2024年12月28日に行なわれた六代目山口組の餅つきに密着した。会場には多くの直参組長が集結し、No.2の高山清司若頭、そして司忍組長が姿を現したのだった【前後編の後編】
「司だ、司!」──10時30分、黒いベンツが会場のガレージ前に到着すると、警察関係者、マスコミが一斉に囲みカメラを向ける。若頭補佐である秋良東力・秋良連合会会長が車のドアを開けると、ブラウンのブルゾン、ネイビーのニット、黒いパンツ、そしてトレードマークでもあるサングラスを着用した司組長が姿を現す。
間髪を入れず高山若頭を含めた直参組長全員が頭を下げ、「おはようございます」と大きな声が響き渡った。
司組長の到着後、ガレージのシャッターが閉まった。警察対策だろうか。
「例年通りであれば、司組長の到着とともに鏡開きが行なわれます。2023年は司組長と本部長で大同会の森尾卯太男会長、若頭補佐で倉本組の津田力組長の3人が行なっています。樽酒は開催地となった愛知県の有名蔵元のもの。出身母体である弘道会も愛知が本拠地ということもあり、司組長のお気に入りだともっぱらです」(実話誌記者)
随時、つきたての餅が入っていると見られる木箱を抱えた組員がガレージから出てくる。そのなかで、2人だけ紫色の風呂敷に包まれたものを外に運び出していた。警察関係者はこう指摘する。
「風呂敷で包んでいたのは司組長がついた餅入りの木箱ではないか。司組長は毎年必ず杵で餅をついていて、直参組長たちに“指導”するほどこだわりがある。初心者は杵を力任せに振り下ろすのが良いと思いがちだが、司組長に言わせるとそうではないようで……。(教えるのに)熱が入ることもしばしばあると聞く。
過去にはスジがいい新直参に対して『あいつうまいな、まさか農家の出じゃないよな?』などと舌を巻いたことも報じられている。今年も杵を使って餅をついただろうし、1月下旬で83歳になるとは思えないほど精力的だ」
時折、会場からは笑い声も響き、宴会も始まったようだ。2023年は“大阪のソウルフード”「551蓬莱」の紙袋など多くのものが持ち込まれていたのを目視しているが、今回は「お茶のティーバッグ」などが入っているであろう“お茶セット”ラベルの貼られたクリアケースと、高級松坂牛メーカーの紙袋くらいだった。
ただ、リボンがついたままの高級ブランド「Dior」の紙袋を持った組員が出入りしており、「誰かへのプレゼントか?」「いや、あの大きさの紙袋だと化粧品とかじゃないか」「餅を入れているのでは?」などと警察、メディア関係者の間で話題になっていた。
ヴィトン、プラダ、モンクレール…2024年も多様な直参組長の服装
餅つきといえば直参組長の私服にも注目が集まる。
「普段の会合では原則スーツの着用が義務付けられているため、私服姿の直参組長を見られるのは餅つきぐらいです。私服の系統は大きく分けて2通り。スポーツウェアと、ハイブランドの衣類だ。体を動かすことに主眼を置く組長もいれば、メディアも来るのでしっかりとした格好をしようという組長もいる」(前出・実話誌記者)
前者だと「ナイキ」「アディダス」「ニューバランス」を着用している組長や組員が多いが、安東美樹・竹中組組長が着用していたゴルフウェアブランド「DANCE WITH DRAGON」のセットアップが目立っていた。なかには大谷翔平ファンなのか、ドジャースのスウェットにニット帽をかぶっている組員も見受けられた。
ハイブランドはより多種多様だ。確認できた限りで、現場指揮を担っていた野内正博・弘道会若頭はイタリアの高級ブランド「MooRER」の新作ダウン。戸塚幸裕・国領屋一家総長は「ルイ・ヴィトン」の緑色のダウンに同ブランドのスニーカー。吉村俊平・吉村組組長は「プラダ」のダウン。秋良会長は「ベルルッティ」のアウターに「ジバンシイ」のスエット。「ベルルッティ」は高山若頭も愛用していて、2023年の餅つきでも同ブランドのダウンを着用していた。
その高山若頭は2024年、「モンクレール」のネイビーのアウターを着用。「モンクレール」は直参組長の愛用ブランドのようだ。若頭補佐は7人いるが、不在だった竹内照明・弘道会会長を除いた6人のうち、津田組長、藤井英治・国粋会会長、生野靖道・石井一家総長と半分の若頭補佐が着用していた。
「肝心の司組長の服装はブランドが特定できなかったが、イタリアの超高級メーカーを愛用していることで知られている。冬服となると、(身に纏っているものが)最低でも数百万円かかっているのではないか。組長のファッションのこだわりは相当で、乗用車に複数のサングラスを常備している」(同前)
直参組長たちのこだわりは細部にも伺えた。「ルイ・ヴィトン」の限定スニーカーや「ロレックス」のデイトナなどが確認できた。
2025年は司組長にとって勝負の年
司組長は12時半過ぎに会場を後にする。餅つきでは笑顔を見せていた組長だが、会場を出ると真剣な顔つきに。2023年は警察関係者、メディアに「良いお年を」と声かけしていたが、2024年は口を真一文字に結んだまま車に乗り込んだ。
「2025年は司組長にとって勝負の年でしょう。分裂抗争では構成員数で大差をつけているとはいえ、決定打に欠けたままここ数年の月日が流れてしまい、ついに10年を迎えることになった。六代目も若返りを狙い人員を刷新していますが、抗争が終結しない限りは警察の厳しい規制が解除されることはなくジリ貧は避けられないでしょう。2024年で組長就任20年を迎えることもあり、厳しい表情は2025年への決意の表れではないか」(前出・実話誌記者)
司組長退出の1時間後、高山若頭も会場を後にする。その後、直参組長たちも餅を手土産に迎えの車に乗り込み去っていった。
2025年の山口組分裂抗争はどうなるのか──。
(了。前編から読む)