中国の著名なトランスジェンダーの劇作家・金星氏がこのほど、広東省広州市で12月に舞台劇を上演する許可を市当局に求めたところ、拒否されていたことが明らかになった。
金星氏は男性から女性への性転換手術を受けて、いまでは女性として、活発な活動を続けている。今回の広州市当局の判断について「私の個人的理由だと思う」などと語っているというが、これに対して市当局は不許可の正式な理由を明らかにしていない。香港紙「星島日報」が報じた。
金星氏は1999年にダンスカンパニー「Jin Xing Dance Theatre」を設立、上海を拠点に活動し、テレビ番組の司会者としても知られている。最近では上海で上演された中国の古典的な舞台劇「Sunrise」で監督と演者を務めた。
また、フランスの化粧品会社「ディオール」の新しいキャンペーンビデオに登場するなど、国際的にも知名度が高い。
中国では1997年に同性愛を非犯罪化し、2001年には精神疾患のリストから同性愛を削除。2000年代には北京LGBTセンターや上海プライドといった市民社会組織が設立されるなど、性の多様化を認める風潮が広がっていた。
しかし、このところ、公的機関は非異性愛者のアイデンティティの表現を取り締まるようになり、非異性愛者であることを公言する有名人はほとんどいなくなっている。
全国人民代表大会(全人代=国会に相当)の報道官は、中国の法律は男女間の結婚のみを認めており、同性婚の合法化を承認する可能性は低いとの見解を明らかにしている。中国では、同性愛は否定的に扱われる風潮が残っており、そのため、同性愛者たちはいまだに周囲に知られないようにパートナーとの恋愛関係を続けているのが実情だ。
このところ、インターネット上でも、LGBT関係のアカウントが削除されたほか、台湾のポップシンガーが2023年の北京コンサートでLGBTに関連した曲の演奏を禁じられるということがあった。今回の金星氏のケースも、中国での思想的な締め付けが背景にあるとみられる。