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相次ぐアイドル、グラドルの女子プロレスデビュー “生き字引”ロッシー小川氏「もう飽和状態」「フワちゃんは別格だった」

NEWSポストセブン 2025年1月12日 16時15分

 Netflixシリーズ『極悪女王』が追い風となり、再び注目が集まる女子プロレス界。アイドルやグラドル出身の華やかなルックスの選手もすっかり当たり前の存在で、団体のトップに君臨する例も多い。たとえば昨年末の「スターダム」東京・両国国技館大会でワールド・オブ・スターダム王座をめぐり死闘を繰り広げた中野たむと上谷沙弥は、どちらもアイドル活動を経てリングデビューした。また、「東京女子プロレス」には、SKE48の現役メンバーである荒井優希がプロレスラーとしてレギュラー参戦し、タッグとシングル、それぞれのベルトを戴冠しただけでなく、3月でグループを卒業した後はリングに専念する意向を示している。

 2024年5月に旗揚げ戦を行った新進気鋭の女子プロレス団体「マリーゴールド」もまた大勢の芸能人選手を抱えている。そして、同団体から新たにリングデビューしようとする女性芸能人がひとり──。

 グラビアやアイドル、会社経営などマルチに活躍する咲村良子は、2024年12月初旬、都内の道場にいた。同月26日にデビュー戦が迫り、練習にも一層力が入っているようだ。芸能人といえど、道場ではほかと同じ単なる“新人”。相手の蹴りが深く入り、痛みで思わずうずくまる場面もあった。

 グラドルとしてのキャリアは10年を超え、これまで発売したイメージビデオは10本以上。そのままの形で芸能活動を続けることもできるだろうに、 なぜわざわざプロレスという世界に飛び込むのか? 練習後の彼女に取材すると、「本当に軽い気持ちでスタートしたんですよ」という答えが返ってきた。

「2023年の9月くらいから筋トレにハマり、グラビアアイドルとしてはバキバキすぎる体になっていたので、『じゃあせっかくだしプロレスやってみようかな?』って、完全に軽いノリですね(笑)」(咲村)

 グラビアの撮影直前は、プロレス向きに増やした体重を減量したり、ケガをしないように練習を控えたり、なんとか調整しているという。

「でもグラビアはいろんな需要があるし、“腹筋も割れているし肩もバキバキ”みたいな体型をそれはそれで武器にしていく方向でやれたらいいですね。スケジュール調整とかは大変でも、単純にプロレスはめちゃくちゃ楽しいです!

『マリーゴールド』の練習生として発表された段階から新しいファンの方がどんどん増えています。プロレスと芸能、それぞれの入り口から興味を持ってくれた方がどっちの活動も応援してくれるような状況が理想ですね」(咲村)

 芸能とプロレス、異なるジャンルを行き来することで、双方からのファン獲得を目指すという。咲村が所属する芸能事務所「セルワールドエンタテイメント」の代表取締役・盛田正和氏も近い考えのもとでバックアップしているようだ。同事務所のグラビアアイドル・橘渚も咲村と同じタイミングでリングデビューを控えている。

「ブームに乗ろうとライブアイドルに特化した事務所が、ブームが下火になった途端、一気にダメになる……といった光景を何度も目にしてきました。なので、芸能事務所として、“ひとつのジャンルに特化せず、手広くやったほうがいい”という考えがあります。

 _僕の場合、妻が元プロレスラーということもあって、もともとプロレス業界の慣習などは理解しています。どんな形であろうと、タレントの知名度が上がるのは大歓迎ですから、彼女たちのリングデビューも応援しています」(盛田氏)

女性芸能人が続々リングデビューする理由

“女子プロレス界の生き字引”と名高い「スターダム」設立者で「マリーゴールド」代表取締役のロッシー小川氏に、女性芸能人×プロレスの歴史を振り返ってもらった。小川氏によると、2010年にリングデビューした元グラビアアイドルの愛川ゆず季がパイオニア的存在だという。

「ミミ萩原もいたけど、やっぱり女性芸能人がリングに本格参入する流れを作ったのは愛川だね。彼女は『スターダム』の旗揚げメンバーだったけど、かなり練習熱心で負けず嫌いで、芸能人うんぬんは関係なく、いちプロレスラーとして特別なものを感じた」

 女性芸能人がリングに上がる流れのなか、2022年10月に「スターダム」でデビュー戦を飾ったタレントのフワちゃんがひとつの到達点となった。

「ゲスト参戦に近い形だったけど、フワちゃんは別格。プロレスに対する真剣さは本物だし、『行列のできる相談所』(日本テレビ系)で2度も特集が組まれて、話題性という点でも強い。フワちゃんがあれだけのことを成し遂げて、芸能人がリングデビューすることのハードルは一気に上がったと思う」

 芸能界にルーツを持つ女子プロレスラーが増えたぶん、要求されるハードルは高くなっている。

「まったくの素人だった選手と比べて、人に見られてきた経験があるぶん、いろんな度胸を持っていると思う。でも女性芸能人がリングに参入するのはもう飽和状態で、ちょっとやそっとじゃ話題にならない。結局は本人の頑張り次第というか、“リングの上でどれだけやれるか?”がより重要になってきている。

 プロレスは体を痛めるし、どうしても好きじゃないと続けていけない。だから自分としては、女性芸能人を積極的に勧誘するようなことはしない。やりたいと言って来る子たちを『やってみれば?』と受け入れるだけ。芸能活動は関係なく、ひとりの新人選手という感覚で接している」

 リングの上でどれだけやれるか──。そして迎えた2024年12月26日、「マリーゴールド」東京・後楽園ホール大会。前出の咲村のデビュー戦の相手は、“女子プロレス界の人間国宝”高橋奈七永だ。強烈な攻撃に何度膝をついても執念で立ち上がったが、最後は全身を締め上げられ、無念のギブアップとなった。しかしレジェンド相手にも果敢に挑む姿に、観客から大きな拍手が送られた。

 試合を終えた咲村の頬は、ビンタで赤く腫れ、涙の筋が光っていた。どこからどう見てもボロボロの状態だが、瞳の炎は燃え続けている。インタビュースペースでは、「『マリーゴールド』の顔になり、ゆくゆくは日本のプロレスラー、女子プロレスの顔になる」と野望をぶち上げた。

 そこに、同じく同大会でデビューした事務所の後輩・橘渚がやってきた。ふたりは「これから一緒に頑張っていこう」と互いの頑張りを称え合うと、一転してグラドルの表情へ。ともにカメラに向かって笑顔でヒップを突き出し、会見を盛り上げた。その切り替えの早さに驚くと同時に、「これこそが彼女たちの“女子プロレス界での戦い方”なのかもしれない」と不思議な清々しさも感じたのだった。

◇取材・文/原田イチボ(HEW)

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