警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、ヤクザの年始行事「事始め式」と、餅つきにまつわる知られざる裏側について。
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12月13日、今年も指定暴力団六代目山口組恒例の「事始め式」が行われた。暴力団の業界では、毎年この日が新年を迎える日とされており、事始めには直参組長らが集まって今年1年を振り返り、来年の組織指針なども発表される。
この日、事始めが行われたのは、静岡県浜松市にある六代目山口組傘下の國領屋一家の組事務所。本来なら神戸市にある総本部で実施したいところだが、山口組の分裂抗争以降、特定抗争指定を受けている六代目山口組では事務所の使用に制限がかかっているため、今年も使用できなかったのだ。
当日は現場に警察官やメディアが多数集まっていたと報じられているが、めぼしい組員は前日から浜松に集結、会場入りしていたという。事始めの準備のためであるが、実は前日に事始め式のリハーサルが行われていたと、暴力団関係者であるA氏は話す。
「事始めにはリハーサルがある。当日と同じ手順で最初から最後まで通しでやる。組では、どんな行事もすべてリハーサルがあるんでね。盃事だってリハーサルをやるよ」とA氏。事始めでは毎年、その年に直参に昇格した二次団体の組長と六代目山口組の司忍組長との間で親子盃を交わす儀式が行われるのだが、前日にこれもリハーサルするらしい。
式次第の確認としてリハーサルは必要だというA氏だが、「盃事はリハーサルと当日では緊張感がまるで違う。リハーサルならリラックスしてできるが、当日、ずらりと顔を揃えた組長らの前に座る緊張感は半端ない。リハーサルで問題なくできても、緊張から言葉を噛むかもしれない。盃事は一発勝負の方がいい気がする」という。
当日と同じ手順で同じように式を行うのなら、式に参列する予定の組長らも参加するのか?と聞くと、A氏は「もちろんだよ。いないのは司組長だけ。組長は当日だけだ」。万が一にも間違いがあってはならない行事には、すべてリハーサルが存在するというのが暴力団業界の常識らしい。
次の餅が届く前に、なんとか消化しておかないと
盃事を終えた六代目山口組では、年末にもう1つの恒例行事「餅つき大会」が行われる。A氏の所にも毎年ついた餅が配られてくるというが、「去年の餅がまだ冷凍庫に残っている」とため息をついた。去年の年末、A氏の所に配られた餅は4パック、「赤と白の紅白の餅、ヨモギの草餅、あんこ餅、中にあんが入っていない草餅だったと思う」。餅は丸餅で、小ぶりの餅が1パックに10個ほど入っているという。
A氏に正月の間に食べきれなかったのかと聞くと、「沢山もらっても困るんだ。そんなにうまくないからね」とまさかの本音が飛び出した。餅つき大会の餅は、もち米にこだわっているから美味しいという定評のはずだが、「臼と杵でついた餅、あれはうまい。だけど餅つきはパフォーマンスだから、全部つくのは無理。何時間かかるがわからない。ほとんどの餅は後ろで餅つき機がついている。手でついた餅と機械でついた餅は、やっぱり味が違う。今は美味い餅がどこでも簡単に買えるしね」(A氏)。毎年500キロものもち米を蒸してつくというのだから、餅つき機頼りになっても仕方がない。
臼にしろ機械にしろ、出来立ての餅を丸めているのは手伝いに来ている組員だ。「出来立ての餅でヤケドしそうになって、『早くしろ』と怒鳴られながら、上から下まで粉だらけになって餅を丸めなくちゃいけない。年末で早くしなければならないはわかるんだが、手伝いに出た組員は大変だよ」(A氏)。
餅を丸める組員らを急がせるのは、大晦日までに全国の傘下組織や関係各所に餅を配るため。こんな所にも餅が配られているとA氏が口に出したのは専任の担当者を置いている「ヤクザジャーナルと呼ばれる雑誌」だ。「ヤクザジャーナルといわれる所には、たぶん餅が段ボールは箱で届けられている」。
「ヤクザジャーナルの編集部員はどうなんだか、一般人に組からの餅だと配っても喜ばれない。餅に代紋の焼き印でも押してあれば、みんな欲しがるんだろうけど」とA氏。代紋付きの餅なら、という者は筆者の周りにもけっこういるが、「いらないと捨てられたり、人に食われてしまう餅に代紋は無理か」と口の端を上げた。
「次の餅が届く前に、なんとか消化しておかないと」とA氏は腹をなでていた。