鰯の頭も信心から、病は気からなど、客観的には思い込みに見えることでも、本気で信じることがポジティブな効果をもたらすことは古くから言われてきたことだ。臨床心理士の岡村美奈さんが、竹内まりや、山下達郎のおしどり夫婦ぶりを後押しする「プラセボ効果」について解説する。
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「結婚は今世で12回目」というタイトルに思わずクリックした。映画でよくあるエジプトのファラオみたいな話だが、そんなコメントを『家庭画報』で語ったのは(2024年11月号)シンガーソングライターの竹内まりやさんだ。彼女の夫は、同じくシンガーソングライターで音楽プロデューサーの山下達郎さん。ともに日本を代表するアーティストである。
おしどり夫婦としても有名な2人について、NEWSポストセブンに「《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりに深い絆『結婚は今世で12回目』夫婦の結びつきは”魂レベル”」という記事が載った。日本を代表するシンガーながら、竹内さんが表舞台に登場することはほとんどない。活動をセーブしてきたのは、公私にわたるパートナーである夫への深い愛情からだという。記事によると「彼のことは本気で音楽界の人間国宝だと思っている」というエピソードとともに、いかに彼女が山下さんを尊敬しているかがわかる。
その極めつきが、”魂レベル”の結びつきを語ったという『家庭画報』で、前世がわかるとかいうアメリカ人女性に「『あなたはこれまでの過去世で、今のご主人と11回結婚していますね。今世で12回目です』って、どんだけ~?(笑)」と発言、相性の良さを語っているという。仲良し夫婦で相性がいいと思っているところに、本当かどうかわからないが、そうだろう、そうでありたいと思えるお告げがあれば愛情はさらにアップ。自分たち夫婦の相性は抜群、愛情は不滅という思い込みを強化することになる。アメリカ人女性のお告げが「プラセボ効果」になったのだ。
プラセボ効果とは、偽の薬なのに飲めば治ると言われると、実際に効果が出るという現象。飲めば回復すると思い込むと効くはずのない薬も効くという不思議は、思い込みが人の心に与える影響の強さでもある。これは人間関係にもいえることで、”あいつがいれば物事がうまく進まない”と思い込めば、結果が出ない時にその人物がプラセボとなり、やっぱりあいつがいたからだということにつながる。晴れ男がいるから明日も晴れると思うように、相性抜群と思い込んでいれば、夫婦の間にどんなことが起きようと、相手を信頼し尊敬するという根本は揺らがず、ポジティブに受け取れるだろう。
だが世の中、こんなに仲の良い夫婦ばかりではない。NEWSポストセブンでまたも注目を集めているのが、タレントの三田寛子さんと歌舞伎役者の中村芝翫さん夫婦。一時は歌舞伎界のおしどり夫婦といわれた2人だったが、ここ数年、注目されるのは芝翫さんの不倫騒動ばかり。夫婦の間に竹内さん夫婦のような魂レベルのつながりまではなかったのかもしれないが、「実家同棲不倫」でネットやメディアを騒がせていた芝翫さんが、最近ようやく不倫に終止符を打った、らしい。
「《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、”夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は”未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に」という記事がNEWSポストセブンに掲載されたのだ。ラブラブの竹内さんの記事が出たのとほぼ同じ時期だけに、比べてみると記事のトーンのひんやり感がヒシヒシと伝わってくる。
それでも夫の不倫が発覚する度に、報道陣に丁寧に対応し騒動を謝罪、火消しをして家や看板を守ってきた三田さんには、夫への愛情と感謝があるのだと記事はいう。どんな理由にしろ、夫が戻ってきたということは彼女にとってプラセボ効果になるのかもしれない。前世がわかるというアメリカ人女性に見てもらったら、2人の前世の結びつきはどう見えるのだろうか。