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【プロ野球名物座談会】辛口レジェンドたちがこぞって日本ハム新庄剛志監督をベタ褒め 躍進の理由は、野村克也監督の真似にあり?

NEWSポストセブン 2024年12月20日 7時15分

 DeNAの26年ぶりの日本一など今年も話題が盛り沢山だったプロ野球。12月16日発売の『週刊ポスト』では、江本孟紀氏(77)、中畑清氏(70)、達川光男氏(69)の辛口レジェンドたちが球界をバッサバッサ斬っていく名物企画「ENT座談会」を掲載した。3人が取材の現場で口を揃えてベタ褒めしたのが日本ハムの新庄剛志監督だった。

 日本ハムは2022年に監督として新庄監督が就任した後、2年連続最下位だったが、今年は2位に躍進。チーム打率(.245)は3位だが、本塁打(111)はソフトバンクと3本差の2位、盗塁(91)は1位だった。防御率(2.94)も3位だったが、完投(11)は12球団で1位と好成績を残した。

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達川:日本ハムの新庄監督は頑張りましたね。

中畑:いやあ、良かったでしょう。評価に値するよ。

江本:オレは最下位予想したけど、ここまで上手くいくと思わなかった。安心したのは、新庄はアナログ人間だということ。一見するとイマ風だけど、12球団で完投投手の数が一番多い。これは良い傾向です。“ベースボール”にかぶれたやつはすぐにピッチャーを代えたがる。

中畑:オレも監督時代に同じような経験をしたからわかるんだけど、戦力がいないと若い選手を使わざるを得ない。ただ、新庄は若い選手たちを信じて使った。

投手を代えないことで「チームの軸」ができる

江本:新庄の日本ハムは、去年から完投がすごく増えてるわけよ。NPBアワーズで日本ハムの伊藤(大海)が最多勝と最高勝率で表彰されたんですが、コメントで「ピッチャーの特権である完投ができるのは嬉しい。来年も目指します」と言っていた。

中畑:日本ハムは素材的に恵まれたこともあったが、新庄の指導法が良かったんだと思う。「外野からの返球で、高さ4メートルより上へ投げたら罰則」だとか言って徹底させた。日本ハムでは低い球でカットマンにというのが当たり前になっている。基本中の基本というのを仕込んでいく。オレはそういう野球なんだっていうメッセージを送って、だんだん結果がついてくることに選手たちも喜びを感じるようになってきた。万波(中正)とかが捕殺の喜びを知る。「監督の言った通りになった」みたいな心のキャッチボールができる。そこにはチーム愛を感じるよね。

達川:新庄は阪神時代にノムさん(野村克也氏)の下でもやっていますからね。あの時に「おまえは球が速いから」とおだてられて、投手に挑戦させてもらったじゃないですか。あの時のノムさんの真似もしていますよ。

中畑:“新庄一家”になりつつある。やっぱり育ててくれた監督っていうのは一番の恩人だからね。それがうまく浸透しているから、新庄野球になっている。細かいこと言うと、“こずるい野球”というか、そういうのができるようになったね。

江本:ただ、新庄がこんなふうに戦略的な野球をするとは想像できなかった。12球団で完投の試合が一番多いが、ここで代えるだろうという時に代えないんですよね。そうすることでチームの軸ができる。ヨイショするわけじゃないけども、モタモタしている球団はあそこの部分だけは真似したほうがいい。投手が軸だっていうことがわかっていない監督が多い。

阪神・岡田監督との共通点

中畑:就任した当初から信念は感じたよね。派手に動いてるように見えるけど、中身はこのチームをどういうスタイルにしていくか、どう育てなきゃいけないっていう目線でチームを見てたんじゃない。岡田(彰布)監督と同じだよな。

江本:そう岡田と一緒なんですよ。岡田は、「ベンチの中でデータとか見るな。あんなのは家で見てこい」と言ってきた。要するに本流というか、それは形がちょっと違うけど、やっぱり野球はこうだっていうのを見せてくれた。信念を持っていると思う。

達川:チャラチャラしよるけど、先輩立てますからね。岡ちゃん(岡田彰布)から学ぶとか、相手の監督を絶対にけなさないからね。頭は賢い。新庄が監督になった時に、オープン戦で広島に来たんですよ。その時に「今年は最下位になります。しかもぶっちぎりです」というわけ。それで「来年は?」と聞くと、「来年もなります」と言う。それで「3年後に全財産をはたいて外国人を獲ってきて優勝しますから」と、宣言してきたんですよ。

中畑:オレは日本ハムをAクラスになると予想したよ。新庄の『叩かれるチームになりました』という言葉を信じてね。

江本:結果的に見ればAクラスになる野球をしている。数字は嘘をつかないってやつ。

「気合いと根性」も大事

達川:負けている時はしゃべりまくっていたが、勝ち出したらものを言わなくなった。ほんと頭が回りますよ。

江本:新庄のどこかに1本通った筋があるっていうのは、我々年寄りはホッとしましたね。女子ゴルフの上田桃子が現役引退を宣言して、最後のインタビューで「私はここまでは気合と根性で戦ってきた」って言ったんですよ。これもホッとしました。日本シリーズでも栗原(陵矢)が、“いやボクはもう気合と根性ですから”と言った。新庄監督はクレバーな一方でこうした姿勢を感じる。球界全体がもう一度こういう気持ちに戻ってやってもらいたいものです。

中畑:ノムさんもID野球とか言っているが、最後に「野球というスポーツは根性だ」って言っていた。

江本:下手くそはね、気合だの根性だのという言葉は使えないんですよ。一定以上のランクの上の高い人が使う言葉ですよ。

――座談会では新庄監督への高評価が連発された。最後は阪神OBの江本氏が「来年は阪神対日本ハムの日本シリーズだな」と締め括った。

【プロフィール】
江本孟紀(えもと・たけのり)/1947年、高知県生まれ。1971年に東映入団。1972年に南海に移籍しエースとして活躍。1976年に阪神に移籍し、1981年の引退後は参議院議員、タレントとしても活躍。近著に『ミスタードラゴンズの失敗』(扶桑社)。

中畑清(なかはた・きよし)/1954年、福島県生まれ。1976年に巨人入団。ムードメーカーの「絶好調男」としてチームを引っ張った。引退後は2012~2015年にDeNAの監督を務めた。現在は巨人OB会の会長を担っている。

達川光男(たつかわ・みつお)/1955年、広島県生まれ。1978年、広島に入団し正捕手として活躍。引退後は広島監督や阪神などでコーチを務め、ソフトバンクでヘッドコーチとして日本一を経験した。

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