Infoseek 楽天

《自慰強要・動画拡散》いじめ疑惑の東京・宝仙学園、「さらなる炎上が危惧される」公表を取りやめた“謝罪文”

NEWSポストセブン 2024年10月27日 11時13分

 生徒間のいじめ疑惑が報じられた、東京・中野坂上にある私立学校「宝仙学園 順天堂大学系属理数インター中学校」(旧名「宝仙学園中学校 共学部理数インター」、以下「宝仙学園中学校」)。NEWSポストセブンは、2020年4月~2023年3月に同校に通っていたAくんが複数の男子生徒から受けたいじめについて報じた。 取材班は、学校側が在校生とその保護者たちに向けて謝罪したコメントを入手した。【前後編の前編】

 2022年11月、Aくんは中学3年生のときの修学旅行で自慰行為を強要されただけでなく、その様子を撮影した動画を校内で拡散されたという。

 教師陣も動画について把握するに至ったが、かねてよりAくんの母親がいじめの可能性について担任に相談していたにもかかわらず、Aくんが問題児と見なされて、同年11月下旬から別室指導を受けることに。さらに中学卒業直前の1月というタイミングで、学校側に“これ以上の指導・支援は難しいので外部進学をしてほしい”との旨を言い渡された。

「宝仙学園中学校」ではほとんどの生徒がエスカレーター式で高校に進学しており、Aくんも内部進学のための書類を提出済みだったが、イチから高校受験と向き合うことに。

 幸い進学先は見つかったが、Aくんの心は深く傷ついたままだ。今でもふとしたときに別室指導や修学旅行での出来事、日々受けていたいじめの恐怖がよみがえり、1時間以上、涙が止まらないことがある。2023年11月、Aくんには心的外傷後ストレス傷害(PTSD)の診断が下った。

 報道後、ネット上では〈こんなの許されていいはずがない〉や〈子供がいる身としては涙が出る〉、〈いじめではなく犯罪〉といった怒りの声が噴出した。学内はどんな様子だったのか。学校関係者が証言する。

「生徒の間でも報道が広まり、『宝仙でニュース検索して!』と騒ぎになっていました。報道があった直後の9月2日、学校側から全校生徒と保護者に向けて、一連の経緯や今後の対応についてアナウンスされました。9月5日には、校長名のメールで在校生や保護者らに向けた謝罪コメントが発信されました」

学校側が発信した「謝罪メッセージ」

 NEWSポストセブン取材班は、このメッセージの内容を入手した。

 学校側は〈記事に掲載された行為の強要があったのか否か、進路変更の経緯等に関する重要部分において本校の実施した調査結果とは異なる記載が含まれております〉としつつも、〈詳細については、該当の元生徒及び本校生徒の個人情報に関わるものであり、センシティブな内容を含むことなどから、控えさせていただきますので、何卒ご理解ください〉と“調査結果とは異なる記載”の詳細については伏せている。

 その上で、〈本校におきましては、かねてよりいじめ防止対策を講じてきましたが、このいじめの重大事態案件の発生を真摯に受け止め、いじめは絶対に許容しないという方針のもと、さらにいじめ防止に関する啓発活動を徹底し、いじめ防止等に関する体制及び教員の研修内容の見直し並びに研修の実施等の取り組みを一層強化し、生徒の皆様が安心した学校生活を送れるように対応していく所存です〉といじめ防止のための取り組みを強化していくことを宣言。

〈最後になりますが、本校生徒・保護者の皆様、本校に関心を持っていただいている受験生の皆様、また本校関係者の皆様に新学期早々にご心配おかけして大変申し訳ございません〉と騒動になったことを謝罪していた。

 また、文章の中では、以下のように経緯が説明されていた。

〈本件については、学園、弁護士及び東京都私学部の指導のもと、東京都に対し、いじめの重大事態案件として報告するとともに、該当のご家庭に対しては、同家庭からのご要望を受け、東京都に対して提出した報告書をお送りし、直接の面談にても、経緯を含めてご説明する旨をお伝えしていましたが、ご連絡がないままに至っています。本校としましては、引き続き、該当のご家庭に対し、誠意をもって対応していく所存です〉

 確かにAくん一家のもとには、2024年5月、学校側から1通の封書が届いていた。内容は“Aくんの修学旅行中の行為が撮影された件及び撮影内容が一部生徒に送信された件について、東京都私学部からいじめ防止対策推進法の重大事態に当たるとして報告を求められ、その報告を行った”というものだった。だが、東京都生活文化スポーツ局私学部に対して具体的にどのような報告をしたのかは説明されておらず、「ご不明な点等ございましたら、直接、面談してご説明いたしますので、ご遠慮なくご連絡頂ければと存じます」としていたという。

 Aくん一家が対応を保留していると、6月中旬、今度は東京都生活文化スポーツ局私学部に提出したという調査結果報告書が学校側から届いた。Aくんの母親が語る。

「2023年12月、息子は一連のトラブルについて東京都生活文化スポーツ局私学部に再度連絡しており、それを受けて、私学部が学校に働きかけたようです。第三者に開示しないように学校側に言われているので、詳細は明かせませんが、“東京都私学部から指摘を受けて再検討した結果、いじめの疑いがある重大事態として同私学部に報告するに至った。当学園として認識が甘かった” といった趣旨の内容でした」(Aくんの母親、以下同)

「誠意を感じられない」Aくん一家の決断

 なぜAくん一家は、学校側の連絡に応じなかったのか。

「息子が在籍中、学校側とは何度も話し合いを重ねてきましたが、こちらはメールに即返信したにもかかわらず向こうは何週間も返答がないことの繰り返しだったり、かと思えばいきなり『明日、学校に来られないか』と言われたり、とても負担を感じました。

 また、“再検討した結果、いじめの疑いがある重大事態として同私学部に報告するに至った”といいますが、私学部に報告する上で息子本人に一度も聞き取りがなかったことが引っかかっています。

 調査結果報告書で生徒間のやり取りには触れていても、息子を一番追い詰めた別室指導やPTSDになったことまでは記載がなく、やはり誠意を感じられません。

 将来的に学校側と再び直接やり取りする意思がないわけではないのですが、息子のこと以外にも問題を抱えている時期だったこともあり、学校から封書が届いてすぐ応答するまでの気力はありませんでした。また振り回されるのが怖い、という感情もあります」

 なお、宝仙学園が在校生や関係者向けに発信したコメントでは、最後に〈この文章がホームページに掲載されます〉と予告していたが、10月25日現在、同様の文章はホームページに掲載されていない。前出の学校関係者が明かす。

「実は9月中旬、在校生の保護者を対象とした説明会が行われました。校長や教頭らが報道について釈明しましたが、その中で、『さらなる炎上を繰り返すことが危惧されるため、弁護士との協議のうえで、ホームページへの掲載は取りやめる』と方針変更が伝えられました。どうやら“幻の謝罪文”となったようです」

 NEWSポストセブン取材班は、この説明会の音源を入手。後編では、その説明会の模様について詳報する。

(後編に続く)

この記事の関連ニュース