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【田原総一朗氏&古市憲寿氏が占う石破政権の行方】自民党を変えると言っていたのに何もできない石破首相の評価 「総理になったら“ああしたいこうしたい”がなくなった。失脚したくないから」

NEWSポストセブン 2025年1月5日 7時13分

 自民党一強体制が崩れ、少数与党の石破政権は厳しい舵取りに直面している。日本政治はまさに歴史の転換点に立っている。戦後政治の「生き字引」的存在で90歳の今なお第一線に立つジャーナリストの田原総一朗氏と、この1月に40歳になる社会学者の古市憲寿氏。半世紀も世代が違う2人が、現在とこれからの政治の行方を語り合った。【前後編の前編】(文中一部敬称略)

石破茂首相の人気がない理由

田原:なんで石破(茂)は人気ないの?

古市:古い自民党を壊すとか、さんざん安倍(晋三・元首相)さんを批判して自民党を変えるって言ってたのに、いざ総理になったら何もできないからじゃないですか。

田原:なんでできないんだろう?

古市:逆に聞きたいのですが、なんでですか?

田原:石破は自民党で最長の安倍内閣を1人だけ批判していたから、それがウケて総裁になった。でも自民党の中で少数派だから言いたいこと言ったら失脚する。失脚したくないんだ。

古市:自民党に気を遣って、国民にも人気がない。どうせ両方ないなら、自民党に喧嘩を売ってでも、もっと国民ウケすることを言ったほうがいいんじゃないですか。

田原:国民ウケって何すりゃいいの。

古市:これまで石破さんが訴えてきたこと。選択的夫婦別姓とか、同性婚とか、お金使わずに社会を変えられる議題はいくつもあるのに、動かない。

失脚したくないから

田原:安倍首相までは、日本をこうしたいという考えがあった。賛否両論あったけど。でも、岸田(文雄・前首相)以降はその考えもない。

古市:それが問題ですよ。なぜ総理大臣にまでなる人に目的がないんですか。失脚覚悟で「これやりたい」と言うもんじゃないですか。

田原:日本人の多くは正しいか否かではなく、損得で考える。今の国会議員の最大の目的は選挙に当選すること。正しいか間違っているかは関係ないから裏金がいっぱいある。日本の政治家、とくに自民党はエネルギーの90%くらいを選挙に勝つことに使っている。

古市:この前、鳥取に行ったんです。石破さんの地元。駅前から商店街が続いていてほとんどシャッター通り。ほぼ唯一賑わっていたのが石破事務所でした。新幹線も通せなかったし、産業は生み出せず、利益誘導もできなかった。よくここで地元の人は石破さんを支持していると思ったけど、石破さんは選挙には強い。それなら日本をどうするか考える時間も余裕もあったはずでしょう。

田原:石破は総裁選の間はああしたい、こうしたいというのがあった。でも総裁になったら全部なくなった。失脚したくないから。

古市:でも、どうせ人気がないからいずれ失脚するわけじゃないですか。

田原:そんなことないよ。現に失脚していないじゃん。夏の参院選でもし負けたら石破は失脚だけど。

誰も参院選で石破が勝てるとは思っていない

古市:参院選もこのままでは勝てないでしょう。

田原:あなたがそう言うように誰も参院選で石破が勝てるとは思っていないから、石破さんを含めて勝ったらどうするか何も考えていない。日本の政治は思考停止している。

古市:国民民主党や日本維新の会には何か考えがあるんじゃないですか。

田原:ない。何か月か前になるが、自民党の支持率がドンと落ちた時に僕は立憲民主党の泉健太、維新の馬場伸幸に会って「立憲と維新と国民民主が協議したら、完全に政権取れる、やれよ」と言ったんです。泉は「やりたい」。しかし、馬場は「立憲なんかと組みたくない」と。維新から見ると立憲は左翼なんだよね。だから立憲より自民と組むほうがよっぽどいい。

古市:だけど国民民主が台頭してきたことで野党のバランスが変わった。

田原:自民党は少数政権だから予算通すためには国民民主と組むしかない。だけど国民民主からすれば自民と組んだままじゃ参院選を戦えないから、参院選が近づくと自民党から離れるだろう。そうなった時政権は危うい。

(後編に続く)

【プロフィール】
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学文学部卒業後、岩波映画製作所、東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経て、1977年、フリージャーナリストに。『日本の政治 田中角栄・角栄以後』、『さらば総理 歴代宰相通信簿』など著書多数。

古市憲寿(ふるいち・のりとし)/1985年、東京都生まれ。社会学者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員、日本大学藝術学部客員教授。著書に『絶望の国の幸福な若者たち』『保育園義務教育化』など、小説に『平成くん、さようなら』『ヒノマル』など。新著は『昭和100年』。

※週刊ポスト2025年1月17・24日号

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