警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、元受刑者が、出所後に自由を感じる瞬間について。
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刑務所に入ったことを「後悔はするけれど、反省はしない」、服役している最中は「どうやったら楽に過ごせるかを考える」、出所が近くなれば「思うのは、今度はパクられないようにしようということだけ」という前科〇犯のヤクザたち。そんな彼らが出所して自由を味わうのは、どのような時なのか。
ドラマや映画で、出所した元受刑者が職場でトイレに行きたくなり、手を上げて上司に申し出て許可を取ろうとするシーンを見たことがないだろうか。日本でも多くのファンに愛されている映画『ショーシャンクの空に』にも、そんなシーンが出てくる。俳優ジェームズ・ホイットモア演じるブルックスが、長期刑を経て釈放され、働いているスーパーマーケットでのシーンだ。自由を象徴する1つとして描かれているのだが、何から何まで許可を取らなければならない刑務所生活になじんだ元受刑者には、自由であることも逆に不安とストレスになってしまうようだ。
詐欺や窃盗、恐喝や暴力事件で収容されるヤクザのほとんどは、数十年という長期刑ではなく、数年の刑期で服役し、出たり入ったりを繰り返す。そのため出所すれば、ブルックスのように不安を感じることなく、自由を満喫する。出所前、自由の雰囲気を微かに味わえるのが釈前房だという。
人生のほぼ3分の2を刑務所で過ごしている者や、全国あちこちの刑務所を渡り歩いているという前科者でも、仮釈放、もしくは満期釈放される日が決まると、釈前房という部屋に移される。素行がよい者には、一般住宅に近い部屋で鍵がかかっていない開放寮に移され待遇が変わるようだが、暴力団の現役幹部はそうではなかったようだ。彼らが釈前房で自由にできたのはおひつだった。
「ご飯の時間になるとおひつが出てきて。自分で茶碗によそう。それまでは決まった量を決まった形で分け与えられていたのが、自分が好きなように、好きなだけ食べられる。メシだけでも自由になると、出所するんだという気分になる」(ある暴力団幹部・以下同)
自分の家ってこんなに広かったのか
刑務所を一歩出れば、1人で好きなように歩ける。
「今は刑務所の近隣にもコンビニができている。昔のように、地元に帰るのに電車の切符を買い、キオスクでつまみとビールを買ってホームのベンチで、一杯やりながら自由を噛みしめるなんてことはない。コンビニに行けばビールからスイーツまで何でも買えるんだからな」。棚に並んでいる食べ物は見れば何でも食べたくなると幹部はいう。刑務所の中には一切自由はないが、コンビニには自由が溢れている。やはり好きな物を好きな時に、好きなだけ食べられることが、出所して最初に自由を感じる瞬間らしい。
スマホがなければ生活できないといっても過言ではない今の時代、スマホを返却された時はどうなのか。受刑者たちが持っていたスマホは、逮捕の時に取り上げられるが、その後、保管され、出所時には返還される。保管中、電源オフでも基本料金は発生しているので、料金が未払いだとすぐには使えない。未納期間が長くなれば支払っても使えない場合もあるという。銀行口座をもたないヤクザにとって、スマホを買うのはハードルが高いのだ。家族や組の子分などが代わりに支払っていたなら使用可能だが、戻ってきてもバッテリー切れである場合がほとんど。ようやくスマホを手にしてもすぐに電話ができないケースが多く、自由より不便さやストレスを強く感じるらしい。
住む所がある者は自分の家に帰っていく。この幹部は借家住まいだが、知人の物件を借りていたため、服役中、家賃が未納でも追い出されることはなかったという。「以前は狭い!と思っていた小さな家だが、帰ってきたら、自分の家ってこんなに広かったんだと思ったね」と開放感を味わったという幹部は、「いいもんだよ。自分で自由にドアが開けられるって」と笑い出す。一般人にはわからない感覚だが、「刑務所にいれば、ドアは開けてもらうもの。自分では開けられない。許可がないとドアは開かないんだから、出入り自由はいいね」。
出所したての元受刑者が自由を感じるのは、普通の人にはごく当たり前のことだった。