自民党は選挙前より60議席近くも減らし歴史的な惨敗となった今回の衆院選。政界全体を巻き込む“本当の大嵐”がやってくるのはこれからだ。自民党総裁選で注目を集めた勢いで解散総選挙を乗り切ろうとした石破茂・首相の目論見は大きく外れ、恨みを募らせた反主流派との政争が始まる。発火点と見られるのは高市早苗・前経済安保相だ。野党が内閣不信任案を提出すれば、高市氏を支持する反主流派が不信任案賛成をちらつかせつつ、石破首相に退陣を要求するという展開もある。もはや絶体絶命の石破首相。今後の政界地図はどう変わっていくのか──。【全4回の第2回】
菅、岸田が敷く“高市包囲網”
自民党内の混乱がより深まるのは、石破首相の退陣後だ。
自民党でポスト石破を決める総裁選が行なわれるとなれば、前回総裁選で石破氏に僅差の2位だった高市氏が最有力候補なのは間違いない。
だが、政治ジャーナリストの宮崎信行氏は「高市総理」が誕生する可能性は高くないと見ている。
強力なライバルたちが立ちはだかるからだ。
「高市氏は岩盤保守層の強い支持があり、前回総裁選は党員票で1位だったが、決選投票で敗れたのは石破氏のほうが“選挙の顔”として国民の受けがいいと判断されたからです。来年夏には参院選が控え、衆院は与野党伯仲状態となった。次の総理総裁には“参院選の顔”としての役割と、連立やパーシャル連合に向けた交渉が求められる可能性がある。そうなると、タカ派の高市氏は不利になる。
手堅い政治手腕を持つハト派の旧岸田派の林芳正・官房長官や旧茂木派の加藤勝信・財務相が有力候補に浮上するはずです。両者ともそれぞれ他の旧派閥からも支持が得られる候補者であるということも大きい」
前回総裁選で3位の小泉進次郎氏も有力候補の一角だ。
9月の総裁選はキングメーカーの戦いでもあった。決選投票で菅副総裁と岸田文雄・前首相が石破氏を支持し、麻生氏がバックについた高市氏を逆転した。
林氏と加藤氏、進次郎氏はその石破政権で重用されている主流派だ。
次の総裁選は高市氏が本命のように見えても、決選投票で再び菅副総裁、岸田前首相というキングメーカーの支援を受けた主流派の3人が結束し、高市氏の総理就任阻止のために包囲網を敷く可能性が高い。
石破政権を倒された主流派の反撃だ。そうなれば、高市氏の勝ち目は薄い。
(第3回に続く。第1回から読む)
※週刊ポスト2024年11月8・15日号