札幌市の繁華街ススキノのホテルで2023年7月、頭部のない男性会社員(当時62)の遺体が見つかり、親子3人が逮捕された事件。死体遺棄ほう助と死体損壊ほう助の罪に問われた母親・田村浩子被告(61)の6回目の公判が11月20日、札幌地方裁判所で開かれた。
父・修被告(60)への証人尋問がメインとなったこの日。修被告は黒のスーツ、黒縁メガネの服装で出廷した。事件発生時と比べると、体がひとまわり小さくなり、弱々しい様子だが、検察側からの質問に対しては毅然とした口調で答えた。
「修被告は娘・瑠奈被告(30)が被害者の首を持って帰ってきた時、なぜ警察に通報しなかったのかという質問に対して、声を震わせて『よすがである身内に(瑠奈が)裏切られる、ということだけは避けようという、そう思った』『これは瑠奈を長年抱えてきた親としての想いです』と涙ながらに“愛”を語った」(司法担当記者)
瑠奈被告の犯行計画については「SMプレイをしに行くだけだと思っていた」「全く知らなかった」と語った修被告。その一方で、急に瑠奈被告の“オタク趣味”な一面を語ったシーンも印象的だった。
検察側が質問を終えると、弁護人側がこんな話題を修被告に切り出した。
弁護人:瑠奈被告は被害者と初めて会った翌日、日記をつけている。そこで、“バジさん”という名前が出てくる。バジさんとは誰のことですか?
修被告は妙に流暢に、人気アニメのキャラについて解説し始めたのである。
修被告:バジさんは、「東京リベンジャーズ」というアニメに出てくる登場人物で、娘が一番好きなアニメのキャラなんです。
弁護人:どんなキャラなんですか?
修被告:弟分のような人に刺されるけど、その弟分を殺人犯にしないように気遣って、自決するというキャラです。娘は、アニメのDVDでバジさんが死ぬシーンを何度も見て、大泣きしていました。
「アニメキャラが好き」というストーリー
“バジさん”は前出の「東京リベンジャーズ」のキャラ・場地圭介のことと思われる。なぜ弁護人は突如、アニメキャラの話をしたのか。傍聴をしていたライターが語る。
「弁護人側は、瑠奈被告のミーハーな部分、アニメ好きな部分を強調したかったのではないでしょうか。それには、理由がある。
犯行時に瑠奈被告が着用していたとされるサバイバルゲーム用のゴーグルは、修被告が瑠奈被告と一緒に買ったものだとされる。他のサバゲーのアイテムは押収された物品から全く出ないので、修被告が犯行のために用意したのではと裁判官から指摘されているんです。
それに対し修被告は『一緒に買い物をしてる時に、瑠奈に“これつけたらかっこいい”という趣旨の話をされて、買い与えた』として、こう続けた。
『(瑠奈は)ゴーグルをつけることで、かっこいいアニメキャラになれるとか、自分の魂が強くなるような気持ちになる』(修被告)。大量に持っていたドールや、多重人格の話も合わせて、“アニメキャラに憧れていた”というストーリを作りたかったのかなと推測される」
来年1月に自身の初公判を控えている修被告だが、札幌地裁が保釈を決定したことも明らかになった。
浩子被告の次回公判は、12月12日が予定されている。