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菅田将暉の七光りやコネではない!「けんと」「新樹」弟2人が快進撃を見せる必然

NEWSポストセブン 2024年11月25日 7時15分

 俳優やミュージシャンとして幅広く活躍する菅田将暉(31才)。その弟2人が今、脚光を浴びている。「菅田将暉の弟」としてはではなく、それぞれが快進撃を見せている背景とは?  コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 朝ドラ『おむすび』(NHK総合)の舞台が福岡県糸島市から兵庫県神戸市に移った18日放送の第36話、主人公・米田結(橋本環奈)に思いを寄せながらも告白できないまま振られる幼なじみ・古賀陽太(菅生新樹)の姿が話題を集めました。その際、切ない男心を表現して株を上げたのが25歳の若手俳優・菅生新樹さん。まだ俳優業2年あまりであるにもかかわらず、朝ドラという大舞台で強烈な爪跡を残しました。

 翌19日に行われた『第75回NHK紅白歌合戦』(NHK総合)の出場歌手発表で話題を集めたのが、こっちのけんとさん。楽曲や映像の制作、デザインなどを手がける28歳のマルチアーティストであり、今年5月リリースの「はいよろこんで」のSNSを含む総再生回数が140億回を突破するなど、今年を代表する一曲になり、初の紅白出場を勝ち取りました。

 18日、19日と連日話題を集めた菅生新樹さんと、こっちのけんとさんは、どちらも菅田将暉さんの弟。立て続けに弟たちがフィーチャーされたのは偶然か、必然か……その背景を探っていきます。

音楽と演技で兄に近づく奮闘

 こっちのけんとさんはアカペラグループのメンバーとして活躍しつつ、YouTubeでの活動も本格化させ、実は5年前の紅白歌合戦にもバックコーラスの一員として出演していました。さらに2022年から現在まで立て続けに7曲のシングルをリリースし、なかでも2ndシングルの「死ぬな!」と6thシングルの「はいよろこんで」がネット上で話題に。

 その経歴も音楽の内容も兄・菅田将暉さんとは大きく異なるうえに、チャンネル登録者数約65万人のYouTuberであることなども世間の人々やメディアの関心につながっています。

 菅生新樹さんは大学を卒業した2022年に俳優活動をスタート。7月には人気脚本家・坂元裕二さんのオリジナルドラマで林遣都さんと仲野太賀さんがダブル主演を務めた『初恋の悪魔』(日本テレビ系)に出演し、しかもクライマックスにかかわる大役でした。

 昨年も深夜帯の全4話ながら『凋落ゲーム』(フジテレビ系)で連ドラ初主演を務め、夜の帯ドラマ『褒めるひと 褒められるひと』(NHK総合)では主人公の弟役で出演。さらに民放最大のドラマ枠である日曜劇場の『下剋上球児』(TBS系)にも出演するなど着実に知名度を上げていきました。

「2人ともこの2年あまりで急激に活躍の場を増やした」ことがわかるのではないでしょうか。しかも“音楽と演技”というジャンルや“配信と放送”というフィールドが違うことも、「菅田将暉の弟」として2人が比較されることなく、それぞれが純粋な評価を得やすかった理由の1つでしょう。

 そして今年、2人が活躍するうえで密かに大きかったのが、兄・菅田将暉さんの動きが少なかったこと。

 今年、菅田さんの主なテレビ出演は『民王R』(テレビ朝日系)のナレーションのみ。映画や配信ドラマの出演こそありましたが、多くの人々が目にするテレビでは、ほぼ短いVTRでの出演やCM出演などに留まっていたのです。アーティストとしてはアルバムが発売され、フジテレビ系パリオリンピック中継の応援ソングを担当したものの、出演数としては限定的でした。

 31歳にして「カリスマ」「国民的俳優」とも言われる兄が一歩引いたようなポジションだったことで、弟たちが純粋にフィーチャーされやすかった感があるのです。しかも菅田さんの活動ペースが落ちている間に、音楽と演技というそれぞれのジャンルから兄に近づくような形で奮闘していることがメディアと世間の注目を集めることにつながりました。

兄への尊敬と愛情を語れる強さ

 メディアがこっちのけんとさんと菅生新樹さんをフィーチャーしたくなるのは、歌や演技の実力だけではないでしょう。

 まず「七光り」「コネ」などと言われることを覚悟して兄と同じ世界に飛び込んだこと。「純粋に実力だけを見てほしい」という気持ちや批判を避けるために偉大な家族の存在を隠してデビューする人が増える中、2人は「比較されることを覚悟で公表」という厳しい道を歩んでいます。

次のポイントは兄への尊敬を隠さず語れること。2人は16歳で大阪の高校を中退し、親元を離れて上京するなど、兄の勇気と努力を見てきたこともあって、兄弟愛を感じさせるコメントが目立ちます。メディアとしては兄への思いや兄弟のエピソードなどは聞きたいところであり、番組出演やインタビュー取材などに積極的な2人のスタンスは魅力的でしょう。

 また、発言におけるメッセージ性やさまざまな状況を受け入れていく肯定感の高さなども、業界内で評価されているポイント。この点では「兄譲り」という声もあがるなど、良い意味で兄弟であることがフィーチャーされやすくなっています。

 ともに芸能活動、メディア対応、SNSでの発信などですべて等身大の振る舞いを見せていることが、「七光りになりそうでならない」「コネと言われそうで言われない」という状態につながり、無用な批判を防いでいるのではないでしょうか。

 弟2人の活動が順調なだけにしばらくの間は必然性の薄い“三兄弟共演”はしないでしょうが、今後に含みを持たせられることも楽しみの1つ。各局にとっては「ぜひウチの番組で」という意味で「円満な関係性を築いておきたい」という思いもあるのでしょう。

 2024年は兄・菅田さんにとって妻・小松菜奈さんとの間に「第一子が誕生した記念すべき年」ですが、もう1つ「弟たちが飛躍のきっかけをつかんだ年」としても記憶に刻まれていくのかもしれません。

【木村隆志】

コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。

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