2023年7月、札幌市の繁華街ススキノのホテルで頭部のない男性(当時62)の遺体が発見された事件。頭部を持ち帰った田村瑠奈被告(30)は、目玉をくり抜き、その様子を父親の修被告(60)に撮影させていたことなどが明らかになっており、近年稀に見る猟奇的な事件だ。逮捕された親子3人のうち、死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われている母親の無職、浩子被告(61)の第5回公判が11月5日、札幌地裁で開かれた。
この日の公判では、予定されていた証人尋問がキャンセルとなり、証拠調べが行われ30分ほどで閉廷した。その間、髪をひとつに縛り、紺のカーディガンを着た浩子被告は静かに耳を傾けていた。証拠調べにより、瑠奈被告が使用していたとみられるノートパソコンで閲覧していたインターネットの記事などが新たに判明した。
殺人事件は7月1日の夜から翌未明に発生した。今回新たに分かったのはその前後に瑠奈被告がインターネット上で閲覧していた記事だ。
法廷に提出された証拠によると、6月30日、つまり事件を起こす前日に「千葉 バラバラ 女性遺体」と調べていたのだ。法廷では具体的な事件についての言及はなかったが、当時、確かに千葉県で世間を騒がす事件が発生していた。事件を取材した大手紙社会部記者が解説する。
「6月28日、千葉県内のマンションの一室から複数の袋に入れられた切断遺体が見つかりました。交番に出頭した40代の女が『母親を絞め殺した後で、切断した』と供述。包丁で、遺体の首や腕、両脚が切断され、袋はバスタブに置かれていたといいます。その動機は『霊媒師になるために修行にいく必要があり、母が邪魔だった』というものでした。死体損壊容疑、死体遺棄容疑と殺人容疑で警察は逮捕しましたが、鑑定留置の結果、『責任能力に問題がある』と判断した検察は不起訴処分としています」
さらに犯行から数日が経った昨年7月6日にも瑠奈被告はこの事件の記事を読んでいた。
昨年7月11日には、弁護士が解説するあるインターネット上の記事を閲覧していた。
この記事は、外患誘致罪を解説するものだった。外国と通牒して国内に武力行使をする、という犯罪で、国内法で唯一、法定刑が死刑しかない犯罪だ。国家の存立を危険にするということから、死刑しかない犯罪だがこれまでに適用されたケースはない。
「これまでの裁判を通して、瑠奈被告が国家転覆を目論んでいたとは考えにくいです。おそらくは自分がやったことを念頭に『死刑』について調べていたのでしょうね」(道内事件担当記者)
また、昨年7月14日には「遺体の一部」に関する記事を閲覧していた。
この記事中では、例えば「アインシュタインの脳」を検死を担当した医師が持ちだしたことや、1917年にスパイ容疑で処刑されたあるフランス人女性の頭部が防腐処理をされて博物館に展示されていたことなど、世界のさまざまな事例が紹介されている。瑠奈被告が自宅に保管する被害男性の頭部や眼球などを見て、興味がわいたのだろうか。
瑠奈被告(30)については、札幌地裁が刑事責任能力を調べるため、2回目の精神鑑定を決定していたことが判明している。
「期間も不透明で、まだ瑠奈被告の公判についてはいつ始まるかも定かではありません。ただ弁護側は、瑠奈被告には精神障害があったと主張する方針で、公判でも刑事責任能力の有無が最大の争点となります」(前出・道内事件担当記者)
死刑について調べていたのであれば、自分のやった行為がどのように裁かれるのか理解していた可能性に繋がる。責任能力があるという主張の一助にもなり得るだろう。