2024年ももうすぐ終わり。今年もいろいろあったと振り返る時期ではないだろうか。だれしも、出口の見つからない暗闇に追い込まれることがある。教育学者の齋藤孝さんは、そんなとき「偉人のことばたちが自分の味方をしてくれる」という。そこで齋藤さんが上梓した単行本『ドラえもんに学ぶ偉人のことば』より、「偉人のことば6選」を紹介する(一部再編集)。
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【偉人のことば1】 「しあわせだから笑っているのではない。 むしろぼくは、笑うからしあわせなのだ、と言いたい。」
――アラン
ネガティブな感情に振り回されないためには、自分で自分の気持ちを切り換えることが大切。フランスの哲学者で『幸福論』の著者アランは、「しあわせ」と「笑う」ことの順番を逆にすることを提唱していて、悲しくなるのは気分であり、楽しくなるのは意志であると言っています。辛いときこそ笑ってみる。気持ちが変われば、見える景色も思考も変わるはず!
【偉人のことば2】 「自分にとって大切なことのために闘ってください。 ただし、他の人が仲間に加わりたいと思うようなやり方で。」
――ルース・ベイダー・ギンズバーグ
闘うときに、誰かを責めたり非難したりすると、かえって味方を減らすことになります。必要なのは、共に悪口を言う仲間ではなく、共に闘う仲間。アメリカで連邦最高裁判事を務め、もっとも尊敬される人としてアメリカ国民の愛されるギンズバーグは、弱者のために闘った人です。自分にとって大切なものを手放す必要はありません。共感を得られるような闘い方であれば、おのずと世界は変わります。
【偉人のことば3】 「今の自分を認める勇気を持つ者だけが、 本当に強い人間になれるのだ。」
――アドラー
日本でも人気の「アドラー心理学」では、どんな自分も認めて受け入れることから始めようと言っています。「ダメな自分」を否定するのではなく、「ダメな自分」を受け入れる。マイナスからのスタートではなく、ゼロベースに立ったところから次の一歩を踏み出すのです。ダメなところが早々に見つかってよかった! という気持ちで、前に進みましょう。
【偉人のことば4】 「人間ってやつ、負けるようにはできちゃいない」
――ヘミングウェイ
アメリカの小説家ヘミングウェイの代表作『老人と海』の一節。釣り上げた魚の大半をサメに食べられてしまった漁師が、自分に言い聞かせた言葉です。地球の歴史では多くの生きものが絶滅しましたが、人類が生き残っているのは、それぞれの時代で知恵を出し合い試行錯誤してきたからこそ。試行錯誤している間は、少なくとも「負け」ではありません。
【偉人のことば5】 「人生最大の栄光は一度も転ばないことではなく、 転ぶたびに立ち上がることにある。」
――ネルソン・マンデラ
マンデラは、南アフリカの黒人解放運動の指導者。獄中生活を経験したマンデラは、釈放後に差別撤廃を実現し、大統領になりました。絶望的な状況にあっても、そのたびに立ち上がって目標を達成したマンデラ。転んでも立ち上がる力があれば、失敗も絶望も怖くありません。どんなに小さなことでも、立ち上がった経験や記憶があるはず。思い出して立ち上がりましょう!
【偉人のことば6】 「人の一生は重荷を負うて遠き道をゆくがごとし、 いそぐべからず。」
――徳川家康
家康は信長・秀吉を武力で倒そうとはせず、じっとチャンスを待ち、二人が死んだ後に天下を取りました。ものごとは、焦るとうまくいきません。急がず、気長に、様子を見ながらタイミングをはかることも大切です。辛くて苦しい時間は永遠には続きません。もっとも効果的・効率的に現状を打開できる時機をうかがうことも必要です。
いかがでしたでしょうか? 歴史に名を残した偉人たちが残した言葉には、時代を超えて人を励まし、勇気を与え、心の支えとなる力が宿っています。偉人たちも私たちと同様に、困難や絶望を経験し、その中で紡がれた言葉だからこそ、私たちの心に深く響くのでしょう。これらの言葉を胸に、少しでも心に灯りを取り戻し、再び前を向くきっかけとなったら幸いです。
◆参考資料
『キミの心と頭を強くする! ドラえもんに学ぶ偉人のことば』(藤子・F・不二雄 原作、齋藤孝 著)
ソクラテス、孔子、ヘレン・ケラー、アドラー、金子みすゞ……古今東西の偉人のことばを、ドラえもんの名場面コマとともに齋藤孝先生の解説で紹介する。