SNS上では“化粧品売り場における男性からのセクハラ”がたびたび報告されている。店員につきまとったり、「ネイル見せて」などと言って手を触ったりと、客という立場を利用したセクハラが横行しているのだ。しかし、男性客による性加害は化粧品売り場に限らない。前編ではレンタルビデオ店に電話をかけてきた男性客が、問い合わせを装い女性店員に大人向け動画の生々しいタイトルを復唱させようとするケースを紹介した。他にも多くの事例があるようだ。実際に被害にあった女性たちが、生の声を訴える。【前後編の後編。前編から読む】
「見て」「触って」エステサロンで多発する被害
化粧品売り場やエステサロンなど、女性店員の割合が高い店でのセクハラ被害は多い。Mさん(24歳/女性)が勤めるエステサロンは、全員女性スタッフ。メンズもレディースも対象で、全身とフェイシャルをメインに、脱毛サービスもある。最近では美容に気を遣う男性も増え、Mさんは「男性のほうがお金に余裕があることも多く、全コースで男性のお客様の数は伸びています」というが、施術中、さまざまな形で被害を受けるという。
「基本的にお客様には紙パンツ一枚に着替えていただき、女性スタッフが施術を行なっていくのですが、女性スタッフの手を取って下半身を触らせようとしてくる人が何人かいました」(Mさん)
Mさんによると最近はメンズ脱毛の需要が顕著に伸びているそう。サロンでは顔をはじめ、胸や脚など全身に対応しているのだが──。
「脱毛中、お客さんはヒマなので、音声は出さないかイヤフォンというルールで、スマホの利用もOKにしていました。そこでメールを打ったり、動画を見たりなど、時間を有効活用していただけたらという思いだったのですが、必ず大人向けの動画を見る人がいて……。しかも自分で見るだけにとどまらず、スタッフに『ねえ見て』と見せつけてくるんです。
施術の邪魔になるし、気持ち悪い。店長と相談し、本社にも報告して、全てのお客様に対して動画を見ること自体NGというルールになりました。一人の人の迷惑行為で、他のお客様へのサービスが制限されるのは悔しいのですが、その人だけNGともしにくくて」(Mさん)
女性の格好で「全身ツルツルにしたい」
スタッフが一対一で施術に入り、デリケートな部分の素肌を触ることになる脱毛サロンでは、同様の被害が珍しくないようだ。別の脱毛サロンで店長を務めるOさん(29歳/女性)は「以前は男性の脱毛もやっていましたが、“事件”があって、やめました」と明かす。
「女性の格好をして、『美容にも興味があり、とにかく全身の毛をツルツルにしたい』とのことで、VIO(デリケートゾーン)脱毛に来られた男性のお客様がいました。いざ施術を始めると、どうしてもお客様の局部が反応してしまう。男性の生理現象ですし、こちらは仕事なので正直なんとも思いません。気を逸らすようなトークを振るなどしたのですが、その方は常にこちらの反応をニヤニヤ伺っていて、ある時果ててしまったんです」
もちろんそれも男性の生理現象といえばそれまでだ。だが、Oさんは「出禁」措置をとった。
「そういったことが起きた場合、謝る方がほとんどで、こちらも淡々と対処します。でもその男性は掃除をするスタッフをずっと薄ら笑いで眺めていた。サロンにもよると思いますし、美容クリニックのような、男性スタッフがいるところは別として、ウチのサロンは小規模で常時女性スタッフが数人しかいない。これまでLGBTのお客様もいらっしゃいましたし、精一杯男性のお客様の悩みに向き合ってきたつもりですが、何かあってからでは遅い。他の言動も総合的に勘案し、お断りを申し入れました。
また、ウチ以外にも男性の脱毛をやってくれるところはたくさんあるので、それ以降新規の男性客を受け付けないことにし、現在、お客様は女性の方のみです」(Oさん)
客という立場を利用した迷惑行為により、サービス縮小という判断に追い込まれるケースは珍しくないのかもしれない。
(前編から読む)