メンタルの不調などが原因で、地上波で見かけることも少なくなっていたいしだ壱成(49)が、再起をかけて様々な仕事をこなしている。Instagramでの自撮り投稿もたびたび話題となっており、〈めっちゃかっこいい!〉とのコメントも散見されるように。壱成に現在の仕事・プライベートについて話を聞いた。【前後編の前編】
「東京に戻ってからの数か月、フリーランスの大変さを痛感しました。営業やギャラ交渉、スケジュール管理まで全部ひとりでやって、仕事を終えたら請求書を書いた。全くオファーがなく、宿泊先のホテル代が払えないほど困窮した時期もありました」──こう語るのは、2022年春に石川県白山市から東京に拠点を戻し、本格的に芸能活動を再開した壱成。
7年間のブランクは大きく、復帰直後は苦労の連続だった。俳優業だけでは食べていけず、「日銭」を稼ぐために芸能以外の様々な仕事を請け負った。なかでも大きな話題になったのは、2022年3月にトルコで受けた植毛手術だ。
「植毛を行なうスポンサー企業に依頼されたのですが、後頭部の髪の毛を薄い部分に移植する自毛植毛が衝撃的で、“薄毛業界に風穴を開けた”と言われて大反響でした(笑)。
ほかにも大阪のいちじく農家さんからの依頼でいちじく畑を見学してYouTubeで放送したり、京都のバーベキュー場の宣伝をしたりしました。あの頃はなかなか役者のフィールドに戻れないもどかしさがありました」(壱成、以下同)
『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)、『聖者の行進』(TBS系)などの人気ドラマに若い頃から出演して華々しいキャリアを積んだが、復帰後はなかなか思うように俳優業が捗らない。鬱屈する日々の中で支えとなったのは、あの大物芸人の言葉だった。
ダウンタウンの松本人志の言葉に涙
「植毛から帰国後に出演した『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、ダウンタウンの松本人志さん(61)が『今までいろんな苦労してきて大変だったと思うけど、その苦労は絶対役者としてのスパイスになる。そのスパイスで壱成くんがどんな料理を、お芝居を作っていくのか楽しみにしています』と言ってくれたんです。ありがたくて涙が出ました。松本さんのあの言葉で、『自分にはやっぱり芝居しかない』と心が定まりました」
決意を固め、地道に活動を進めると徐々に映画や舞台の仕事が舞い込むようになった。今年4月には個人事務所を設立し、月イチのラジオ番組『いしだ壱成 ラジオスターの喜劇』(鳥越アズーリFM)もスタートして、活動の幅を広げている。
「今の事務所のスタッフは、僕が芝居だけに集中できるような環境を整えてくれます。かつては精神的な病気を患ったこともありますが、スタッフのおかげで今は落ち着きました。ラジオは台本も自分で書いて、構成作家を兼ねる感じ。ゲストを呼ぶこともあるけど、基本1人で自分の好きなことを話しています」
明るい表情で語る壱成が最近、力をいれているのが芝居のワークショップだ。
「月イチで若手の役者さんのお芝居を指導するためにワークショップの講師をやらせてもらっています。僕は19歳で美輪明宏さん主演の舞台に出演した際、美輪さんから『300人の客席なら600人の観客がいると思って、その最後列に声も心も届くよう演じなさい』などと様々な極意を教えてもらいました。30年の芝居人生の中で美輪さんはじめ、いろんな方に教えてもらったことを、今度は自分が若手に伝えていけたらいいなと思います」
本業である役者としても、現時点で映画出演のオファーが5〜6本あるという。“完全復活”に迫る壱成の背景には、プライベートを支える2人の「恩人」の存在があった──。
(後編に続く)