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「国民民主党・玉木雄一郎首相」が浮上 予算成立のメドが立たずに追い詰められた石破首相が「野党の協力で予算を成立させ退陣」「自公国で連立」の有力シナリオ

NEWSポストセブン 2024年12月23日 7時13分

 支持率は低空飛行を続け、もはや政界における新年の興味関心事項は“ポスト石破”に移ったと言っていい。自民党内でも複数の候補の名前が挙がるが、いずれも看板の掛け替えという印象が拭えない。取材を進めると、最有力シナリオとして「まさかの国民民主党・玉木雄一郎総理」が浮上していることがわかった。【前後編の前編】

政変の震源は国民民主

 2025年の日本を取り巻く国際状況は激しく変化している。韓国では尹錫悦・大統領の弾劾訴追案が可決され、米国には再びトランプ大統領が登場する。そうしたなかで日本政治の一番の焦点は、就任以来の支持率低迷が続く石破茂・首相がいつまでもつのか、石破退陣となった場合に後継首相が誰になるかだろう。

 政治のプロたちは、2025年の前半だけで石破首相に複数回の危機が待ち受けると予測する。そしてその結果、「自民党から総理が出せない」という状況が生じる可能性が高いと見られているのだ。

 まずは「1月危機」だ。米国のトランプ次期大統領は記者会見(12月16日)で、「石破首相が望むならぜひお会いしたい」と語った。

 これまでトランプ氏との会談を実現できなかった石破首相は1月20日の大統領就任式前の訪米を調整している。だが、この会談が鬼門になりそうだ。政治ジャーナリスト・藤本順一氏が指摘する。

「トランプ大統領との関係構築がうまくいかなかった場合、いきなり厳しい状況に陥るでしょう。自民党では首相が臨時国会で政治倫理審査会を開催させたことに『裏金問題を蒸し返して旧安倍派にさらなるダメージを与えようとしている』との不満がたまっている。首相が対米外交で失敗すれば、それを機に『外交下手の石破に総理を任せられない』と石破おろしの動きが表面化する可能性があります」

 この1月政変で石破退陣に追い込まれた場合、党内力学でポスト石破に急浮上するのは岸田文雄・前首相だという。

 岸田氏は総選挙大敗で石破政権の短命説が流れると、自民党に「資産運用立国議員連盟」を立ちあげて自ら会長に就任するなど「再登板」に意欲を見せ始めている。

「外交の失敗を理由に石破首相がおろされた場合、外交が得意な岸田さんに再登板のチャンスが生まれる。石破政権は林芳正・官房長官はじめ旧岸田派が支えており、岸田さんが急遽、後継首相になっても政権の骨格をそのまま引き継げる」(藤本氏)

 仮に石破首相がトランプ氏との会談を乗り切っても、次に待つのは「3月危機」だ。国会で2025年度予算審議が大詰めを迎える3月は2つの政変シナリオがある。

 3月9日の「自民党大会政変」がその一つ。政変のきっかけになるのは、玉木雄一郎氏率いる国民民主党が実現を求める「103万円の壁」問題だと見られている。

自公国の連立の可能性

 年末の税制協議では自民と国民民主の「103万円の壁」引き上げ交渉が決裂。玉木氏は、「こういう状況であれば2025年度の本予算にはなかなか賛成するのは難しくなってきた」と批判した。

 衆院で過半数を持っていない石破首相にすれば、国民民主が反対に回れば予算案を成立させられない。政権は絶体絶命の危機に陥る。

 そこで首相が国民民主の要求を受け入れれば“落とし穴”にはまる。前出の藤本氏が語る。

「103万円の壁引き上げには税収が減る全国知事会など地方の首長が猛反対している。首相サイドには財源として企業や業界への優遇税制を縮小・廃止する案もあるが、これをやると企業や業界団体という自民党の選挙基盤に反発が広がり、3月の党大会で参院議員や地方議員から『夏の参院選を戦えない』と石破首相の責任を追及する声が噴き出す可能性が高い」

 自民党の党則には、「国会議員及び都道府県連代表の過半数の要求」で総裁選を実施できる事実上の総裁リコール規定がある。政治評論家の伊藤達美氏は、「総裁選になれば高市早苗、林芳正、小林鷹之の争い」と見る。

「現在の自民党の苦境を招いたのは岸田前首相です。総裁選が実施されることになれば話し合いですんなり岸田さんの再登板とはならない。前回2位の高市さんは闇バイト対策を提言するなど活動を再開しており“次こそは”と出馬するし、小林さんも出るでしょう。岸田前首相ではなく林さんを担ぐ勢力も出てくる」

 自身の退陣後にそうした“混迷の総裁選”へと突入するのを避けるべく、3月危機で石破首相が国民民主の要求を突っぱねると、予算案が通らない。

 その時に第2の政変シナリオに向かう。予算成立のメドが立たずに追い詰められた石破首相が、退陣を条件に野党の協力をとりつけ、予算を成立させて退陣するというシナリオだ。

 過去には竹下登・首相が予算案を3月末に成立させられず、新年度の4月に退陣表明と引き替えに成立させたことがある。

 だが、2つの政変シナリオともに、たとえ石破首相退陣で自民党総裁が交代しても、自公連立の少数政権のままでは法案を成立させることができない状況に変わりはない。

 そこで浮上するのが「玉木首相」の誕生だ。

 玉木氏は不倫スキャンダル報道で「役職停止3か月」の処分中だが、スキャンダル発覚後も国民民主党の支持率は上昇。朝日、読売、毎日など新聞各紙の世論調査では軒並み野党第一党の立憲民主党を上回っている。

 ちょうど3月4日が玉木氏の処分が終わり代表に復帰するタイミングだ。玉木氏を長く取材してきた前出・藤本氏が語る。

「玉木氏がきっちりケジメをつけて3月に国民民主の代表に復帰すれば、次期総理の可能性が見えてきます。国民民主党は総選挙後も支持を大きく伸ばしている。世論調査の次の総理に相応しい政治家で玉木氏がトップになっていれば、自民党もその存在を無視できないでしょう。村山政権と同じ構図で、玉木首相誕生はあり得る」

 自民党は1994年に社会党、新党さきがけと3党連立を組んだ際、223議席を持つ第一党だったにもかかわらず、70議席しかない社会党の村山富市・委員長を首相に担いだ。

「石破首相が退陣した後、改めて国民民主党の103万円の壁引き上げ要求を全面的に受け入れて玉木氏を首相に担ぎ、自民、公明、国民民主の3党で連立を組む。そうすれば国民の支持も得られるし、参院選を自公国で戦ったほうが有利という計算が成り立つ。3月石破退陣のケースでは、他の自民党の首相候補より玉木首相のほうがかなり可能性が高いシナリオだと思います」(同前)

(後編に続く)

※週刊ポスト2024年1月3・10日号

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