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《仁科克基が語った絶縁の父・松方弘樹への感謝》「師匠と弟子みたいな関係だったけど…」、俳優業の傍らで始めていた「障害者就労支援施設」運営

NEWSポストセブン 2025年1月7日 10時59分

 2024年11月18日、待望の第1子が誕生した俳優の仁科克基さん(42)。仁科さんは2022年12月に、元タレントで歯科衛生士の西原愛夏さん(29)と結婚。子どもを望んだものの、仁科さんに「閉塞性無精子」という男性不妊症であることが分かり、夫婦そろって不妊治療と向き合うなかでの妊娠だった。42歳で親となった彼、最近は名俳優だった父・松方弘樹(享年74)との数奇な“縁”を感じるという。仁科さんに話を聞いた。【前後編の後編。前編を読む】

 お子さんはどちらに似ているのかと尋ねると、「今のところ、周囲はみんな僕って言いますね」と、はにかんだ。

 そんな“パパ似”の愛息は近い将来、父親と同じ芸能の道を歩むのだろうか。仁科さん自身は、父に故・松方さん、母に仁科亜季子さん(71)を持ち、小学校5年生で子役としてデビューした。また、日本舞踏家として「岩井流・岩井久次郎」を襲名している。

「実は“男の子を授かれたら、歌舞伎役者にしたい”というのが、僕の長年の夢だったんです。だけど、いざ生まれたら、“自分の夢を子どもに押し付けるのはどうなんだろう”って考えるようになりました。もちろん、稽古場に連れて行ったり、舞台を見せたりと、文化自体に触れさせたい気持ちはありますし、もし日本舞踊や芸能界に興味を持てば、その道筋をサポートしていきたいです。

 でも、周囲から変な期待がかかるというか、“できてあたり前だよね”みたいな空気を感じることが自分もあったので、苦労する面も出てくるだろうなと」

 理想の父親像については、「ないですね」とキッパリ。16歳で両親が離婚してから、2017年に松方さんが亡くなるまでの約19年間、親子関係は絶縁状態にあった。「実は松方さんとは“普通の親子”とは程遠く、師匠と弟子みたいな関係性でした。普通の親子みたいな会話もほぼなかったように思います」という。しかし、数奇な“縁”を感じるという。

「松方さんは42歳の時にパイプカット(精子の通り道を塞ぐ避妊手術)をしていたことを公言していました。かたや僕は、同じ42歳で不妊手術の末、ひとつの命を授かった。運命的とは言わないですが、なんだか不思議な気持ちがします。

 結局、松方さんとは関係を修復できずじまいだったけれど、もし今会えたら、“僕を作ってくれてありがとう”と伝えたいです。彼のおかげで、僕、そして息子と、生命のバトンがつながったわけですから」

役者業とは別に取り組む事業

 仁科さんは近年、亡き父・松方さんの持ち役であった『遠山の金さん』を舞台で演じるなど、活躍の場を広げている。このまま芸能界に身を置いて仕事と向き合っていくのかと思いきや、実は今、役者業の傍らで取り組んでいる事業があるという。

「2023年6月に宮崎県の日南市に、ITに特化した就労支援施設のフランチャイズ『ヒカリマーリン』をオープンしました。障害を持つ方々に対してプログラミング言語やウェブデザインなどの専門講師による個別指導を行い、生活的、経済的、精神的自立のサポートをしています」

 きっかけは、提携パートナーであるガルヒ就労支援サービス合同会社のCEO・宮脇正氏と釣り番組を通して知り合い、施設の見学に行ったことだった。

「身体に障害を持つ方もいれば、精神的に障害を抱えている方、知的障害がある方が一緒に学ばれているのですが、その真剣なまなざしを前に、“人って、こんなに一生懸命、何かに打ち込めるのか”と思いました。障害を持つ方は、全国にたくさんいますが、今まであまり視界に入れないようにして生きてきたのかもしれないと思い当たり、ハッとしました。同時に、少しでも彼らのサポートができれば、と強く感じたんです」

 東京に戻り、母に打ち明けたところ、「一緒にやろう」とトントン拍子に話が進んだ。オープンから1年半近く経った今は、2つの施設を運営しながら、約25人ほどの就労支援を続けている。

「毎月、現場に通っていますが、事業所に来た頃はパソコンの電源を入れるのが精一杯だった利用者さんが、WordやExcelを使いこなし始め、IT関連の資格を取り、やがてゲームやホームページまで作れるようになって……。一歩ずつ成長して羽ばたいていく様子を間近で見られることが、嬉しいんです。

 障害を持つ方の多くは、非正規雇用であったり、雇用されたとしても最低時給だったりして、生活が苦しいのが現状です。そういう方々が、ITスキルを身につけることによって、10円でも100円、200円でも高い時給で就職・就労できるようサポートさせてもらえるのは、本当に社会的意義があることだと思っています」

「国からの認可を受けてやる仕事ですし、地に足をつけて取り組まないと」と、決意を新たにする仁科さんに、今後はより福祉事業にシフトしていくのかと尋ねると、

「テレビや舞台のお仕事も大事ですし、お話をいただければ、貪欲に頑張らせていただきたいです。でも、役者という肩書きを持つ人って、星の数ほどいるじゃないですか。今の自分としては、僕にしかできないことをやっていきたいんです。福祉事業もそうですし、あとは自身が経験した、男性不妊の葛藤や治療の大変さについても、多くの方々に伝えていけたら本望です」

 若かりし頃、名俳優の息子として数々の“伝説”を残してきた仁科さんだが、父になった今、その顔つきからは、一家を支えていくのだという気概すら感じられた。

「これまでさんざん、好きにやらせてもらったぶん、これからは社会、そして家族のために生きていけたらと思います。妻と息子に対しての想いは、“守りたい”っていう、そんな簡単な言葉では表せません。やっぱり、大きな覚悟を持って、これからの人生を歩んでいきます」

(了。前編を読む)

取材・文/梶原薫 撮影/山口比佐夫

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