ネット上で、匿名による悪質な投稿が後を絶たない。人格を否定するようなものから生命を脅かすような加害予告まで、その投稿内容はさまざまだ。
被害者が誹謗中傷をする投稿者を特定するため「発信者情報開示請求」に踏み切るケースも少なくないが、なかには追い詰められる人も……。事態が深刻化しているにもかかわらず、なぜこうした投稿が繰り返されるのか。
元プロゲーマー・たぬかな氏が生配信で、視聴者のコメントに答えるかたちで持論を展開する様子をまとめた、新刊『社会的弱者との生配信ルポ』(星天出版)。同書から、誹謗中傷を行う投稿者の心理や、被害者の心境についてのやりとりをお届けする。(同書より一部抜粋して再構成。質問は生配信の視聴者から寄せられたコメント)【全3回の第3回。第1回を読む】
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──どんなDM 送るんだろうね
いっぱいあるよ。私にも「カス」「クズ」「ゴミ」「死ね」みたいなDMが一生来るからな。送ってくるヤツ、ホンマに馬鹿じゃない? ネット民って他人の気持ちを代弁するんが好きやん。大体の人間は「ふ~ん」で済む話でも、他人の足を引っ張りたいがために全力で叩きに行くやん。
ryuchellの件だって「妻のpecoちゃんがかわいそう! pecoちゃんはどう思ってるか! うう、ううッ(泣)」みたいな感じで、本人が思ってないお気持ちを勝手に代弁して叩くやん。そんな叩き方、家族が望んでるわけないのにな。
世間からは叩かれる流れだったけど、そんなん当事者同士の問題なんだから、人の勝手やん。当人らがお互いにいいよってなったならいいやんけ。
──ryuchell、まだ27歳だったのに
今ってカミングアウトしたら結構受け入れられる風潮はあるけど、子供がおるってだけで「親なのに!」ってお気持ち表明したいヤツが沸いてまうな。女は自分の股から子どもを産むから、出産前後で意識が変わる人って多いかもしれんけど、男ってそうじゃないやん。養育費も払わず我関せずで生きていく男も、子どもより自分の人生を優先する男もいっぱいおるやん。一般人だったらのうのうと生きていけるのに、芸能人ってだけでそこまで責められなあかんのか?
それはちゃうやろ。そんで「本当にご冥福をお祈りします」「力になってあげたかった」みたいなやつらがいっぱい出てくんねやろな。こういうときに味方したら、コスパよくいい人アピールできるやん。今まで何も言ってなかったヤツとか、何なら批判気味だったヤツもこぞってやんで。気色悪いわ。
──たぬかなも炎上したとき、ワイドショーで取り上げられてたね
炎上して世間に叩かれると「もう話題にも出されたくない、消えてしまいたい」って思う気持ちはわからんでもない。
誹謗中傷する人間の中には「死んでほしい」って本気で思ってるヤツもおんねん。「たぬかなには絶対に死んでほしい」ってツイート見たことあるしな。
でも私はテレビタレントばりの知名度ではないから、普通に仕事もできるし、外も歩ける。ryuchellくらい有名だったら、どこで何をやっても何を言ってもずっと揚げ足を取られ続ける人生になってしまうから、しんどくなったんやろな。
──誹謗中傷コメント書いてるのってどんな人なんだろ
他人が幸せだと自分の幸せを奪われた気がするし、他人が不幸だとその分の幸せが自分に回ってくる気がして、相手を傷つけたいと思うんやって。
そんで「みんなが叩くような人なら傷つけても批判されないだろう、むしろ自分が賞賛されるんじゃないか」と思って、ちっちゃいネット界の批判民代表になって英雄気取りすんねん。バリ気持ち悪いわ。
昔は「他人の不幸で飯がうまい」って感覚に共感できたけど、今はもうわからんかも。嫌いなヤツの不幸はメシウマやけど、自分と全く関係ない人が不幸なのは感情移入してしまってキツい。やっぱり未曾有の炎上を経験した身からするとね、キツいんよ。
──たぬかなは生きててよかった
死ぬ気はサラサラないけど、傷つくこともあったな。
──たぬかなでも傷つくんか
こんだけブスって言われて傷ついてないとでも思っとんのか、ボケ! 散々「ブス」「ババア」って言われて、歳も勝手に3歳上くらいにされてよォ。まあ言うほど傷ついてないんやけど、傷つく人が大半だろうな。
私はもう砂がだいぶ漏れてきたような古めのサンドバックやから、叩きがいがなくて無視されてますけど、これからまた叩きがいのある若くて美しい才能ある男女がサンドバッグにされて、ゴミクズどもにボロボロにされていくと思うと……はぁ~。
──ニュースでもずっと燃やされ続けるしな
マスコミも悪いと思うで。インプレッションが増えるからってどうでもいい個人的なニュースをずっとずっと出し続けるから、ずっとずっと揚げ足取られ続けるんや。
──メンタルに自信ないヤツは表に出ちゃいけないな
いや、少々自信があったとしても、こういう誹謗中傷に耐えるのは厳しいやろ。どんだけ有名人でも、どんだけ批判コメントに慣れてても、効く言葉ってあるからさ。お前の掘り当てた“一番効く言葉”で、そいつを殺す可能性もあるからな。
こんな現代に生きとったら誰かを叩きたくなるもわかるんやけど、批判するんだったら論理的に言わな。「それなら叩かれても仕方ないな」って論調で叩けよ。「キモい」とか「ムカつく」みたいに主観的な感情で叩くヤツが多すぎなんよ。
批判ゼロの世界ってのも違うと思うから「他人を批判するな」とは言わんけど、相手の尊厳を傷つける叩き方はすんなよ。そんで、本題と関係ない部分を叩きに行くな。ブスとか容姿いじりで叩くヤツは話にならんわ。
私はそういうゴミじゃないから、誰かを「キモい」と思おうが「痛い」と思おうが、相手のSNSアカウントにアンチコメントを書きに行くことはない。書きたくなるヤツの気持ちもわかるけど、わざわざ本人に向けて書くレベルには落ちん。
──批判はなくならない
人間だから、日頃の鬱憤を晴らすために批判することもあると思うよ。ただ、「目の前にいたら俺が殺してやる」くらいの憎しみがないなら、SNSでの誹謗中傷はやめとけ。普通に、人間として、止めとけよ。
(了。第1回を読む)