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《闇バイト対策に警察が打ち出した「仮装身分捜査」》効果はあるのか?トクリュウ事情を知る暴力団幹部の見解「指示役にたどりつくのは難しい」

NEWSポストセブン 2024年12月22日 16時15分

 警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、闇バイト対策として警察が打ち出した「仮装身分捜査」について。

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 12月12日、警察庁の露木康浩長官が記者会見で、「雇われたふり作戦」と名付けた作戦を発表した。相次いて起こる闇バイトによる犯罪を防ぐため、捜査員がSNSなどを通じて闇バイトに応募、身分を隠し、偽の人物の身分証明書を使って架空の人物に成りすまして犯行グループに接触するという「仮装身分捜査」を取り入れた新たな捜査手法だ。

 露木長官は「犯罪の取締りや抑止を図るうえで効果的だ」と述べ、警察がこの作戦を行うことで、犯罪グループが実行犯を集めにくくなる抑止効果が見込まれるが、識者からは「根本的な解決にはつながらない」という声を上がっている。そこで”トクリュウ”(匿名・流動型犯罪グループ)の手口についてよく知るという指定暴力団の現役幹部に、仮装身分捜査について、実際のところどう思うか聞いてみた。その答えは…。

「効果はある」と即答。「指示役にまでたどりつくのは無理でも、その場で事件を未然に防ぐことができるのが重要」という。

 幹部は「事件を未然に防げれば被害が出ないだけではない。闇バイトに応募して集められた実行犯を、事件を起こす前に逮捕できるというのが大きい。人によっては、ホワイト案件かと思って安易に応募したヤツもいるかもしれない。闇バイトとわかっていても、応募したことを後悔しているヤツもいるだろう。身分証明の画像を言われるがまま送ったことによって住所や家族関係がわかってしまい、バラすぞとか、家族に危害を加えるぞと脅されているかもしれない。彼らが強盗犯になってしまうのか、未遂犯になるのか、それとも犯罪行為に手を染めることなく終われるのか、その後の人生が変わる」と話す。自分にも前科があり、前科者ばかりの中で生きてきた幹部の言葉は重い。

 おとり捜査は無理でも、仮装身分捜査ならそれが可能になるのだろう。その違いについて、自民党の前経済安全保障相の高市早苗氏は自身のXで「おとり捜査とは、その身分や意図を相手方に秘して犯罪を実行するよう働き掛け、相手方がこれに応じて犯行の実行に出たところで現行犯逮捕等により検挙するもの」で、仮装身分捜査は「必ずしも犯罪実行の働きかけを伴わない仮装身分活動」だと述べている。違法薬物や銃器の取引など、通常の捜査手法だけでは摘発が難しい場合に実施されてきたおとり捜査は、相手が実行に踏み切ったところで逮捕する。しかし仮装身分捜査は、警察官が犯罪の実行に加担しないだけでなく、被害や被害者が出る前に事件を防ぐことができるらしい。

ヤツらは必ず現場を見張っている

 さらに幹部は「実行に移す前に現場に集まった実行犯役を全員逮捕できれば、必ずその中の誰かはその上にいる指示役とつながっている。秘匿性の高いアプリを使っていたとしても、警察は彼らのやり取りを入手して、それを解析することができる」という。だが「それでも首謀者らは捕まらないよう壁をいくつも作っているから、指示役にたどりつくのは難しい」ともいう。

「もし先にターゲットがわかるなら、警察官が先回りして2~3人、家の中で待機できればいいんだが」と幹部はいうが、集められた段階で強盗に入ることを告げられるケースもあるといい、それが難しいことは警察も想定しているだろう。

 何度も修羅場を潜り抜けてきたという幹部は「自分だったら」と前置きし、「強盗に入った家の中で何が行われているかなんて、LIVEで動画を送らない限り、指示役らにはわからない。自分だったら、中で実行犯らと話して、強盗したと見せかけて家の外に出て『現金はこれしかなかったが、どこに送ればいいか』と連絡させるね」と話す。実行犯らを諭すのか脅すのか、そこのところはわからない。

 警察が現場で実行犯らを検挙するのではなく、強盗したと見せかけ、実行犯らを外に出すことが必要だと幹部はいう。その理由は「ヤツらは必ず現場を見張っている」から、外に出て連絡や指示を出している人間が可視化されるからだという。「この手の事件を起こす時は、誰かが必ず現場が見える所から様子を伺っているものだ。警察が実行犯を逮捕しようと駆け付ければ、事件は未然に防げるが、その先は難しい。実行犯らと闇バイトのスカウトらとのやり取りは入手できても、連絡役が誰かを特定するのに時間がかかり、上のヤツらには逃げられる。その場でどこに振り込めばいいか連絡させることができれば、そのまた上につながっているヤツにたどり着ける」(幹部)

 捜査員が単独で動くことに対して危険性を指摘する声もあり、「まぁ警察にそこまでできるかわからないが」という幹部だが、「強盗を企むようなヤツらはなんとかしなければね」と頷いた。

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