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【吉本新喜劇の顔】島田珠代(54)が明かす「パンティーテックス」誕生秘話 「私のギャグは下品とは思っていない」「少女漫画のヒロインのように」の思い

NEWSポストセブン 2025年1月2日 16時12分

 現在、65周年ツアーを巡業中の吉本新喜劇──その顔として活躍する島田珠代さん(54)は、17歳から「心斎橋筋2丁目劇場」に出演し、芸歴36年を数えるベテランだ。近年では「パンティーテックス」などのギャグが全国的に浸透し、吉本きっての「キテレツ女芸人」というイメージが定着した一方、2024年10月に上梓した初の自伝『悲しみは笑い飛ばせ! 島田珠代の幸福論』では、ひとりの女性としての来歴や思いも告白している。そんな珠代さんのヒストリーに迫った。【全3回中の第1回】

 大阪生まれ大阪育ちの珠代さんは、自伝でも明かしたように、小学校2年生までは内気な少女だった。転機は、小学校3年生の時に訪れる。4歳から続けていた書道を担任の先生に誉められ、クラスメイトから一目置かれる人気者になったのだ。

 クラスの中心人物となった珠代さんは、当時からすでに「パンティーテックス」の原型とも言えるギャグを発明していた。きっかけは、父親の影響で見ていたプロ野球情報番組『ミユキ野球教室』のオープニングで流れるCMソングだったという。

「番組の提供会社が高級服地素材メーカーで、その会社名を男性ボーカルが連呼する歌が流れていたんです。歌の合間に、男性の声で『ファンシィテックス!』って合いの手が入るんですけど、私はその『ファンシィ』を『パンティ』と聞き間違えていたんです。小学生なりにその合いの手の声が面白くて、洗濯しながら『タマヨ〜タマヨ~タマヨのパンティーテックス!』なんて歌って踊ってたんです」

 だが、当時の珠代さんが「パンティーテックス」を人前で披露することはなかった。「あくまで自分ひとりだけの時でしたね」と振り返る。

「何か気合いを入れなきゃいけない時、たとえば試験前の勉強をしなきゃいけない時とかに、『タマヨ〜頑張っテックス』とか『ガッツだテックス』とか、ひとりで言っていましたね。なにかと自分を鼓舞する言葉として、ひとりで言い続けていました」

「ぶりっ子言葉しか使いたくない」

 小学生時代から“自分を奮い立たせる言葉”だった「パンティーテックス」が、“芸”に変わった瞬間がある。芸人であり構成作家としても活躍する「ザ・プラン9」の「お〜い!久馬」こと、久馬歩さんがきっかけだったという。

「久馬さんが新喜劇用に書いてくださったコントの中に『私、パンティ履いてますか?』ってワードを入れてくれたんですよね。そこから私が新喜劇で『肌に身についてるはずの(パンティの)布の感触が八割方ないんです』とか言い出したわけです(笑)」

 これがテレビで初披露されたのは、2020年8月7日放送の『かまいたちの机上の空論城』(関西テレビ)だった。さらに同年9月15日放送の『相席食堂』(ABCテレビ)で全国的に知れ渡る。そこで千鳥の大悟さんは「姉さんの芸はちゃんと下品」と評した。これは芸人としての最高の誉め言葉──と思いきや、珠代さんはこう首を振った。

「私自身は下品と思ってないんですよ、よく言われますけど(笑)。たとえば今の女の子って、ご飯のことを“メシ”って平気で言ったり、お尻のことを“ケツ”とか言ったりするじゃないですか。私はそういう言葉遣いには、常に気をつけているつもりなんです。私のギャグで、男性の股間を“チ~ン”と弾くのも、ボインダンスも、言葉の品は保てていると勝手に思っています。少女漫画のヒロインしか言わないような、ぶりっ子言葉しか使いたくないですね」

 珠代さんのなかには「品」のボーダーラインがある。他者からは分からないような微妙な線かもしれないが、その素のこだわりこそが、キテレツなギャグやハイテンションな動きとのギャップを生み出し、笑いとなるのだろう。「少女漫画のヒロイン」という言葉もそうだが、新喜劇でも「54歳でバツ2なんです。失うものも恐れるものも何もないんです」という台詞が飛び出すことがある。ひとりの女性としての珠代さんが持つ感性は、笑いといかに紐付いているのだろうか。【第2回に続く】

(取材・文/河合桃子)

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