Infoseek 楽天

《世界一に突き進む大谷翔平》ワールドシリーズMVPに向けて揃う好条件「対戦相手に天敵タイプの投手がいない」、最大のライバルは“ドジャースの選手”か

NEWSポストセブン 2024年10月18日 11時15分

 自身にとって初めてのポストシーズンで世界一へと突き進むドジャース・大谷翔平。すでに数々の記録を更新する歴史的なシーズンとなったが、残された唯一の称号が「ワールドシリーズMVP」だ。その頂に到達する条件は、十分すぎるほどに揃っている。

2009年に「MVP」を獲得した松井秀喜

 今季の大谷はメジャー史上初の「50-50」を達成し、59盗塁はイチロー(2001年、56盗塁)、130打点は松井秀喜(2005年、116打点)が保持していた日本人シーズン最多記録を塗り替えた。

 その先に目指すのは、2009年のヤンキースで松井が日本人として唯一獲得したワールドシリーズMVPだ。大リーグ評論家の福島良一氏が言う。

「大谷がワールドシリーズMVPを獲るには、短期決戦のなかで試合を決める一打を放ち、チームを世界一に導いたという鮮烈な印象を与えること。

 2009年の松井はシリーズ通じて打率.615、3本塁打、8打点という驚異的な数字を残した。とりわけ世界一を決めた第6戦はホームランを含む4打数3安打、ワールドシリーズタイ記録の1試合6打点と大暴れ。見事MVPを勝ち取った」

 ポストシーズンに入ってからの大谷は、パドレスとの地区シリーズでダルビッシュ有や左のリリーフ陣に抑えられる姿が印象に残るが、福島氏は「調子を落としているわけではない」と見る。

「地区シリーズで同点3ランもあったし、メッツとのリーグ優勝決定シリーズ第1戦も2安打1打点、センターにホームラン級の大フライも打った。

 2009年の松井も、地区シリーズやリーグ優勝決定シリーズでは打率2割台と絶好調ではなかったが、要所のホームランなどでチームの勝利に貢献。今の大谷と同じような状態でした。あとは最後の1週間で爆発的な活躍を見せられるかどうかです」

 今季はDHに専念する大谷だが、2009年の松井も「5番・DH」での起用だった。当時はナ・リーグがDH制を採用していなかったため、対戦相手・フィリーズの本拠地(第3~5戦)はベンチスタートとなったが、そこでも代打本塁打を放つなど存在感を見せた。

「レギュラーシーズンは守備の貢献がないDHがMVP争いで不利というのが常識で、大谷が今季獲得すれば史上初の快挙。一方、短期決戦のワールドシリーズはもともとDHにもチャンスは十分にある。それは松井が証明しています」(福島氏)

 大爆発で勝利に貢献するには、塁上に走者のいるチャンスで打順が回ってくるかも重要だ。

「松井が在籍当時のヤンキースは、1番のジーターや4番のA・ロドリゲスらが出塁して打席が回ることが多く、そこで勝負強さを発揮した。6番に強打者捕手のJ・ポサダがいて、相手は松井と勝負せざるを得なかった。

 今季のドジャースも1番・大谷の後ろに2番・ベッツ、4番・フリーマンのMVP経験者が控え、さらにここにきて下位打線が調子を上げてきた。チャンスで回り、勝負が避けられないという条件が整ってきた」(福島氏)

ヤンキースが相手でも大丈夫

 ワールドシリーズに進出した場合、対戦相手はア・リーグのヤンキースかガーディアンズ。「どちらも大谷が苦手とするタイプの投手がいないのはプラス材料」とするのは、『メジャーリーグ・完全データ選手名鑑』編著者である友成那智氏だ。

「パドレスとの地区シリーズでは、大谷を研究し尽くしたダルビッシュに対してだけでなく、剛速球を武器にする左投手のT・スコットに歯が立たなかった。警戒すべき左の速球派としてはヤンキースにC・ロドンがいるが、調子を落としている。若手投手主体のガーディアンズも同様で、大谷の天敵タイプがいない。

 2009年に松井が対峙したフィリーズの投手陣も一流ピッチャーは右ばかりで、左はいずれもチェンジアップを武器にする投手だった。松井が苦手とする外角に逃げるスライダーで勝負する左ピッチャーがいなかったことが有利に働いたが、今季の大谷の状況も似ており、好条件が揃っていると言えるのではないか」

 屈指の人気球団・ヤンキースが相手なら盛り上がりは必至だし、「ヤンキースタジアムは右中間が左中間より4メートルも近く、松井も大いに活躍した“左のホームランバッターの天国”と呼ばれる」(友成氏)という点も大谷にプラスにはたらく可能性がある。

 基本的にチームの勝利がMVPの条件だが、「その場合、MVP争いのライバルはドジャースの選手になる。好調のフリーマンや大舞台に強い“10月男”のK・ヘルナンデスよりも目立つ固め打ちを見せられるかがカギ」(友成氏)となる。

 シーズン終盤に入り、大谷は得点圏打率を上げてきた。パドレスとの地区優勝争いを繰り広げた9月19日以降に限れば、得点圏打率は.842。ポストシーズンでもメッツとの第1戦までの6試合で.800だ。前出・福島氏が言う。

「『50-50』を達成したマーリンズ戦での6打数6安打、3本塁打、10打点、2盗塁の活躍でシーズンMVPを決定づけた。あのバッティングと走塁、そして爆発力を見せられれば、ワールドシリーズMVPはぐっと近づく」

 栄冠は目の前にある。

※週刊ポスト2024年11月1日号

この記事の関連ニュース