10年前に当時11歳でイスラム教スンニ派の過激派組織「IS(イスラム国)」に拉致されて、奴隷として扱われていた女性が、パレスチナ自治区ガザから救出されたことがわかった。イスラエル軍が10月3日に発表した。
ISは2014年8月、イラク北西部に暮らす少数派ヤジディ教徒を襲撃。虐殺や性暴力と、あらゆる残虐行為を加えた。6000人を超える女性や子どもが誘拐され、奴隷として売買されたとみられている。
ガザから救出された女性、ファウジア・アミン・サイードさん(21)は、まさにそのヤジディ教徒だ。ファウジアさんは、イギリスのタブロイド誌『ザ・サン』で、自身が過ごした「地獄の10年間」について告白している。(注意:衝撃的に感じられる内容が含まれます)
「幼いファウジアさんは連れ去られた後、4日間も何も食べられなかったそうです。やっとISの戦闘員から食事を与えられて、味に違和感を覚えつつも、なにしろ飢えていたので、調理された肉を食べたそうです。
しかし、食後に体調が悪くなってしまいました。そこで戦闘員から『あの肉は、赤ん坊の肉だ。これが、お前たちの食べた子どもだ』と首を切られた子どもの写真を見せられたと明かしています。ファウジアさんと一緒に食事をした女性たちは、自分がなぜ赤ん坊と引き離されたかを悟って、泣き崩れたといいます」(国際ジャーナリスト、以下同)
地獄はまだ続く。奴隷となったファウジアさんは、2015年、シリアへと連行された。数百人の囚人とともに、劣悪な環境で監禁されたという。
「ずっと暗闇の中に閉じ込められ、男たちがやってきては、気に入った女性を連れて行ったといいます。ファウジアさんはISの戦闘員らに5回も売買され、まだ幼い彼女に薬を飲ませて、眠っている間に性暴力を加えた男もいたそうです。性被害のなかで、ファウジアさんは15歳という若さでふたりの子どもを出産することになったと語っています」
各地を転々とさせられたファウジアさんは、2020年にガザに連行されて、今度はイスラム組織ハマスの支配下に置かれた。相変わらず自由のない生活の中で、しかし彼女に転機が訪れる。2023年10月7日、ハマスはイスラエルへの大規模攻撃を仕掛けた。攻撃対象となった音楽フェスの参加者だったシャニ・ルークさん(享年22)が裸に近い状態で連行される映像が拡散されるなど、現地の惨状は世界中に衝撃を与えた。
ISとハマスに奪われた自由…その後は
ハマスによる大規模攻撃を受けて、イスラエルがガザに侵攻するなか、ファウジアさんは、「私をここから救ってほしい」と訴える動画をネット上に投稿することに成功した。2024年10月に入って彼女はついに救出され、母国であるイラクに帰ることができた。しかし、子どもたちとは数カ月間、会えていないままだという。
ISとハマス、両組織と接したファウジアさんは、「それぞれに違いはない」と語っている。
ファウジアさんは、イスラエル軍によって命を助けられた。一方で、イスラエル軍はガザへの空爆などで大勢の民間人の命を奪ってもいる。
「10月17日、イスラエル軍はイスラム組織ハマスの最高指導者であるヤヒヤ・シンワル氏が死亡したと報告しました。しかし、停戦は実現せず、イスラエル軍はいまだガザ地区への激しい攻撃を続けています。ガザの保健当局は死亡者数が4万3000人を超えたと発表しています。
それぞれの思惑のもと、イスラエルとハマスの双方に意図的なメディア露出をしている可能性があるため、現地をめぐる情報は慎重に検討する必要があります」
なお、共和党のドナルド・トランプ大統領(78)は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と友好な関係を築いており、トランプ大統領の再選をネタニヤフ首相が「史上最高のカムバック」と祝福したとの報道もある。
トランプ氏の再選によって、中東情勢はどのように変化するのか。誰もが安らかに暮らせる日が1日でも早く訪れてほしい。