懸命にリハビリを続ける美智子さまの原動力は、来年の「新年一般参賀」で、国民の前に立ちたいという強いお気持ちだという。しかし、苛酷なリハビリはその心を揺るがし、もう立てないかもしれないという不安が頭をよぎるなか、「車椅子を2台搭載できる車両」の導入を決断された真意とは。
一日でも早くいつも通りの生活に、という思いが美智子さまを突き動かしているのだろう。10月6日にお住まいの仙洞御所で転倒され、右大腿骨を骨折された美智子さま。手術を経て、現在、ご移動には車椅子を用いられながらも、日々リハビリに励まれ、徐々に活動の場を広げられている。
同月24日には、長年、美智子さまの著書の出版を手掛けてきた編集者の末盛千枝子さんと仙洞御所で面会された。
「40分ほどご歓談されました。弱音を吐かず、泰然とリハビリに向き合われている美智子さまが、末盛さんの前では体の痛みや入院していたときの寂しさなどを率直に口にされていたのが印象的でした。別れ際、末盛さんの手を取られた美智子さまは、何度も『またね』とおっしゃり、再会を誓われたそうです」(宮内庁関係者)
その4日後には、「ご夫妻の卒寿を祝う会」に出席されるため、霞会館(東京・千代田区)を訪問された。美智子さまにとって、手術後初めての外出だった。
「ご自身のお祝いですから、美智子さまは、なんとしても出席したいという思いで、無理を押されての外出だったのでしょう」(前出・宮内庁関係者)
上皇さまとの時間もご友人との時間もこれまで通りに──そうした美智子さまの思いを汲み取り、宮内庁は新たな体制を整え始めた。
美智子さまは現在、仙洞御所で午前と午後の2回、欠かさずにリハビリを続けられている。
「車椅子生活で衰えた足の筋力を取り戻すためのリハビリは、決して楽なものではなく、相当の気力が必要です」(皇室記者)
そのようななか、10月下旬、宮内庁は新しい車両の購入を決定した。
「車椅子のままで乗り降りすることができる福祉車両です。宮内庁が最後に福祉車両を購入したのは2010年ですから、実に14年ぶりのこと。タイミングからして、美智子さまのご移動のためと考えてまず間違いありません」(前出・皇室記者)
美智子さまの車椅子生活は、宮内庁にとっても想定外の出来事だった。
「現在、美智子さまの外出には、暫定的にレンタカーのワンボックスカーが使用されています。これも車椅子のまま乗降できる車両ですが、日頃使われていた車と比べると、乗り心地には雲泥の差がありますし、“借り物”では気も落ち着きません。持ち前の忍耐力で痛みをしのがれている美智子さまが少しでも快適に移動できる特注の福祉車両、いわば『美智子さまの専用車両』の導入は当然のことだといえます」(前出・皇室記者)
現在皇室では、上皇さまの弟である常陸宮さまが日常的に車椅子を使われており、専用の福祉車両を使用している。
「美智子さまについては、各自動車メーカーから最新の技術を搭載した車両の提案を受けて、さらに美智子さま仕様に改造されたものが用意されるとみられます。なかでもこだわっているのが、車椅子を2台そのまま入れられるという機能なのです」(前出・皇室記者)
足元は常に「ヒール」
上皇さまとのご成婚から65年。美智子さまは体の動かし方ひとつ取っても、国民の目にどう映るのかを強く意識されてきた。たとえば、姿勢。
「美智子さまのお召し物の背中側に、しわが入っているのを見たことがありません。それは常に姿勢を正され、椅子に腰掛けられるときも背もたれに寄りかかられないからだといわれています」(前出・皇室記者)
意識は細部にまで及び、「脚」は最も気を配られてきたところだ。
「“皇室のフォーマル”は明治以降、伝統的に洋装で、美智子さまも徹底してこられた。足元は、脚が優雅に見えるからという理由でピンヒールを着用されることが多かった。飛行機や新幹線での移動中でも履き替えられることはありませんでした」(前出・皇室記者)
しかし年齢を重ね、筋力が衰えていくなかで、次第にそれが難しくなる。
「徐々に低めの、そして安定感のある太めのヒールへとシフトされていきました。ご自身のお立場にふさわしい身なりと、けがの予防などご年齢に見合った装いに折り合いをつけ、その時々にふさわしいものを模索してこられたのです」(皇室ジャーナリスト)
今年4月、美智子さまは昭憲皇太后の没後110年に際し、明治神宮を参拝された。あいにくの雨のなか、あわや転倒というよろめく瞬間もありながら、白いロングドレスの裾からのぞいた足元はヒール。美智子さまの矜持が垣間見えた場面だった。だが、いまやヒールを履くことはおろか、車椅子生活を余儀なくされ、日常生活もままならない。
「ご自身の体調をいちばんよく理解されているのもまた、美智子さまです。真摯にリハビリに取り組まれると同時に、もう車椅子を手放すのは難しいかもしれない、と思われることもあるようです。
お召し物と同様、年を重ね、いままでできたことができなくなるのは仕方がないことだと理解されつつも、それを受け入れるには相当の覚悟が必要です。これまで必要ないと考えられていた福祉車両についても、けがを機に『もう拒むことはできない』と苦渋の決断を下されたのではないでしょうか」(前出・皇室ジャーナリスト)
一方、「福祉車両の購入は後ろ向きな思いだけで決められたものではないでしょう」と話すのは、別の皇室ジャーナリストだ。
「美智子さまがけがをされて以降、別々の車で移動されている上皇ご夫妻ですが、それまでは片時も離れることがありませんでした。地方公務に行くと、車窓からの景色を見て『あれはこういう山で……』と上皇さまが美智子さまに教えられる場面もありました。タイトなスケジュールで公務をこなされるご夫妻にとって、車内での会話が心和むひとときだったといいます。
車椅子を2台搭載できる車両というのは、将来的に、上皇ご夫妻が揃って車椅子生活を余儀なくされる日が来ることを見越してのご決断なのでしょう。美智子さまには、たとえふたりとも車椅子を用いることになっても『生涯お出ましを諦めない』『上皇さまを隣で支え続けたい』という強いお気持ちがおありなのです」
どんな姿になっても、おふたりが離れることはない。
※女性セブン2024年11月21日号