『世界の果てまでイッテQ!』でその姿が見られなくなって4年──。現在は「武井ドンゲバビー」として活躍する武井俊祐さん(44) は、「イッテQ」出演当時は「ヴィンテージ武井」として活動していた。その武井さんは「今が人生で一番動いている」と語る。釣り、キャンプ、DIY、バイクなど、数々の『好き』をYouTubeで紹介しているうちに、人との繋がりや活動の幅が拡大。今や、芸人活動のかたわら、アパレルや飲食など多方面でのビジネスを展開中。これからも、『イッテQ』で何度も叫んだ持ちギャグ「ドンゲバビー(Don’t give up BELIEVING !)」の精神で乗り越えていくのか。「番組での出会いが僕を支えてくれています」──激変した現在の活動について語った。【全3回の第3回。第1回を読む】
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──武井さんのYouTube「ドンゲバビーチャンネル」(登録者数3.57万人)には、『イッテQ』で世話になったイタリアのピザ職人を訪ねる動画もありますね。
「ストロンボリ島のジョバンニさん。それもやっぱり『超田舎に泊まろう!』をもう一度やりたいという想いが自分の中にあったから。(宮川)大輔さんにも言われたんですけど、僕には『旅』が性に合ってるんですよね。大輔さんにはお祭りで、森三中にはほのぼのとした温泉同好会が合ってるように。自分で旅をすればいいんだと思って、カメラを回しました」
──現在は旅だけでなく、釣り、キャンプ、DIY、バイクなど、武井さんの『好き』がたくさん詰め込まれているYouTubeチャンネルは、どのような思いで始めたのですか。
「正直、気合いを入れて始めたものではないんです。コロナ禍でイベントの仕事などが激減して、やることがないからとりあえず撮っておこうぐらいの感覚でした。コンセプト的なものを挙げるとしたら、『武井ドンゲバビーはこういう芸人です』という『ルールブック』のようなものですね。好きなものだけを発信しているので、YouTubeを見てもらえば僕がどういう人間なのかが分かっていただけると思います」
──YouTubeが窓口のようになり、活動の幅がどんどん広がっているようですね。
「今までの人生で、一番いろいろやってるかもしれない。『好き』を発信することで僕をおもしろがってくれる人が増え、いわゆる『案件』の依頼もちょこちょこといただくように。ただ、自分が興味ないことはお受けしないようにしています。それをやっちゃうと、『ルールブック』として嘘になってしまうので」
──新しい活動や挑戦は順調ですね。
「本当にいろんな人との出会いや助けがあり、その連続で生かされていると思うんです。2年ほど前、太田プロをやめて独立しようと思っていた頃、キャンプ道具に関連した仕事の依頼でインスタにDMを送ってくれた方がいるんですけど、『ゲバビさんとだったら、いろんなことができますよ』って次々に提案をしてくれて、今では現場にも一緒にきてくれる大切なパートナーになっています。その人がいなかったら、今、こんなに動けていない。『僕のマネージャーですか?』ってぐらい、親身になって動いてくれる。いい二人三脚のパートナーが見つかった。不思議なもんです」
──“縁”というものは、おもしろいものですね。
「本当におもしろいですね。12~13年前に『イッテQ』で出会った青森・大間のマグロ漁師の親子がいるんですけど、正月のマグロ番組を見ていたら彼らが出てきたんです。『わっ!』と思ってすぐに連絡をしたら、『イッテQ』のときはまだハタチかそこいらだった息子のショウマがすごく喜んでくれて、『ぜひ、マグロの時期に遊びにきてください』と。僕はYouTubeでも一番のコンテンツにしているぐらい釣りが大好きなので、彼の言葉に甘えて去年ははえ縄漁を、今年は一本釣りをやらせてもらいました」
──大間のマグロを自分で釣るなんて、番組を一本撮れるぐらいの贅沢な体験ですね。
「ショウマとの再会や、お世話になっている地元の先輩からの誘いがきっかけで、大間のマグロがメインで食べられる居酒屋計画の話も進めています。もちろん、僕とショウマとの繋がりで始める以上、できるだけ安い価格で提供したい。当初は正直、迷っていたんですけど、『武井さんは、向かうべきところに向かうだけですよ』って背中を押してくれたのがショウマ。年下だけど尊敬しています」
──2022年の12月には、オリジナルのデニムブランド「DGBB」も設立されています。
「コンビ名の『ヴィンテージ』というのもデニムが好きでつけたもので、太田プロにいた頃からオリジナルブランドは作りたかったんですけど、実現しませんでした。一昨年、いろんな人の力を借りてついに立ち上げることができて、おかげさまで日頃からお世話になっているバッドボーイズの佐田正樹さん(46)にモデルをお願いした最初の商品300本は、2時間ほどで完売。佐田さんも『最初の1回は力貸してやる。あとは自力でやってみな。そうじゃないと、お前なためにならないから』と快くモデルを引き受けてくれました。本当、愛のある方なんです。12月にはパーカーや子供服も予定しています」
──そのほかにもオリジナルのクラフトビールがまもなく発売されたり、農業に取り組んだりと、活動が多岐にわたっています。「himari」という名前でモデルをされている奥さん、通称「嫁ゲバビ」さんから不安の声などは?
「ありがたいことに、今までそういった言葉を一度も聞いたことがないんです。当然、お金の心配とかはあるはずなんですけど、そんな素振りはまったく見せず、なにも言わずにやらせてくれる。僕の素行や立ち居振る舞いに関してダメ出しされることはありますけど、それもありがたい。本当に感謝しています」
──昨年には「チビゲバビ」も誕生しました。
「今、1歳3カ月(インタビュー時)です。以前は、同期で親友のハマカーン・浜谷健司(46)らと毎晩のように飲み歩いていたんですけど、まず先にハマちゃんに子どもができて、次は僕で、飲み歩く回数もだいぶ減りました。以前と同じように飲んでいたとしても、うちの奥さんはなにか言うような人じゃないですけど、やっぱり優先順位は変わりましたよね」
──まさしく「ドンゲバビー(Don’t give up BELIEVING ! )」ですね。
「信じることを諦めるな! ただ、実はその“Don’t give up BELIEVING !”って、後付けなんです。昔、麻雀で負け続けていたときに、深夜のおかしなテンションで“ドンゲバビー!”って意味不明な言葉を叫んだら、その場でめっちゃウケて。そこから持ちギャグとしてずっと言い続け、英語での意味はあとから無理矢理こじつけたものなんです(笑)」
──これだけ幅広く活動されていると、芸人としての面と、起業家としての面のバランスを取るのが難しくなりそうですが……。
「それぞれの仕事を全力で取り組んではいますが、あくまでも僕は『芸人』『エンターテイナー』でいたいんです。『武井ドンゲバビー』のルールブックであるYouTubeもずっと続けるつもりです。芸人としての熱量は1ミリも下がってない。『イッテQ』への復帰も諦めてはいませんよ!」
(了。第1回に続く)
武井ドンゲバビーチャンネル youtube.com/channel/UCEr1izjnMMAHhlwyMPyNHIw/videos
アパレルブランド 『DGGB』https://dgbb.buyshop.jp/