲しみ、もう一度会いたい気持ちが溢れてしまい、パソコンの前で何度も作業する手を止め、溢れる涙をタオルでぬぐいながら編集作業をしていました」

 こうして過去を振り返っていたTaiGaだったが、突然黙り込んでしまった。そして、しばしの沈黙を経て、うつむきながらこう話し始めた。

「実は去年の今頃、芸能界引退を考えていたんです。やっくんが芸能界入りのチャンスを与えてくれたことを支えに今まで頑張って活動を続けていましたが、年齢とともに仕事が手詰まりになってしまって……。僕以外の他のメンバーは全員表舞台から離れ、別の仕事についていますし、自分も夢を諦めよう。そう思っていました。特に2019年に甲状腺がんを患ってから、声が出なくなったこともありましたし、コロナの影響もあってステージに立てなくなってしまったんですよね」

「女装研究家」として活動

 しかし、そんなTaiGaの運命を変えたのは、やっくんと組んでいたバンド時代に培った「女装」だった。

「実は僕、やっくんとバンドを組む前は、女装をしたことがなかったんです。でも、周りから『メイクがうまくなったね』とか、『女の子にしか見えない、可愛すぎる』と褒めてもらえるようになりまして。2020年から『女装研究家』としてYouTubeチャンネルを始め、メイクやファッションの動画を出していたんです。1年ほど前から女装姿でのライブ配信に切り替えて、曜日と時間を決めて週2~3回定期的に配信をしていたところ、徐々に登録者数が増えています。

 先月、『同一人物に見えない画像を貼れ』というハッシュタグをつけて、18歳の頃に建設現場で働いていた頃の筋肉もりもりな自分の写真と、現在の女装姿の写真を並べてXに投稿したことも、僕にとっては大きな転機になりました。それがニュースに取り上げられたことでXのフォロワーとYouTubeの登録者数、あわせて1万人以上増えて、改めてネットの反響の大きさを感じました」

 取材が終わって外に出ると、いつのまにか雨はすっかり上がっていた。TaiGaさんは、まるで誰かに語りかけるように空を見上げてこう言った。

「『いつか武道館で歌いたい』と言ってくれたやっくんの夢を叶えたい。そのために、一歩ずつ前に進んでいきます」

(了)

◆取材・文/佐藤ちひろ(ライター)

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