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蛯名正義氏、馬券の種類が増えても「僕らは買い方すら知りません」 ジョッキーと調教師は「いつも勝つつもりでレースに臨みます」

NEWSポストセブン 2024年12月21日 11時15分

 1987年の騎手デビューから34年間にわたり国内外で活躍した名手・蛯名正義氏は、2022年3月から調教師として活動中だ。蛯名氏の週刊ポスト連載『エビショー厩舎』から、馬券の種類についてお届けする。

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 早いもので今週末はもう有馬記念。競馬ファンにとってはワクワクドキドキの1週間でしょう。これはメディアの人から聞いたのですが、2001年に僕がマンハッタンカフェで勝った時の枠連(2万680円)と馬連(4万8650円)はいまでも有馬の最高払戻額だそうです。もっともこれは2着のアメリカンボスが人気薄だったからですが、2007年にマツリダゴッホで勝った時の馬単(6万9020円)も有馬記念史上第1位だそうですよ。終わりよければすべてよしではないけれど、みなさん馬券を買って大いに夢を見てください。

 僕がジョッキーになった頃、馬券は単勝・複勝と枠連しかありませんでした。それだと同枠の馬が取り消した時に不都合が生じますよね。なので圧倒的な人気になると予想される馬がいる時は、1つの枠に1頭だけしかはいらない単枠指定というのがありました。人気が集中しそうだなと思われる馬を指定していたわけです。

 まだ若手だったのでそれほどの人気馬に乗る機会はありませんでしたが、2年目にインターナショナルジョッキーズという、いまでいう2勝クラスの外国人騎手招待レースがありました。騎乗馬を抽選で決めるのですが、僕が引き当てた馬が単枠指定になったことがありました。前走も同クラスだったし重賞でも上位に来ていたからでしょう。その通りレースはほとんど馬なりで勝ちましたね。

〈馬連が地域・レース限定でスタートしたのは1991年、1999年にワイド、2002年に馬単と三連複、2004年に三連単が発売されるようになる。〉

 そもそも馬券はファンのもの。ジョッキーはもちろん調教師や厩舎スタッフもJRAの馬券は買えないので、システムや買い方もよくわかっていません。馬券の種類が増えていった過程は、調教師試験を受ける時には覚えたけれど、ジョッキーだった時には関係ないし、開業した今も関係ない。僕らがやることは同じですからね。ジョッキーと調教師はいつも勝つつもりでレースに臨みます。

 それでも乗り役の時、騎乗馬の単勝オッズは見ていました。人気ならば、「いい馬に乗せてもらっているんだ」と応援の後押しを感じ、人気がなくても「馬券を買ってくれているファンに応えよう」と、いずれにしても気が引き締まりました。調教師になってからは馬の様子が気になっていて、オッズを見るのを忘れることもしばしばあります(笑)。

 近所の人から大井競馬場のビュッフェスタイルの席を取ったからと誘われて行ったことがあります。みなさん一応僕にあれこれ聞くのですが、全然当たりませんでした。実績から強いだろうという馬はわかるのですが、それが必ずしも勝つとは限らないということを改めて思い知らされましたね。そういう時はワイドにしたらどうかとか、フォーメーションで買えばいいなどと言われてもどうすればいいのかわからない。誘ってくれた方がバシバシ当てて大喜びしている横で、僕はご飯ばかり食べていました(泣)。

【プロフィール】
蛯名正義(えびな・まさよし)/1987年の騎手デビューから34年間でJRA重賞はGI26勝を含む129勝、通算2541勝。エルコンドルパサーとナカヤマフェスタでフランス凱旋門賞2着など海外でも活躍、2010年にはアパパネで牝馬三冠も達成した。2021年2月で騎手を引退、2022年3月に52歳の新人調教師として再スタートした。この連載をベースにした小学館新書『調教師になったトップ・ジョッキー~2500勝騎手がたどりついた「競馬の真実」』が発売中。

※週刊ポスト2024年12月27日号

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