9月16日(日本時間)、“米テレビ界のアカデミー賞”と称されるエミー賞が発表され、ドラマ『SHOGUN 将軍』が作品賞や主演男優賞など史上最多の18冠に輝いた。今作で主役とプロデューサーを務めた真田広之(64)。子役時代から一線で活躍を続けてきた真田は、2003年から活動拠点を海外に移し、世界的に評価される俳優となった。そんな彼の素顔を堀越高校時代からの親友の俳優・島英津夫(63)が明かした。
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「広之と出会ったのは、堀越高校の入学試験の時でした。『一緒に堀越受かればいいね』って話していて、それで入学式でまた広之が隣にいた。『あー! 受かったんだ!』ってお互い喜んで、それ以来の付き合いです」
島英津夫は、当時の思い出を笑顔で振り返る。クラスには、浅野ゆう子、石野真子、ザ・リリーズ、荒川務など錚々(そうそう)たる芸能人が揃っていたという。しばしば授業をサボっていた島とは違い、真田は非常に真面目な学生だった。
「広之はいつも、『高校時代は一生に一度なんだから、ちゃんと勉強しろよ』って怒ってきたんです。広之は授業にもきちんと出て、『JAC』(千葉真一が創設したアクションスターを育成する組織、現在の名称は『JAE』)のトレーニングにも通っていました。学業も優秀。卒業試験では広之の解答を全部カンニングさせてもらって、僕も無事卒業できましたから(笑)」
堀越高校は“芸能コース”であっても、出席日数が足りなければ容赦がなかったようだ。
「単位が足りないと補習を受けなければなりませんでした。それか他の手段として朝早く来て便所掃除をする。広之も単位が足りなかったので便所掃除をしていましたよ(笑)」
今の“SHOGUN”真田広之からは想像できない姿だ。
役者も塩梅が大事
真田と島は家族ぐるみの付き合いだった。真田は島の母である淡路恵子(享年80)を「おっかあ」と呼び、自分の母親のように慕っていたという。ロサンゼルスから日本に戻ると必ず淡路に会いに行き、淡路の作るスペアリブが好物だったようだ。
「ある時、真田はロスで母(淡路)のレシピをもとにスペアリブを作ってみたものの、どうしても味が再現できないと悩み、母に電話をかけてアドバイスを求めていました。そしたら母が、『それは塩梅が違うんだよ。同じ1000円の肉でも何十年と味付けした人と初めての人と、同じ塩加減でも塩梅が違うのよ。役者も同じでしょ』と諭していました。真田は『そうか、頑張って作ってみるよ」と納得していましたね』
淡路をとにかく慕っていたという真田。淡路が亡くなった際も、真田はすぐに島に電話をかけてきたという。
「おっかあに会いたかったな。何もしてあげられなくてごめん、日本に戻ったら連絡するよと涙ながらに言っていましたね。『今頃うちのお袋(1989年に死去)とおっかあは天国で飲んだくれてるから心配するな、生きてる俺たちが頑張ろう』という真田の言葉にグッときました。広之は本当に友達を大切にしてくれる、物静かで誠実な男です」
溜まり場だったラーメンパブ
真田と島の青春時代を語るに欠かせないのが、ラーメンパブ『リッチハウス』(現在は閉店)だ。
六本木の雑居ビルの2階にあり、5000円で飲み放題・食べ放題という若者にとっては天国のような場所だったという。特に人気だったのは、シンプルながら抜群に美味しい醤油ラーメンだった。
「『リッチハウス』は僕たちの青春そのものです。僕たちが20代の頃はほとんど毎日のようにそこに通っては、たわいもない話をして、お酒を飲んで、時には朝まで騒いでいました(笑)広之がハリウッドで成功してからも帰国すると時々『リッチハウス』に通っていました。
何回かパブで僕のバースデーをやってもらったことがあるんです。マスターが船の形をしたケーキを作ってくれて……今でも忘れられない。ロウソクを消そうとした瞬間に広之がケーキを持ち上げて僕の顔に叩きつけた。そしたら『広之! 俺が何日間もかけて作ったんだ』ってマスターが怒って……その後、広之がしょんぼりとひとりで壁についたクリームの掃除をしていたんです。かわいいですよね」
その後、真田は2003年の『ラスト サムライ』への出演を機に、活躍の場を海外へと広げることになる。2010年には「ハリウッドで最も活躍しているアジア俳優」に選出されるなど着実にキャリアを築いてきた。
島は真田のエミー賞受賞を聞いた時の率直な思いを口にする。
「涙が出ましたよ。スピーチで『これまで時代劇を継承して支えてきてくださった全ての方々、そして監督や諸先生方に心より御礼を申し上げます』と語っていて、きっとうちの親父(義父の萬屋錦之介)、勝新太郎さん、三船敏郎さんらみんなのために今まで努力してきたんだろうなって思いました。
僕の高校時代から20代にかけての青春時代は、いつも広之と一緒でした。苦しい時辛い時、いつも声をかけて励ましてくれた。かけがいのない無二の親友です」