新人アナとしては異例の活躍ぶりと言っていい。フジテレビの上垣皓太朗アナが「好きな男性アナウンサーランキング」の4位にランクインしたほか、相次いで特番に起用されるなど快進撃を続けている。そんな上垣アナの素顔と、アナウンサーとしての実力についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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「今、最もネット上をさわがせているアナウンサー」と言っていいでしょう。フジテレビの新人・上垣皓太朗アナに関する記事が連日のように報じられ、Xのトレンド入りするという状態が続いています。
最近では13日に発表された『好きな男性アナウンサーランキング2024』でいきなり4位にランクインする史上初の快挙を達成。16日~20日には有馬記念の事前番組『さんまウマ~好きな馬の話 5日間連続でしゃべらせて!~』に出演。明石家さんまさんを相手に5日連続で進行役を務めました。
17日にはゴールデン特番『星になったスターたち』の進行役を担当。上沼恵美子さんと香取慎吾さんという大物MCを相手に落ち着いた進行を見せました。18日には『めざましテレビ』のお天気キャスターとして代打出演。それだけでXのトレンド入りしてしまうところに人気のほどがうかがえますし、深夜、ゴールデン、朝とあらゆる時間帯の番組に起用されていることも異例と言っていいでしょう。
そんな上垣アナと言えば、2か月ほど前に「『めざましどようび』のYouTube動画で容姿をイジられる」という騒動に巻き込まれてしまったのは記憶に新しいところ。世間からイジったとみなされた3人の先輩アナだけでなく、上垣アナも過剰なプレッシャーを受けることになったにもかかわらず、それをものともしない快進撃に驚かされます。
では実際のところ上垣アナはどんな人で、どんな評価を受けているのか。春から少しずつ重ねてきた取材をもとにつづっていきます。
先輩アナと制作側の両方から評価
上垣アナは兵庫県出身で2001年1月6日生まれの23歳。大阪大学文学部を卒業し、フジテレビ入社とともに上京しました。「ベテランフリーアナに見える」と言われる落ち着いた佇まいは入社すぐに脚光を浴び、4月20日放送のゴールデン特番『FNS明石家さんまの推しアナGP』では先輩の出演を見学中だったにもかかわらずグランプリを獲得。
7月から『めざましどようび』のお天気キャスター、10月から『めざましテレビ』の「ココ調」と『キャラビズジャーナル』の単独MC、さらに10月27日の選挙開票特番『Live選挙サンデー超速報SP』では開票速報キャスターに抜てきされました。その他でも特番の出演機会が多く、しかも制作サイドから進行とゲストの両方で求められています。
進行役として評価されているのは、小学校低学年のころからモノマネをしていたなど自ら“アナウンサーマニア”と語っているように、1つ1つの言葉を大切にし、「どう伝えるのか」に向き合おうとする姿勢。よく考え、しっかり準備する姿は、すでに先輩アナウンサーたちから認められているようです。
また、教員免許(高校地理歴史、高校国語・中学国語)、防災士、二級小型船舶免許、酒類販売管理者の資格を持ち、「銭湯で長風呂 AMラジオを聴く、歌ネタ漫才のカバー」、特技は「地形図を見ながら歩く、テスト作り(架空の学校を想定して)」と公表する趣味も、制作サイドにとって魅力の1つ。得意な分野が多い上に深掘りしていて面白いため、ゲスト出演してもタレントのようにトークできるという強みがあります。
研修中から「逸材」「期待大」と言われ、なかには「よくフジテレビに入ってくれた」「ずっといてほしい」などと手放しで称える先輩アナもいました。決して見た目先行ではなく、パーソナリティそのものが認められているのでしょう。
取材していて印象的だったのは、アナウンス室では若手からベテランまで、制作サイドではプロデューサーからADまで、しかも男女を問わず期待され、温かい目で見守られていること。動画のイジリ騒動についても、入社前から先輩アナたちは上垣アナに丁寧なアドバイスをしていて、デビューの緊張をほぐそうとして言葉を間違えてしまったのが本当のところだったようです。
男性アナウンサーとして局内を活性化
この件を取材して見えてきたのは、「先輩アナたちは上垣アナが不安なく仕事ができるように務め、一方の上垣アナも批判を受けた先輩アナを気づかう」という温かい関係性。「騒動によって両者の間に距離ができてしまい、上垣アナの成長機会が奪われる」という最悪のケースは避けられたようです。また、制作サイドも上垣アナに過剰な負担を与えないように配慮しながら起用している様子が感じられました。
ただ、短期間でこれほどの注目を集める人気者だけに、少しでも失言したら「こんな人だと思わなかった」などと叩かれてしまうリスクは免れません。さらに当然ではありますが、まだ「新人にしては凄い」という評価の段階だけに、「新人にしては」の印象が取れたときが本当の勝負。ポテンシャルに加えて、局の活性化やイメージアップなども含め、期待が大きいだけに「大切に育てていきたい」という思いが局全体から感じられます。
先日、アナウンス室の競馬班に所属することが発表されましたが、これは上垣アナが目標として公言していたこと。モチベーションアップになるとともに、よく考えてしっかり準備する上垣アナなら局の粋な抜てきに応えられるのではないでしょうか。
もともとテレビ局における男性アナウンサーという立場は、女性アナウンサー以上に繊細なところがあります。脚光を浴びるのは女性アナウンサーに偏りがちで、フィーチャーされるとしたら失言や不祥事などのネガティブな話題が多く、報われづらいのがつらいところ。
さらに制作現場では、同じ局員から使われる側の立場であり、しかもタレントのような配慮はされません。スペシャリストとしてのプライドはあるものの、指示を忠実にこなすことが基本的な仕事であり、出役でありながらも決して華やかな仕事ではないのです。
現段階で上垣アナへのやっかみなどはほとんど見られないものの、人気者になりすぎると多少「面白くない」と感じる人が出てきてもおかしくはないでしょう。それを避けるためには、繰り返しバラエティへ呼ぶなどアナウンサー個人の魅力を消費するような起用だけは避けてほしいところです。
いずれにしても、早々の人気、局内の期待ともに、男性アナでは過去最高クラスの逸材であることは確かであり、今後の活躍が楽しみなのは間違いありません。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。