米国では両リーグ最高勝率の超人気球団同士の最終決戦となったが、日本ではセ・リーグを制した“球界の盟主”が日本シリーズ進出を果たせなかった。来季こそは悲願の日本一奪還を目指したい巨人だが、早くも暗雲が立ちこめている──。
4年ぶりのリーグ制覇を成し遂げたものの、クライマックスシリーズ(CS)ではDeNAに敗れ、日本シリーズ進出を逃した巨人。試合後、阿部慎之助監督(45)は「申し訳ない」と悔しさをにじませた。野球評論家の杉本正氏が語る。
「CSでは選手層の薄さが露呈しました。巨人の打線には迫力が感じられず、4番の岡本和真(28)を歩かせたらその後が続かない。中軸打者に自覚があり、やるべきことがきちんとできているソフトバンクやDeNAとは大違いです。今オフ、大幅な補強に動くのは必至です」
ただでさえ、打撃力に定評がある大城卓三(31)のFA移籍が囁かれ、投手陣でも15勝3敗で貯金12を稼ぐ完全復活を遂げた菅野智之(35)が来季メジャー挑戦を表明しており、チームの軸が流出する解体危機だ。
CS敗退翌日には早くも、“機関紙”のスポーツ報知に「FA選手獲得参戦へ」の見出しが躍った。スポーツ紙デスクが語る。
「ソフトバンクの甲斐拓也(31)、阪神の大山悠輔(29)、DeNAの佐野恵太(29)が有力候補とみられ、投手ではオリックスの山岡泰輔(29)、阪神の青柳晃洋(30)の名前が挙がっています。FA市場に出た他チームの主力級は誰でも獲りにいく姿勢です」
巨人や阪神で4番を打った広澤克実氏は、そうした巨人の方針に対して苦言を呈する。
「まずは育成からやり直すことが巨人に求められることではないか。たとえば大きな期待を受けながら今季26試合の出場にとどまった秋広優人(22)のような選手をどう育てたいのか。FA市場に出ている選手をとりあえず獲得するというのでは、付け焼き刃に見えてしまう。チームづくりのビジョンがまるで伝わってこないですね」
しかも、大型補強にも大きな壁が立ちはだかる。前出のスポーツ紙デスクはこう言う。
「近年の巨人はFAでことごとくフラれています。2019年オフにはFA宣言した楽天の美馬学(38)、ロッテの鈴木大地(35)獲得の意向を示すも断わられ、昨オフはオリックスの山崎福也(32)に4年総額10億円超を用意して阿部監督が交渉の席に直接出たのに、同じ条件だった新庄(剛志)監督の日本ハムにさらわれた。
地元密着の他球団の人気が上がり、資金も潤沢になった結果、巨人の優位がなくなった。引退後のセカンドキャリアもローカル球団のほうが地方局での解説者の仕事が多く、巨人は“つぶしがきかない球団”として、選手の間でも認識され始めています」
かつては移籍市場でも“巨人でプレーするのが夢”と語る選手を集められたが、時代は変わった。主力流出でFA市場も惨敗という“大寒波”のオフが懸念されるのだ。
※週刊ポスト2024年11月8・15日号