〈ご献体くださった方々へ 心から感謝申し上げます〉──これは今年11月末、ある美容外科医の女性がインスタグラムに記した言葉だが、彼女の投稿は大きな物議を醸すこととなった。
「問題の投稿を行ったのは、東京美容外科沖縄院の院長を務める黒田あいみ氏。黒田氏は11月29日、自身のインスタで〈グァム解剖研修〉に参加した報告をしていました。
〈いざfresh cadaver(新鮮なご遺体)解剖しに行きます!!〉〈実際の神経や血管、筋肉、筋膜の走行などを目視で確認する事ができ、日々行なっている施術の再確認、新しい発見など本当に貴重な経験でした〉などと綴り、また献体した故人への感謝も記していました」(医療関係者)
また、黒田氏は12月2日付のブログでもこの研修について報告していたが、12月23日午前、同ブログ記事はひっそりと削除された。
「実はその前日、X(旧Twitter)上では黒田氏のSNSが“ネットリテラシーに欠ける”として拡散されていました。拡散されていたのはインスタの“リール投稿”のスクリーンショットとみられ、黒田氏は研修で解剖を行う前の部屋の写真にモザイクをかけて〈頭部がたくさん並んでるよ〉と“笑顔の絵文字”付きで投稿するなどしていた。
同リール投稿は騒ぎになったあと削除されたようですが、同投稿の拡散は続いています」(同前)
騒動が勃発した12月22日中には、東京美容外科統括院長・麻生泰氏がXで〈大変申し訳ございません。主催者の1人としてお詫びします〉と謝罪したが、同時に〈この写真は、アメリカで解剖している事ですので、日本ともルールが異なります。投稿は既に削除されております。この事で臨床医師が解剖できる火が消えませんように願います〉などとコメント。
「写真をよく見ると、モザイクがかかっていない献体もあります。実は、翌日の朝まで閲覧可能だった黒田氏のブログのほうには、研修参加者との写真も掲載されています。場所は解剖室のなかで、黒田氏はピースのポーズまでとっていた。献体の前で記念撮影をしていたとみられる投稿に、批判が相次いでいる」(同前)
結局、このブログも削除されたが、黒田氏は12月23日昼、ブログを更新。《グアムでの解剖研修においての投稿で皆様に不快な思いをさせてしまって大変申し訳ありませんでした》とした上で、《写真に写ってしまったご遺体は全てモザイクをかけていたつもりでおりましたが一部出来ていないところがありましたこと、また医師でありながら人としての倫理観が欠如した投稿をしてしまったことについて心からお詫び申し上げます。本当に申し訳ありませんでした》と謝罪した。
麻生氏はその後、〈ご批判は真摯に受け止め、解剖セミナーの主催は今後は降ろさせて頂きます〉と投稿している。
主催の事務局長は「ごく当然のこと」と反論
この研修会は、インディアナ大学医学部にあるCSAC-IU事務局が主催している。事務局長に話を聞くと、写真投稿に関する一連の批判について反論した。
「日本ではフレッシュの献体を扱うことができないので、こうした海外での研修がある。解剖室で写真を撮ることはあります。我々が内部で共有するぶんにはご献体の顔などにぼかしは一切入れませんが、ぼかしが入っていたのなら、問題はないでしょう。
(倫理観が欠如しているという指摘については)一般の方からはそう見えるかもしれませんが、手術の様子の写真を一般の方々が見て嫌悪感を示すのと同じで、医師にとってはごく当然のこと。
個人のSNS投稿は我々事務局が規制することはできませんから、そこは各々の医師のモラルの問題になってくる。(「頭部がたくさん並んでいるよ」という文言については)それも医師の間では違和感はありませんし……医師のレベルを上げるためにこういった研修会があるわけで、それを他の医師に共有すること自体はいいことでしょう。こちらの事情を無視した反論は、的外れです」
一般社団法人「日本外科学会・日本解剖学会」が作成した「臨床医学の教育及び研究における死体解剖のガイドライン」によると、遺体による手術手技の研修実施に際して、「献体者の意思を十分尊重し、日本特有の倫理観,死生観,宗教観にも充分に配慮し、遺体に対して常に敬意を払うこと」がその基本姿勢として挙げられている。
仮に医師の間では当たり前だとしても、一般的な日本人ユーザーが目にするSNSにアップされた写真であるから、「日本特有の倫理観、死生観」からすると違和感を覚える人が多いのもうなずける。
NEWSポストセブンでは、クリニックを通じて麻生氏に質問状を送っている。回答があり次第、追記する。