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《中井美穂アナ×関谷亜矢子アナ×安藤幸代アナ》女性スポーツアナが振り返る“男性社会”での日々「素人っぽさがウケる時代」「カメラマンが私の頭を三脚代わりに…」

NEWSポストセブン 2024年12月12日 7時15分

 今では当たり前になったスポーツ番組における女性アナウンサーたちは、プロ野球からゴルフ、駅伝まで、スポーツの“男性社会”をいかにして駆け抜けたのか。お茶の間の人気を集めた関谷亜矢子アナ(元日本テレビ)、中井美穂アナ(元フジテレビ)、安藤幸代アナ(元フジテレビ)の3人が振り返る。【司会・構成/山田美保子(放送作家)】

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中井:野球のことを何も知らなかった私が『プロ野球ニュース』を担当することになったのは忘れられません。もともとスポーツ自体に興味がなかったので先輩の長野智子アナに泣きついたら、「中井は向いていると思うよ」と背中を押していただき、心が決まりました。

 でも選手の顔も名前も知らなくて、スタジオでいつもご一緒していた中日の谷沢健一さんとヤクルトの大矢明彦さんを何度も間違えたり、阪急や近鉄などの監督だった西本幸雄さんに「ピッチャーマウンドって、どんな感じだったんですか?」と質問して、「俺、ピッチャーやないで」と言われたり(苦笑)。

関谷:素人っぽさがウケる時代だったんだと思います。私も同じでした。なのに『NNNニュースプラス1』や『独占!スポーツ情報』、無謀にも中継車に乗って実況を担当した『横浜国際女子駅伝』、サブアナ担当の『箱根駅伝』。全員が各大学を担当するんですが、私は筑波大学と国士舘大学の担当で、びっしりメモした取材資料を先輩アナウンサーに見せていました。それから当時は日テレが中継権を持っていた『世界陸上』も……。

中井:長嶋茂雄さんが「ヘイ、カール(・ルイス)!」と呼びかけたときですね。あれ以来の東京大会が来年開かれます。

関谷:私が球場取材で覚えているのは、ある選手から「女の人が来ると戦闘意欲が失せちゃう」と言われたことですね。原稿で選手の名前を呼び捨てにして、視聴者の方から「女性が呼び捨てにするとはなんだ」とお叱りを受けたことも。あの頃の日テレは毎日のように野球中継があったのでエピソードは尽きません。

中井:だからフジテレビはまったく対抗できずにバラエティに力を入れるようになったんですよ。

ゴルフ場で1日3万歩駆け回った

安藤:私は学生時代にゴルフ部だったこともあり、『プロ野球ニュース』から『すぽると!』に変わって日曜日担当をして以来、トーナメントがあるとずっとゴルフ場にいました。特に宮里藍さんはツアープロ認定試験のQスクールからアメリカツアーで優勝するまで4年間、密着させていただきました。上田桃子さんや諸見里しのぶさんら人気女子プロが出てきた頃でもあり、1日3万歩以上も歩いたり自分でデジ(カメ)を回して、局に伝送していたんです。

中井・関谷:え~!?

安藤:前列でデジを構えていたとき、後ろの男性カメラマンが私の頭を三脚代わりにカメラを載せていたことも忘れられませんね。さすがに注意させていただきました。ゴルフ場も男性社会だと感じましたね(苦笑)。

中井:でも女性だから得したこともありましたね。まず私たちは選手の皆さんから顔を憶えてもらいやすいし、すぐに名前で呼んでもらえた。

関谷:代表質問というワケでもないのに、男性記者さんたちから「これを聞いて」と質問を託されることもありました。一方、優勝記念の“ビールかけ”の会場にも女性アナが勢揃いしていて、NHKのクボジュン(久保純子アナ)や草野満代アナ、TBSの香川恵美子アナらとともにズブ濡れになりました。あと、プールに落とされました。ヤクルトさんのときです。

中井:すみません(笑)。ニューオータニですよね。でも関谷さんは落ちる前に、ちゃんとマイクを外してから飛び込んだという伝説の名場面!

「第2のサッチー」と呼ばれて

安藤:私はジャイアンツの選手は怖くて声がかけられなかったです。日テレさんとジャイアンツの選手が懇意にされているのを横目で見ていました。でも、ヤクルトの選手は声かけ放題(笑)。何より先輩たちのご主人がいらっしゃいましたから。古田敦也さんや、元フジテレビの木佐彩子アナの夫・石井一久さんがそうです。コーチ陣や選手の皆さんも本当に優しかったですね。そういえば中井さんは古田監督が誕生したとき、「第2のサッチー(野村克也さん夫人の沙知代さん)」と言われましたよね。

中井:明石家さんまさんが面白がってそう言っていたんですけれど、沙知代さんからは「自分の夫の面倒は自分でみなさい」ぐらいしか言われませんでしたね。一方、ジャイアンツでは監督の奥様が“奥様会”を主宰していらして、料理教室をはじめさまざまなレクチャーがあったとか?

関谷:たしかにハワイの優勝旅行に長嶋茂雄さん夫人の亜希子さんがいらしていて、他の奥様たちが気を遣っている印象はありました。でも亜希子さんはサバサバされていて、「私はそろそろ、ずらかりますわ~」とか仰ってフェードアウトされて……。丁寧語に“ずらかる”をミックスされるところは、さすがはミスターの奥様だと忘れられない一言ですね。

「女性アナはダメ?」大谷の結婚相手論争

──プロ野球の取材を続けてきた皆さんにとって、大谷翔平選手はどのような存在ですか?

安藤:まずファンの年齢の幅広さに驚きますね。ウチの母は毎日、大谷さんの話しかしないです。あとデコピンちゃん! ウチの犬には、あの始球式は絶対にできません。

関谷:実は大谷さんのお陰か日本のプロ野球中継の視聴率もちょっと上がっているらしいですよ。

──結婚相手が女性アナじゃなくて良かったという声も話題になりました。

安藤:「そんなに悪なのか」と後輩アナウンサーが嘆いていましたね(笑)。

中井:これからはアスリート同士の結婚が増えると予想しておきます!

【プロフィール】
関谷亜矢子(せきや・あやこ)/1964年生まれ、東京都出身。1988年に日本テレビに入社し、『独占! スポーツ情報』はじめ駅伝や『世界陸上』なども担当したスポーツ女性アナ。

中井美穂(なかい・みほ)/1965年生まれ、東京都出身(ロサンゼルス生まれ)。1987年にフジテレビに入社し、『プロ野球ニュース』や『FNNスーパータイム』に出演した。

安藤幸代アナ(あんどう・ゆきよ)/1977年生まれ、東京都出身。2000年に共同テレビに入社し、フジテレビの専属アナウンサーとなる。同年、『プロ野球ニュース』のアシスタントに抜擢されて以降、ゴルフ番組を中心に活躍。

※週刊ポスト2024年12月20日号

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