自民・公明の与党が過半数割れに追い込まれた昨年の総選挙。そこで支持を集めたのが、玉木雄一郎氏率いる国民民主党だった。夏に控える参院選でも、玉木氏が嵐を巻き起こすことが予想される。果たして、玉木氏は日本政治にどのような変革を起こすつもりなのか──。玉木氏への独占インタビュー第2回では、国内だけでなくアメリカのトランプ次期大統領についても話を聞いた。【全3回の第2回】
〈内政から外交に目を転じれば、米国ではトランプ次期大統領の就任が間近に迫り、日米関係の先行きを不安視する声が増えている。〉
もし、石破首相がトランプ政権との関係をうまく構築できないなら、野党を含めた議員外交が重要になります。
もちろん、二重外交にならないよう注意しつつ、私自身も人脈を活かした外交を積極的に展開していきたいですね。
実は総選挙が終わった後、各国の在京大使から面会を申し込まれ、退任した米国のエマニュエル大使をはじめ、オーストラリアや韓国、インドなど主要国の大使らと面会しました。自公だけで決められなくなったのは、内政だけではなく外交も同様。国民民主党や私が外交・安全保障をどう考えているかについては各国から注目をいただいています。
しかし、ある意味、安心感も与えなければなりません。「政争は水際まで」という言葉の通り、国内でどれだけ争っても、対外的には「一枚岩でやっていく」というメッセージは大事です。
日本の「忘れられた人々」
トランプ次期大統領の政策に賛否はあるでしょう。ただ、トランプ氏もわれわれも、選挙で掲げた主要政策が「減税」という点は同じなんです。
国民から税を徴収して配ることで無駄が生じ、エスタブリッシュメント(支配層)が既得権益化しているんじゃないのか―これは世界に共通する政治不信の源です。それなら最初から税金を取らずに、国民の手元に残す減税をしたほうがいい、という提案に支持が集まったわけです。
主要なトランプ支持層であるラストベルト(五大湖周辺のサビついた工業地帯)の「忘れられた人々」は、日本では、いわゆるロストジェネレーション、失われた30年の氷河期世代にあたります。これまで、政治的に光が当てられてこなかった彼らの救済を掲げた結果、国民民主の議席が4倍に増えた。
納税者、現役世代からの反撃が始まったと捉えるべきです。働く人、納税者がきちんと報われる政治が求められている。
私は現在、お詫びすべきプライベートの問題で役職停止中ですが、処分が明ける3月の初めは、本予算が年度内に成立するかしないかという大詰めの時期。少数与党の衆議院で何が起きるか、予断は許されません。政局が大きく動きます。
その状況を迎える前に、私自身はこの時間を使い、もう一度しっかり国民の声に耳を傾けて“ネクスト103万円の壁”と言える政策を準備したい。
「103万円の壁」の政策実現に全力を傾けながら、一人ひとりの国民に納税者として覚醒してもらえるような、より大きく日本を動かす政策課題を仕込み、参院選で国民に問うつもりです。
そもそも所得税の基礎控除額(給与所得控除と合わせて103万円)の引き上げ案は、この数年の全国キャラバンで「給料は上がってもそれ以上に税金や社会保険料が上がるので手取りがちっとも増えない。何とかしてくれないか」という国民の声を聞いたことが大きな原動力になりました。
昨年10月の衆院選では、街頭演説に集まってくれた学生さんから、アルバイトの年収が103万円を超えると親の税負担が増す「特定扶養控除」の年収要件があるせいで、11月以降はシフトに入れず困っているという声も聞きました。アルバイトを雇っている店長さんからも、年末の書き入れ時に人手不足で営業時間を短縮したり、店を閉めたりしなければならないという悲痛な声も多く聞きました。
そこでわれわれは、この2つの「103万円の壁」をどちらも引き上げよう、と選挙公約に掲げたのです。自公との協議を経て、「特定扶養控除」は2025年度から150万円に引き上げることが決まりました。
給料を上げるのは民間の努力。でも、税と社会保険料の負担を抑えて国民の手元に残るお金、つまり手取りを増やす努力は政治の責任です。国民の声を広く聞くなかでそのことを確信しました。
大事なことは全部、当事者である国民の皆さんが教えてくれるんです。
(第3回に続く)
※週刊ポスト2025年1月17・24日号