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2人合わせてGⅠ60勝の名伯楽が「引退競走馬」への支援を呼びかけた

NEWSポストセブン 2024年10月17日 7時15分

 タイキシャトル、シンボリクリスエスなどJRAのGⅠ最多34勝の藤沢和雄元調教師(73歳)と、ウオッカ、エピファネイアなどでそれに次ぐ26勝をあげた角居勝彦元調教師(60歳)によるトークショーが、10月14日に東京競馬場隣接の競馬博物館「馬の学び舎ミュージアムホール」で行なわれた。

 角居氏は2000年の調教師試験合格後、技術調教師として藤沢和雄厩舎で研修しており、「藤沢先生は調教中どこにいても管理馬のことを見ていらした。遠くにいる馬の歩様がおかしいということも、私が間違えて余計に走ってしまったこともちゃんと見えていた」と当時の印象を語り、藤沢氏から譲り受けたゴールドレジェンドが開業当時の厩舎経営を助けてくれた思い出の1頭だと明かした。

 一方の藤沢氏は「昨日の秋華賞では国枝先生の馬(ステレンボッシュ=3着)にやられました」と嘆いて会場を沸かせたが、実は秋華賞で勝ったチェルヴィニアは、2016年のオークスで2着に敗れたかつて管理馬・チェッキーノの第2子。この日のトークショー前にも「屈腱炎で7戦しか走れなかったけれど、チェッキーノっていうのは本当にすごい馬だよねえ」と回想。チェッキーノの母ハッピーパスも管理、さらにその母ハッピートレイルズの初仔シンコウラブリイは、1993年藤沢厩舎に初めてのGⅠ勝利をもたらしている。他にもキングストレイルやコディーノなどが名を連ねる厩舎所縁の一族なのだ。

 そんな2人のレジェンドからどんな名馬の秘話が明かされるかと思いきや、この日のテーマは、かつてはタブー視されていたサラブレッドのセカンドキャリア問題。角居氏は調教師時代の2016年から本格的にこの問題に着手。2021年に勇退した後は、故郷である石川県能登半島の珠洲市に、余生を送るための牧場を開設するなど、引退競走馬の支援に尽力してきた。

 能登といえば今年は元旦の震災や豪雨で壊滅的な打撃受けた地域だが「寄付やボランティアに頼るばかりではなく、馬が自分で生活費を稼ぐようなシステムを構築していかなければならない。日本独自の馬文化を築くためにも、もっと身近に馬に接する機会が必要」と熱弁。藤沢氏も「競走馬として走れるのはせいぜい3年ぐらいだけど、馬はもっともっと長く生き続ける。そういったことについても、デビュー前から思いを巡らすようにしていくべき」と、座右の銘でもある“一勝より一生”の精神を強調。JRAアドバイザーとして協力していくことを誓った。

 この日は「サンクスホースデイ」として、東京競馬場の日吉ヶ丘付近に引退馬保存活動をしている団体のブースが並び、多くの競馬ファンが足を止めて競走馬の余生に思いをはせていた。

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