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《再婚宣言から5年》ミュージカルに初挑戦の映画監督ジャッキー・ウーが明かした交際相手の元フジテレビアナウンサー河野景子との現在の関係

NEWSポストセブン 2025年1月13日 10時59分

 手がけてきた多くの作品が、世界の映画祭で数々の映画賞を受賞してきたジャッキー・ウーさん。2025年は初めて手がけるミュージカルが上演される。そのミュージカル『もう一度抱きしめたい』はラブファンタジー。これまで作品を作るうえで「老い」や「認知症」などをテーマとしてきたジャッキーさんとしては、ロマンスを手がけるのも初めてだという。

 2020年には元フジテレビアナウンサーの河野景子さん(60)との結婚宣言でも話題になった。大きな心境の変化があったのだろうか。ジャッキーさんに聞いた。【前後編の後編。前編から読む】

ミュージカルで表現したいこととは

「これまでは“生病老死”という、あらゆる人間の逃れられない苦しみや差別、人間が内に秘めているアンバランスさを描いてきました。それが、僕にとっていちばん関心のあるテーマなので。だから、予定調和なハッピーエンドのラブストーリーを扱ったことはありません。

 ただ、ミュージカルに“生病老死”のテーマはそぐわないじゃないですか。この舞台でラブストーリーを手がけることになったのは、そういう理由からですよ」

 たしかに、病や老いを踊りや歌で表現するのは難しそうそうだ。

「といっても、ハッピーなだけのロマンスは描きませんよ。すれ違い、行き違い、周囲からの反対……僕自身も経験してきた、恋愛するうえでのハプニングやアクシデントを入れて描いています。誰しも、そういう恋愛のほうが思い出に残っていますよね?

 そして、ファンタジーなら、そうした“壁”をプラスアルファで表現できます。製作総指揮として、脚本家とも話し合いながらストーリーを練りました」

 映画監督があえて舞台を演出することで、映画と舞台の両方の特徴をうまくミックスできるのではないか、とも考えているという。

「映画はカメラが表現している役者に近づくのに比べ、舞台は役者が観客に近づいて表現します。その距離感が違うので、当然、表現の仕方にも違いがあります。意外かもしれませんが、映画俳優はセリフをあまり覚えてこない。そのかわり、その役の感情をよく理解して現場にくる。一方、舞台俳優はセリフは完璧に入っているんだけど、エモーションが薄い。両方の良い点をうまく表現できたら嬉しいな、と思っています」

香港、フィリピンで積んだ俳優修行

 製作総指揮・演出をするうえで、演者に寄り添うことも大事にしている。というのは、ジャッキーさんの芸能活動のスタートは映画プロデューサーであり、俳優だったからだ。

 ジャッキーさんは子どもの頃からダンスに夢中になると同時に、『街の灯』『モダン・タイムス』などチャールズ・チャップリンの映画が大好きで、次第に身体をはったアクションで観客を魅了するブルース・リーやジャッキー・チェンに憧れた。1996年、単身で香港へ。1998年にはフィリピンへ渡った。

「映画で食べていこうと香港に渡ったのですが、香港は当時、ワイヤーなどを使ったアクションが主流になっていて、僕が望んだ身体を張ったアクションが撮れる状況ではありませんでした。そんななか、ジャッキー・チェンの弟子がフィリピンでアクション俳優として活躍していると知り、フィリピンへ渡ったのです」

 フィリピンへ行ってみると、実はハリウッド映画『地獄の黙示録』『ランボー』『プラトーン』などがフィリピンで撮影されていることを知る。

「フィリピンには大がかりなロケ撮影ができる場所があるんです。撮影許可が得やすいのに、予算はおさえられる。そのうえ、ハリウッド作品の撮影に関わったスタッフがいる。アクション作品を撮りやすい環境が整っていたんです」

河野さんとの現在は

 そうした利点を生かし2001年、映画『TOTAL AIKIDO』を製作・主演すると、比映画『アラブ・ナン・ラヒ/戦場の友へ』への出演オファーを受けた。本作のヒットで俳優としての人気を獲得し、中国・香港合作映画『少年キョンシー』やハリウッド映画『ミッション・トゥ・アビス』への出演へと繋がり、2017年、自主映画『HARUO』で『ニース映画祭』最優秀外国映画主演男優賞を受賞した。

「俳優の仕事は孤独です。撮影現場でひとつのシーンを撮るとき、カメラや照明の準備が整うまでずっとスタンバイし、さあ撮るぞ、となったらワンテイクでバシッと決めないと周りから嫌な顔をされます。どれほど緊張を伴う厳しいものか。それが僕にはよくわかっています。僕の場合は言葉も満足にできない海外で、たった1人でやってきたので余計です。だから、現場ではできるだけ役者に寄り添うよう心がけているのです。役者と演出家、両方の経験があることが、僕のパワーポイントかなと思っています」

 しかし、それほどまでに海外作品にこだわっているのはなぜか。

「こだわっているというより、生まれ育った横浜・中華街は当時、ほとんど外国のような場所だったので、僕のなかでは海外でも違和感なく溶け込めるというか。国境というものへの意識が薄いのだと思います」

 2023年末から2024年はフィリピンで大ヒットした連続ドラマ『PULANG ARAW(赤い太陽)』(GMAネットワーク)に出演。主人公の1人・タナカヒロシの父親役を演じた。

「1930年代後半から1940年代のフィリピンを描いた長編戦争ドラマです。僕はその撮影のため、2024年は1~10月は、日本に戻れたのは月に1〜2日というほど、ずっとフィリピンに滞在していました。だから、僕の2024年はほとんど夏でした(笑)」

 フィリピンのドラマに出演するのは5年ぶりだったそう。

「映画スターから政治家になったヴィルマ・サントスさんが女優復帰する比映画『東京で君に会ったとき』に出演したところ、好評を得ました。それで、『PULANG ARAW』の声がかかったのです。『PULANG ARAW』は構想10年の大作なんですよ」

 そんな大ヒット作を日本で見られないのは残念。しかも、ジャッキー監督がほとんど日本にいられなかったのでは、日本にいる恋人(元フジテレビアナウンサーの河野景子さん)は寂しがったのではないだろうか……?

「おかげさまで順調です。温かく見守っていてください」

 プライベートでも新しい一歩を踏み出すニュースを聞きたいものだ。

(了。前編から読む)

【プロフィール】

 

ジャッキー・ウー/横浜生まれ。父は中国人2世。映画界に活動の場を求め1996年香港、1998年フィリピンへ。2001年公開の比映画『TOTAL AIKIDO』で監督兼俳優を務め、俳優として出演した比映画『アラブ・ナン・ラヒ/戦場の友へ』で人気獲得。本作のエンディングテーマ曲が同地でゴールドディスク賞を受賞するなど、歌手としても活躍。2005年、中国・香港合作映画『少年キョンシー』が中国で話題となり、ハリウッドからオファーを得て映画『ミッション・トゥ・アビス』に出演。以降、欧米でも俳優・監督として活躍し、2014年、日本映画『邂逅』(2016年公開)がマンハッタン国際映画祭最優秀監督賞を受賞するなど受賞作多数。これまで手がけてきた映画は30本以上。

取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫

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