11月1日から始まった慶應義塾幼稚舎のお受験。そこに巣くうブローカーと現役教員たちのいびつな関係を明かした、ある父親の告白(本誌・女性セブン2024年11月14日号)は大きな反響を呼んだ。続く今回は、そのブローカーが明かしていた華麗なる人脈と、さらなる斡旋ビジネスの実態を詳報する──。
「『確認されておりません』なんて、いかにも他人事のようなコメントだと思いました。あったと認めるわけにもいかず、なかったと言い切ることもできないということでしょうか。
少なくとも、現役の教員たちにきちんと聞き取りをして、私がX氏に払っていた金銭がどうやってやり取りされていたのか追及してほしいです」
こう憤るのは、本誌・女性セブン前号(10月31日発売)で自身の子供を“特別なルート”で慶應義塾幼稚舎(以下、幼稚舎)に入学させたと告白した父親Aさんだ。
前号では、自身も幼稚舎出身の医師のX氏が、幼稚舎に子供を入学させることを望むAさんから多額の金品を受け取り、入試を採点する現役教員たちを“買収して”合格をアシストした疑惑を報じた。
Aさんは、着手金100万円や現役教員1人あたり50万円ずつの手当、X氏への謝礼や買収工作にかかる飲食代などを合わせて、総額2000万円以上をX氏に現金で手渡し、子供を実際に幼稚舎に入学させたと告白したのだ。
この報道は11月1日から始まった今年度の幼稚舎の入試直前ということもあり、“入学ブローカー”のX氏の正体をめぐる推測とともに、受験生の親たちの間でたちまち拡散された。
日本のお受験界の頂点に君臨する超名門小学校の疑惑。学校法人「慶應義塾」は「掲載されたような事象は一切確認されておりません」とのコメントをホームページ上に掲載したものの、事実かどうかには言及しなかった。渦中のX氏も勤務先のホームページから自身の写真を削除して沈黙。受験生の保護者の不安は増すばかりだ。
「女性セブンが発売されると、その記事は朝からママ友たちの間ですぐに拡散。友人の中には『2000万円で幼稚舎に入れるなら、うちも入れたい!』と言う人もいたそうですが、私の妻は『塾にも通わせて、あんなに努力しているのに、お受験にはこんな世界もあったのね……』とつぶやいていました」(受験生の親)
最初は有名IT企業の社長
さらに衝撃の事実も浮かび上がってきた。X氏自身の子供も幼稚舎出身なのだが、その子供の担任がY教師だったのだ。
Y教師は、幼稚舎受験を控えた受験者の親にルール違反の個別指導を行い、1回5万円以上の金銭や、高級ワインなどを受け取っていたとされる曰く付きの人物。2019年夏に『週刊文春』が一連の疑惑を報じ、その後、懲戒免職処分となった。
「担任が6年間持ち上がる幼稚舎では、保護者が、長いつきあいとなる先生がたにお中元やお歳暮を贈る習慣があります。X氏は15年ほど前に子供を介してY先生と出会い、そこから結びつきを深めていったそうです。実際にY先生は、X氏に買収される現役教員たちの仕切り役だったと説明されていました」(Aさん・以下同)
X氏とY教師の「入学ブローカーコンビ」は著名人にも食い込んでいたようだ。
「彼らが最初に“特別な入学ルート”を斡旋したのは、有名IT企業社長の子供だったそうです。そこでスキームの端緒ができあがると、少しずつ内部の協力者、つまり現役の教員に仲間を増やしていき、その後はマルチな才能を持つクリエーター、誰もが知る大物役者の子、大相撲関係者など各界の著名人を斡旋したと聞かされました。X氏は会食の席などでそうした自慢話を吹聴し、自分が世話した有名人の子供の願書のデータを見せびらかすこともありました」
実際、X氏のSNSには政財界の大物との交流をうかがわせる書き込みが多く、特別な入学ルートを斡旋することで築いた幅広い人脈があることを連想させる。
Y教師とのタッグで幼稚舎受験のブローカーとしての地位を築いたX氏。しかし、Y教師がさらなる“顧客”の獲得を図ったことで、あえなくコンビは解消となったという。
「X氏との関係だけでは満足できなかったY先生は、慶應出身者が集うゴルフコンペに参加して、独自に“金持ちの入学希望者”を探し回るなど行動が派手になりました。かつてトレンディードラマで一世を風靡した俳優ともいつの間にか仲間になり、その俳優の子供の進学も手伝ったのだと話していました。
いつしか目立ちすぎる存在になったY先生は文春報道で失脚しましたが、それ以降もX氏は幼稚舎に深く食い込み、学校の幹部しか知らないような教員の人事情報までをいち早くキャッチして、LINEで教えてくれていました」
「いつか子供に謝罪したい」
X氏の“斡旋メニュー”には、「幼稚舎の元教員」という肩書を持つ家庭教師も存在するという。
「この家庭教師は幼稚舎の運動会や餅つき大会に来賓として参加しており、現役教員や幼稚舎関係者との深いつながりが感じられました。X氏がこの家庭教師を斡旋するのは、“特別な入学ルート”を望んで大金を払う親のみ。私が最初にお願いしたときも、X氏が間に入り、家庭教師のために最寄り駅から自宅までの地図を作ることを求められました」
幼稚舎とのパイプのある大物教員OBというだけあって、その費用もかなり高額だ。X氏が提示した家庭教師の費用は、入会金30万円、レッスン料1回につき3万円、諸経費が月3万円(月5回目からは1回につきプラス5000円)だったという。
「レッスンは子供が年少、年中のときは月1回ほどで、幼稚舎の入試が近づくと週1回になり費用がかさみました。内容は幼稚舎の入試科目でもある体操や工作を子供にやらせて、親にフィードバックするというものでした。レッスン回数を計算して数か月分をまとめて現金でX氏に支払うシステムで、“買収工作”同様、実際にいくら家庭教師にわたっていたのかはわかりませんが、X氏に、“特別な入学ルート”とは別の費用として数百万円を支払ったことは間違いありません」
こうして自分の息のかかった教員や関係者たちを手なずけ、X氏は著名人たちも顧客にしていたのだ。改めてAさんが苦しい胸の内を明かす。
「最もかわいそうなのは、何も知らずに一生懸命受験勉強をしている子供たちです。私自身、安易に慶應ブランドをお金で買うような行為をしたことを恥じていますし、いつか自分の子供たちが成長したら、きちんと事情を説明し、謝罪したいと思っています」
今日この瞬間も受験に挑む幼い子供たちに、「公平だ」と胸を張って言えるお受験であってほしい。
※女性セブン2024年11月21日号