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《デマに数千人殺到》「高額報酬バイト」に群がる若者たち トクリュウとつながり闇バイトや悪質スカウトに取り込まれる可能性も

NEWSポストセブン 2024年10月20日 16時15分

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は「トクリュウ」とつながる可能性があるSNSでのバイト募集について。

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 10月2日、埼玉県所沢市の住宅街で緊縛強盗事件が起きた。被害者は所沢市の住宅に住む85歳と83歳の老夫婦。犯人の男4人は「金を出せ」と老夫婦を脅し、粘着テープで縛った上に刃物のようなもので腕を切りつけ、現金約8万円を奪った。だが犯人とみられる男たち3人は事件発生から数時間で逮捕された。この事件では警察官に追いかけられ、走って逃げる映像が公開された。

 男たちは警察で「SNSを使って闇バイトに応募した」と話し、容疑を認めているという。互いに面識はなく、秘匿性の高いアプリを利用して連絡を取っていたとみられている。首都圏で高齢者を狙う金額強盗が相次いでいる。どの事件も逮捕された容疑者らは皆、「闇バイトに応募した」と話しているといい、いずれも「トクリュウ」によるものだとみられている。

 トクリュウとは、匿名・流動型犯罪グループの略である。その特徴は、自分たちでグループ名を名乗っていないことだ。匿名性の高いSNSで実行役と連絡をとっているため、指示役を特定しにくくなっている。

 もう1つの特徴として挙げられるのが流動性が高いことだ。闇バイトなどでその都度、実行役を集めるためメンバーが入れ替わる。特殊詐欺の実行犯として逮捕されたり、強盗事件で逮捕される容疑者のように、実行犯は使い捨てのコマでしかない。

 昭和や平成初期の頃、緊縛強盗といえば日本に強盗で出稼ぎにきていた韓国人グループや中国人グループの犯行が多かった。彼らは仲間内の数人で入国し、何件が強盗しては出国して国へ戻る、を繰り返した。ほとぼりが冷めた頃を見計らって別の数人が入国、「入国時期によりメンバーが入れ替わり立ち代わりしたため、容疑者全員を特定し逮捕するのが至難だった」と、当時、緊縛強盗事件を担当していた元刑事は語る。

 当初彼らは主に同郷の者を狙った。同じ民族の方が生活習慣や行動傾向が読めるからだ。次に金があるという噂のある家を狙ったという。彼らはグループのメンバーで犯罪を行っていた。「見知らぬ者を犯行グループにいれると、突発的なことに対処できない。パニックになって何をするかわからない。自分たちが捕まるリスクが高まるため、彼らは仲間のメンバーで犯行に及んでいた」(元刑事)。

 しかし今や実行犯は使い捨ての時代だ。高額の報酬を餌に実行犯を募集する闇バイトが横行し、互いに素性の知らない者同士が集まり強盗や窃盗を行い、離散していく。世の中は空前の人出不足だというのに、手軽に簡単に高い報酬が手に入ると短絡的に信じてしまうのか、バイトに応募する若者は後を絶たない。メディアでも散々報じられているにも関わらず、新しい事件が次々と起こり、新たな容疑者が逮捕されていく。

高額報酬を謳うSNSのバイト募集

 SNSで呼びかければ、報酬につられた若者が無防備に集まってくる。そんな時代を象徴するような事が、先日、東京・有明の東京臨海広域防災公園であった。9月29日のFNNプライムオンラインで放送された特集追跡ニュース記者の目、『【独自】「デモ参加に1万円」”サクラ募集”に数千人が殺到 報酬受け取った参加者も…若者に広まった情報はデマか本当か』に詳しいが、この日、有明でコロナワクチン反対を主テーマとするデモが行われたのだ。

 過去にも何回か開催されているデモだというが、参加者によると今回は様相が違ったという。広々とした防災公園に集まった数千人の若者たちは、SNSで拡散された「緊急募集。歩くだけで1万円」などのバイト募集を見てきたといい、誰が動員をかけたのか、誰が金を払うのかすら、ほとんどの者は知らなかったらしい。主催者側もサクラの募集はしておらず、デモ参加で報酬を出すというのは事実無根と否定。記事によると、一部風俗店のスカウトから話をもちかけられたというグループでは金が手渡されたとあるが、支払い元は不明。他の者はデマに踊らされただけだった。

 後日、この場にいたという者に話を聞くことができた。彼によると「バイト募集を見てきたという若い女子が、ホストみたいな男に何処かに連れていかれたり、免許証の両面を写メで撮って送っていたりしていた」という。露木康浩警察庁長官は、新宿歌舞伎町を視察した際、「女性に借金を負わせて売春をさせる卑劣な営業手法を取り締まる」「悪質ホストクラブの背景にもトクリュウの関与があるのではないか」とコメントしている。誰かが、集めた若者の中から目ぼしい子をスカウトしたり、闇バイトにつながりそうな者を物色していたのだろうか。

 トクリュウとつながる可能性がある高額報酬を謳うSNSのバイト募集。うまい話には裏があると言っても、応募してしまう者はいる。特殊詐欺対策には声が録音される可能性のある留守番電話が効果的というが、闇バイト対策に危険なSNSメッセージを警告としてくれるようなアプリが開発されることを願っている。

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